貴族編

第9話 貴族学校へ

「うぅ…揺れる、揺れるってぇ~っ」

今、馬車で貴族館へ移動中だ。

仮貴族として登録する場所で、貴族がたくさんいるそうだ。

誕生日祭典の晴れ着を着て、いつもよりおしゃれしてそれなりに

貴族っぽくなった母さんと乗っているのだが。

…この世界の馬車どうなってるの⁉

王族みたいでおしゃれとか思ってたけど、丸ごと裏切られたわ!…

こほんこほん。すみません。つい本音が…

そうこうしているうちに、貴族館へ着いたようだ。

花々で彩られた正門から貴族館内の貴族登録所へ移動する。

ここも神殿と同じで石造りになっていて、

とても綺麗だ。

貴族登録所に着くと、窓口っぽいけどめっちゃおしゃれな場所で5~4級くらいの貴族の人に質問された。

「身分は?」

「中流平民です」

「希望する側仕えの数と性別、年齢は?」

「1人の女性、20代から40代くらいです」

「分かりました。

では5~3級貴族のどれになるかの判断をさせていただきます。」

そう言うと、誕生日祭典の時のような杖を持たされた。

「おぉ、3級中流貴族レベルです。

立ち振る舞いや言葉遣いも中流平民にしてはかなり良い方ですね。

3級上流貴族でよろしいですか?

また、貴族登録名はマリリーン・アーゲルアーカイク・ユリリーネとなります。」

どうやら普段呼ぶ名前と領地名、同性親の名前となるようだ。

「は、はい。」

「それでは側仕えの候補を紹介します。

5級上流、32歳アンキルラーテ。料理と掃除が得意で、性格はおとなしめ。給料10カリット。

同じく5級上流、28歳ルビーアンティーレ。子供好きで、書類仕事が得意。活発ですね。給料9カリット。

4級中流、35歳ディールマティーナ。掃除や身嗜み、勉強を教えるのが得意。物静かですが、親しみやすいかと。給料12カリット。

候補はこの3人です。」

どの人も金銭的には大丈夫。

ルビーアンティーレは少し違う気がする。

ここはやはり、この中で一番ベテランのディールマティーナにお願いしたい。

「ディールマティーナさんでお願い致します。」

「御雇い頂き有り難う存じます。

ディールマティーナ・アーゲルアーカイク・アウルゲッツィーナです。

マリリーン様、よろしくお願いいたします。」

そして色々なことに使うことになるお金を前借し、制服のドレスを買い、領地の

アーゲルアーカイクの色である深い紫のマントも購入する。

制服のドレスは領地色の深紫を基調としたデザインだが、フリルやリボンも所々に付いていて、豪華だ。

…ふわわゎゎぁぁ、さすが異世界、可愛すぎる…

ドレスを着用し、魔術具である魔法の威力を調整させるネックレスを首にかけると、

貴族院に行く準備は完了だ。

だが、ここで母さんと別れることになる。

「マリリーン、頑張ってね。芽吹く休みには戻ってくるのよ。

ディールマティーナさん、よろしくお願いいたします。」

「承知いたしました。娘様のお世話をさせていただきます。」

「母さん、またね。」

手を振りながら、貴族学校行きの馬車へ乗る。

「ディールマティーナさん、宜しくお願い致します。」

「さんはつけなくてよろしいです。」

「気遣い頂き有り難う、ディールマティーナ。」

「いいえ、大丈夫ですわ。

ほら、あそこに貴族学校が見えて参りました。」

「わぁ、大きいですね。」

「はい。…マリリーン様、今日行う流れを説明いたします。

まず自室に行き、荷物を整理します。

そして鐘が鳴ったら中央館にて入学式を行います。

入学式後、夕食となり、その後湯浴み、就寝となっております」

「承知いたしました。」

馬車から降り、自室へ行く。自室はベッドと机と椅子、棚があり、

浴室は5~4級貴族、3級下流~2級中流貴族、それ以上、

領主候補生に分かれている。

食事は領地別の部屋で、領主候補生とそれ以外に分かれて食べる。

「はぁ、荷物が少なくて楽だな…」

ディールマティーナは側仕え専用の部屋に行っているので、

独り言がたくさん言える。

寝巻やお守り(母さんに持たされた)などは戸棚に、

預かったお金は金庫に入れた。

コンコン。

「どなたです?」

「ディールマティーナでございます。」

「ディールマティーナですね。どうぞ、戸を開けてください。」

ディールマティーナは部屋を見回すと、感嘆したような声で言った。

「マリリーン様、とても整理が上手でございます。」

「有り難う存じます。」

カラーン、カラーン、カラーン。

鐘の音が貴族学校中に響き渡った。

「マリリーン様、中央館へ行きましょう。」

「はい。」

階段や渡り廊下を渡り、中央館へ行く。

「わあ…」

そこは別世界だった。

絢爛豪華な部屋に、綺麗に着飾った貴族の子供たちがいる。

髪の毛のアレンジも豪華で、思わず溜息を吐いてしまう。

…私、ここでやっていけるかな?…

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