第7話 異世界料理と祭典の衣装

「母さん、私も一品作るよ?」

「マリリーン、料理できるの?」

「うん。サラダでも作ろうか?」

「良いけど…」

どうやらマリリーンは料理が出来ないようだ。

だが私は料理が大好きで、何かしらの料理を作りたかったのだ。

「ワキュレとチョンデ、カリぺを使うね。」

ワキュレは黄色いレタス、チョンデは緑の見た目チビカボチャ中身トマト。カリぺは赤いトマトっぽいトマトの味のする理想の実だが、ヘタが何故か青い。

「…分かった。ドレッシングの調味料は適当に使ってね。」

「うん。」

材料を洗い、食べやすく切り、

「…ドレッシングは…これでいいか。」

オリーブオイル、黒胡椒、塩、包丁でバジルを刻んだものを混ぜる。

少し味見したところ、結構おいしい。胡椒が挽いて出すタイプだったので、風味が豊かだった。

ちょうどサラダを作り終わると、母さんが驚きの声をあげた。

「ドレッシングにバジルを入れたの!?あれはパンに入れるものよ?」

「ちょっと味見してみれば?美味しいよ?」

「…後で食べるわ。」

どうやら器用ではないマリリーンの手でサラダを作っていると、

料理上手な母さんはメインのローストチキンを作り終えていたようだ。

母さんが前から準備しておいたチーズ(この世界にはモッツアレラチーズっぽいものしかないようだ。)とパンを食卓に並べ、キジリのジュースを三人分と、赤ワインっぽいのになぜか発泡しているペンキャンというお酒を二人分用意する。

「ギューティネス、デュート、リュート!ご飯できたわよ?」

寝室で話していた3人を食卓に呼んで、食べ始める。

「わあ、このサラダ美味しい。」

「デュー兄さん、それ私が作ったの。バジルが入ってるのよ」

「そうなのか!?よく母さんに止められなかったな。」

「ちょっとビックリされたけど、美味しそうに食べてる。」

「どれも絶品だな。マリリーンも料理の才能があるんじゃないか?」

「マリリーン姉さん、すごい!」

「良かった。」

次の日。

「もうそろそろマリリーンの誕生日祭典衣装を作らないとじゃない?

一緒に作る?」

「うん!貴族学校に行く前の晴れ着だもん。私もつくるよ!」

貴族学校へは誕生日祭典の翌日に行くことになる。

その時には、誕生日祭典の服を着ていくことになる。

私は母さんに、紙に図を描いて説明した。

「袖のデザインはこんな感じで、肩が出るような構造にしたら?」

私がよく着ていたオフショルダーの服をイメージした雰囲気が良い。

「面白い構造だけど、どうやって作るの?」

「えーっとね…。


翌週。

「こう縫えばいいのよね。」

「うん、うん。母さん上手。」

裁縫好きの母さんだったようで、スイスイ作業が進む。

「あと、裾に花の飾りをつけたいんだけど、毛糸とかぎ針借りていい?」

「良いけど…そんなの作れるの?」

「うん。」

小学校の得意教科が家庭科だったこともあり、手芸も料理も得意ではある。

鎖編みを5目編んで、花弁を作る…5回繰り返す…

どんどん小花を作る。

あっと言う間に20個の小花が完成した。

「これを等間隔でつけて…と。」

何とすぐに誕生日祭典の衣装が完成した。

淡いクリーム色の布で作られていて、裾と肩紐には赤い毛糸の小花が付いている衣装で、かなり豪華だ。

「マリリーン、よくこんな衣装考えたわね…針も持ったことなかったのに。」

少し怪しまれているようだが、やってしまったことなので無視する。

…できるだけマリリーンだって思われるようにしたいんだけど…

「髪飾りも作る?」

「あ~、その小花を3つ4つ束ねるくらいならいいんじゃない?」

「わかった。葉も作りたいから、緑の毛糸も少し使うね。」

「少しなら良いわよ。」

どうやらこの世界、服以外の装飾品や防寒具は自分で作っていたようで、

毛糸がたくさんある。

小花を作り終え、葉も似たような作り方で2枚つくると、あることに気随てしまった。

「どうしよう?『ピン』も『ヘアゴム』も無い!」

この世界、紐で髪をまとめるもので、ピンもヘアゴムも無い。

…うぅぅっ、どうしよう?…

「何よそれ?」

この世界だと変な言葉に聞こえるらしく、訝しげな顔をされた。

「あっ!あれがあった!

母さん、木を削るナイフってある?」

「あるけど、何をするの?まだマリリーンが使うのは危険よ?」

「じゃあ、母さんにお願い。

この木の枝を先がとがるように削って、中に丸い穴をあけてくれない?」

「できなくは無いけど…何にするかの質問に答えられていないわよ?」

「この小花をつけて、髪飾りにするの。」

「…取り合えずやってみるわ。」

そう言うと、シュッ、シュツ、と音を立てて作業を始めた。

七五三の簪をイメージしたが、うまくできるだろうか。

しばらくすると、

「こんな感じ?」

「うん。母さんさすが彫刻職人。仕事早い。」

「これくらいは誰でもできるわよ。」

穴に小花を取り付ける。

「どう?」

「良い仕上がりだけど、どうやって付けるの?」

「こうやって…」

七五三の三歳の時、細かく結い上げるのが面倒ということで(ヘアアレンジは母親がやった覚えがある)、ハーフアップのようにしたのを思い出してやってみる。

「こんな感じになるよ。」

「こんな風に髪が結えるなんて…」

「ふふ、すごいでしょ。」

今日はいろいろやって疲れた…。

「あ。」

私の意識は、また暗転した。

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