マリリーン編

第33話 まさかの

「やっぱり」

私は、麻紀香という女の子だった。

その前は、マリリーンと言う女の子だった。

まさか、マリリーンに戻るなんて。

あの世界の昨日、神様を名乗るものから手紙が来た。

最初は悪戯だと思った。

でも、明らかにこれは、それだった。

「…てか、ここ、どこよ?」

手には、一緒に転移してしまったスマホと充電器が。

目の前には、まるで貴族学校の寮のようだ。

「あ」

麻紀香に転生した時にあった、記憶の流れ込み。

私が麻紀香だった数年分の記憶。

「母さん、父さん、デュー兄さん…懐かしい。弟、生まれてたんだ…」

私がずっと欲しがっていた、弟。でも、今姿は見えない。

もしかして、マリリーンじゃない人に転生しちゃったの…?

不安が広がる。

でも、そんなこと言ってらんない事態が起きた。

「大丈夫ですか、マリリーン様?」

「え?お貴族様?」

どうやら記憶によると、この人が私の側仕え…って、側仕え⁉私、貴族学校に入ってんの⁉

げふんげっふん。…えー、皆さま、取り乱して申し訳ございません。

まあ、頑張ろう。これが私の運命だ。

「大丈夫」

そう言うと、側仕え様があちこち体を確認する。

「そのようであれば、音楽の授業に向かいましょう。

になっても、勉強は必須ですよ。」

…いまいち聞きなれない言葉が混じっているのと、自分の髪の色がずいぶんきれいになって聖女の証である梟のブローチが付いているのが気になりますが、ここは何もなかったかことにしましょう。

側仕えさんは私に小さな鍵盤楽器をわたすと、一緒に教室へ向かい始めた。

教室に着くと、もうみんないた。私のことをちらちらとみてくる。

音楽の先生が言う。

「では、それぞれの選んだ曲の演奏を始めましょう。

まず最初に、マリリーン。」

「はい。」

そんな話聞いていないけれど、ここはあの曲を。

私が向こうの世界で聞いて気に入り、ライブにまで行ったあの曲を。

「始めます。」

一呼吸置き、思い切って演奏を始める。

「空は青く澄み渡り、海を目指して歩く―」

みんな驚いたような顔で見てくる。やはり、失敗だったか。

むきになって演奏を終わらせると、それはそれは大きな拍手が響き渡った。

音楽の先生も驚いているようだ。

「貴女、音楽の才能があるのでは?」

「…有り難う存じます。」

あの曲が役に立った。この世界での、良い再スタートを切れそうだ。

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皆さん、マリリーンが演奏した曲はおわかりでしょうか?

ちなみに私は、よくこの曲を聴きながら執筆しています。

それではまた!

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