第8話 目覚めとマリリーンの誕生日祭典

「ふわぁぁぁっ」

目が覚めた。

「あれっ?ここどこ?」

「マリリーン!あぁ、良かった…」

「ん?」

「半年、昏睡状態だったのよ。

誕生日祭典に間に合って、本当に良かった。」

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「誕生日祭典は一か月後。それまでに元通りに筋力をつけないとね。」

「はぁ。」

「お医者様に報告するわね。」

どうやらここは病院だったようだ。

「うん。」

ベッドから起き上がろうとする。

「っ!」

起き上がるのも一苦労。立ち上がるのにもかなり力がいる。

もともとそこまで筋力が無かったので、生活できないレベルに筋力が下がっている。

「うぅぅ、どうすりゃいいんだよぉぉぉっ…」

あ!

「ラジ○体操!万歳!」

明らかに変なテンションになっている。

だがそんなの無視だ。

なんとなくラ○オ体操をやってみることにした。

「すげぇ!効果やばいって!」

明らかにこの世界の○ジオ体操は効く。

筋力がどんどんついている気がする。

「マリリーン、何やってるの!」

「…なんですかその踊りは…

はっ!!こんなにすぐ動けるようになるなんて、信じられません!

これは何という踊りなんですか!」

まさかラジ○体操でそんなに感激されるとは思いもしなかった。

「踊りじゃないんですけど…『ラジ○体操』って言います」

「らじ○たいそう…らじ○たいそう!それはいい名前ですね!」

今、若干腹筋が崩壊しそうになっている。

だってさ、

初老の真面目そうな医者が、ラジ○体操に感激して、

大興奮するんだよ⁉

すっごいまじめな声で、ラジ○たいそうって、

言葉を知って感激した幼児みたいに繰り返すんだよ⁉

笑いそうになって変な声を出している私を変な顔で見た母さんは、

「ほら、家へ戻るわよ!

お医者様、本当にありがとうございました!」

「いいえ、らじ○たいそうの事、今度もっと教えてくださいね!」

「あ、はっ、はい?」



一か月後。

「わぁ、似合ってるよ、マリリーン!」

「マリリーン姉さん、かわいい!」

「この飾り、自分で作ったのか?上出来だぞ!」

「ありがとう!じゃあ、デュー兄さん、リュー、行ってくるね!」

「あぁ、楽しんでこいよ!」

「頑張ってね!」

「うん!バイバイ!」

私はハーフアップにした髪の毛に簪を挿し、衣装を着た。

カラーン、カラーンと鐘が鳴り響いている町を通る。

市場の人も雑貨屋も、旅商人も吟遊詩人も、私たち誕生日祭典を迎える子供たちを

祝ってくれている。

団地のような建物からも大きな煉瓦造りの建物からも、

一戸建ての綺麗な家からも、歓声とともにこの世界の子供のシンボルである金の羽が落ちてきて、見たことのない眺めになっている。

見惚れながら町を進むと、古代ギリシャの神殿のような薄い青に輝く、

この世界の神殿が見えてきた。

「マリリーン、私たちがついていけるのはここまで。

誕生日祭典、楽しんでね。」

「うん!父さんも母さんも、ありがとう!」

「それじゃあ、また神殿の前で会おうな!」

「分かった!」


「マリリーン!」

「あ、ヌーヴォレコルト!」

どうやら同じ誕生月だったヌーヴォレコルトが、声をかけてきた。

「よかった!目覚めていたのね!」

「あ、報告していなかったね。心配させてごめんね!」

「ううん、いいの。

わぁ!衣装綺麗だね!お花が可愛い。どうなってるの?」

「毛糸で鎖編みをいくつか編んで、それを5つ繋げていくの。

見た目よりかは簡単だよ。」

「私のなんて刺繍だけだよ。一回しか着ないから簡素でいいって、母さんがうるさくてさ…」

「あ!髪型だけでも変えてみる?その紐あればできるよ!」

「お願いしようかな?」

道の端に移動し、唯一私がきれいにできる編み込みをする。

「どう?」

お金持ちの方であるヌーヴォレコルトは、鏡とハンカチはいつも持っているようで、

それで確認する。

「すごい!どうやってやるの?」

「簡単だけど、もうすぐ誕生日祭典が始まっちゃいそうだからまたいつかね。」

「あ!本当だ。急がなくちゃ」

私たちは神殿の中に入る。

デュートの言う通り涼しい。

私たちが、用意されたベンチっぽいもの(この世界の正式名称が分からない)

に腰掛けたあと、5,6組くらい子供が来て、全員の集合が確認されたようで

扉が閉まり、カチャン、と錠が閉まったような音がして扉と扉のつなぎ目が消えた。

皆思わずざわついていると、

神殿長らしき人が入ってきた。

「皆、静かに。」

その貫禄ある一声で、子供たちの声がぴたりと止んだ。

「誕生月おめでとう。

今日、君たちが正式に町民として登録される。

そのための登録証を作る。

こちらに並べ。」

貴族学校行き、仕事見習い行きに分かれ登録を始める。

貴族学校行きは私と緑髪の男の子だけだったようだ。

仕事見習い行きは小さな紙片っぽい形状記憶っぽい物に指を押し当て、指紋を残す。

貴族学校行きは鉛筆くらい大きさの、木で出来ていて一番上に透明な魔石が付いている杖を持たされ、魔力を測られる。

神の加護がどれだけ得られているかが分かるようで、

わたしは風、水、知力、生物、時の加護があるそうで、平民の魔力持ち

にしては多めのようだった。

しばらく仕事見習い行きを待った後、神殿を出て帰路に就く。

母さんと父さんが迎えてくれた。

明日は貴族学校に登録し、入学するため、貴族館と貴族学校へ行くことになっている。

たくさん話をして、美味しい物を食べた後は、

家でぐっすり寝た。

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