第13話 日用品改革宣言と訳ありの女の子

あのシャンプーとかボディーソープを改良したり、コンディショナーを作ったりできないかな…?このままだと髪の毛がひどいことになる…

あと化粧水も作りたいっ!

「ねえねえベルティー、リヒトさん。汁でお肌が綺麗になる葉とか枝とか実ってない?化粧水っていうのを作ってみたいんだけど…」

「経験的にはルペラの実、アイダルの蔓の汁じゃないか?」

「化粧水ってお貴族様が使うやつよね。あれは確かサラサラの白く濁った液体のはずだから、ルペラの実が向いているんじゃない?ルペラの実は本当に肌がきれいになるけど、匂いがちょっときついのよねぇ…」

「じゃあ、どんな匂いでも打ち消すミールそうにアイレンの花から作る水を入れてみよう。」

「あと、髪が艶々になる液…コンディショナーは?」

「コンディショナーってなんだか聞いたことがあるわ。………………ああ、あれのことかしら?リンスじゃない?」

リンスは…あ、確かクエン酸で作れるような…でもこの世界にあるとは思えないし…

レモンにしよう!

「あ、それそれ!確か、柑橘のしぼり汁と皮をお湯に入れれば作れるんだよね?」

「柑橘なら、食用ではないディンが良いんじゃないか?」

「良いね!」

「わたし思ったんだけど、体洗うやつも作り替えたくて…」

「液石鹸か。うーん、何で作ればいいんだろう?」

もしかしたらこの世界には先ほどのような液状の石鹸しかないのかもしれない。

出来れば固体の石鹸を作りたいところだが、受け入れられるか分からない。

あとは泡立て用のネットも欲しいけれど、緊急性は低いので後回し。

シアバターが必要だったような…あれって確か実からできるんだよね。

「シアバターの実って知ってる?」

「ああ、あのオイルに使うやつかい?」

「たぶんそれ。仁から作ればいけるかも…」

あとはオイル。何を使えばいいだろうか…?まあ、取り合えず精油かな?

「精油って作れるかな?」

「ああ、それなら僕が見習いをしているドインさんっていう方の工房に機械があるはず。」

確かに14歳のリヒトさんは見習いをしているはずだった。

植物に関する知識が高いのと、工房の人全員が孤児に対しても優しく接してくれているので、リヒトさんは見習いの中ではかなり上の地位にいるそうだ。すごい。

「だからきっと貸してくれるはず。」

「あ、分かったわ!その工房と孤児院が協力して液石鹸とか、お貴族様の化粧水やシャンプーを平民向けにしたものを作れば良いんじゃないかしら?」

「それ良いね!リヒトさん、出来そうかな?」

「うーん、交渉してみる。ドインさんも新しい物好きだし、良いよって言ってくれると思うよ。」

「もっとお肌とか髪のお手入れできるのか。楽しみだなぁ!」

どうやらベルティーちゃんも美容に興味があるらしい。

「だね!」

話が一段落すると、リヒトは他の人の所へお喋りしに行った。

この時間はどうやら自由時間のようで、皆好き好きグループになってお喋りしている。お兄ちゃんもロンさんやナナリーさんたちと楽しそうに喋っていた。

しばらく2人で雑談をしていると、さっき入浴タイムに誰とも話さなかった子が目に入った。今も誰とも話していない。

「ねえねえ、あの子っていつもあんな感じなの?」

「あ、サファのこと?あの子、就寝時間を守らず、特段可愛い子たち―例えばエミリとメアリとかね―を、いじめたりしていたの。

その度にマーレ先生が叱ってて。なのに終わる気配もないし、怒られるたびに癇癪をおこして…」

「そうなの⁉」

あの2人はまだ小さい。相当な負担になっただろう。

それに見た感じあの子はもう8歳くらい。些細なことで癇癪を起こすような年齢ではないはずだ。

「それをマゼンタちゃんっていう凄いしっかりした子―私尊敬してるんだ!―が、『皆嫌がっているし、就寝時刻を守らないと睡眠不足になっちゃうよ』って軽く注意しただけで、『なんで私みたいな可愛い女神に怒るのよ!』って癇癪を起こして…」

「女神…なに言ってるんだろう…?」

この世界に特段強い宗教は無かったはずだ。

「ね…。小さい子たちがストレスとか怖さで眠れなくなるくらいかんしゃくを起こした後、マゼンタちゃんが周りは謝らなくていいよって言っているのに謝ったの。」

「そうなんだ…」

「うん。なのに、サファは『私は可愛い女神なの!あんたらなんてもう二度と許さないわ!』って。何言ってんだか…」

「それから一言も喋らなくなって、今あんな感じ。時々私たちも話しかけてるけどね…」

「大変だね…」


「皆さん、就寝時刻になりました!」

家族部屋に移動し、皆でおやすみのあいさつをした。

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