第14話 驚きの出来事

起きて朝ご飯を食べ終わると、まだ早いのにたまたま出勤日だったリヒトは交渉と仕事のために出かけて行った。

「リヒトさん、行ってらっしゃい!」

「リヒトさん、交渉頑張って!」

「ルピスとベルティーは材料を食堂の黒板に書いておいたからしっかり採集してきてね!」

「「は~い!」」

早速食堂に向かおうとすると、エミリとメアリがやってきた。

「私たちにもお手伝いさせて!」

「孤児院全体の計画だし、二人にもできそうだから手伝ってもらう?」

ベルティーは賛成のようだ。もちろん私も賛成。

「そうしようか!」

「やったぁ!頑張ろう!」

「やったぁ…!楽しみだなぁ。」

「じゃあ皆でリヒトが書いてくれたメモを見に行こうか。」

「うんっ!」

「うん…!」

「そうしよう!」


「「「「え……?」」」」

黒板には何も書かれていなかった。いや、書いた痕跡はあるし、所々植物の名前らしき文字は見当たるため、リヒトが何かやったわけではないと思う。

「なんで…?」

戸惑っていると、心配そうな顔でマゼンタちゃんがやってきた。

「どうしたの…?」

「リヒトさんがここに植物の名前を書いてたはずなんだけど、誰かが消したらしくて…」

「所々文字が残ってるし、綺麗にするために消したわけじゃないわよね。」

「確かにそうですね…」

頷くベルティー。

「でも何のために消すのかさっぱり分からなくて…」

「そうだよね…犯人捜しはいいとして、なんて書かれていたか探ってみようか。

ん、サファ、どうしたの?」

サファが何故かクスクスと笑っている。嫌な予感がして、私はサファに話しかけた。

「もしかしてだけど、サファちゃんが消したの?」

「そうだよ。何が悪いの?」

「リヒトさんがわざわざ書いてくれたメモを消したのって、悪いことなのかなぁ?

サファはどう思う?」

突然綺麗な金髪にルビーのように赤い瞳をした可愛い女の子が話しかけてきた。

あんな子、孤児院にいただろうか?

「可愛い女神がやったことが、悪いわけないじゃない。

それよりあなたの存在の方がひどいと思わない?」

「それはなんでかな?」

「私の存在が霞んじゃうじゃない!」

「私も、貴方が可愛いと思っている子たちも、可愛くなりたくて生まれてきたわけじゃないのが分からないのかな?」

「はぁ?私は友だちの女神から、可愛い子は可愛くなりたくて生まれてきてるって聞いたけど?」

「下界の者と女神が友人となる筋合いはありません。女神と偽るにもほどがあるわね。」

そう言うと、女の子は全身に虹色のオーラを纏い始めた。

背も髪も伸び、作り物のように美しい顔をしている。

「何⁉」「綺麗…!」

「わたくしはせいを管理する女神マリリーン。

ですが、そのようなことを下界の者に言った覚えはありませんわよ?」

目を虹色に輝かせ、サファの方をしっかりとた。

すると、サファがまるで威圧されたかのように顔を真っ青にした。

「『混沌の女神サファレーラ』として生まれてしまった貴方を今までの神々や下界の者達を侮辱し傷つけたため、100年神界で修業し、人生をやりなおす罪とします」

そう言い渡した女神のかおは、狂った幼い子供を罰する辛さを心の奥に押し込めた、美しい、美しい顔だった。

少しの過ちを起こしただけの幼い子供を罰する、恐ろしいのに美しい女神を私は一生忘れることはないだろう。

転生した時のような、見たことのないような眩しすぎる光に目を瞑った次の瞬間、


サファとせいの女神はどこかに消えていた。

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