第12話 夜ごはんとお風呂

ルピス目線


階段を下りて1回に戻ると、すでに夜ごはんの準備が始まっていた。

私たちは配膳当番なので、急いでミオやエートと合流して当番の仕事を始めた。

木の器を食器棚から出してきて、配膳台にセッティングしたり、調理室から調理当番が作った料理を受け取ったり、まるで学校の給食みたいだな、と今更思った。

私たちが配膳当番2回目だったので、割とテキパキ配膳を進めることが出来た。


配膳が終わり、飲み物もしっかり全員に行き渡り、全員が席に着いたのを確認すると、マーレ先生がいただきますのあいさつをするために前に出てきた。

「いただきます。」

「「「いただきまーすっ!」」」


今日の夜ごはんのメニューは、パンと、私たち採集班が採ってきたアイルと狩り班が狩猟で採った豚肉のソテーだ。

新鮮な豚肉とそれを彩るアイルのカラフルな実がとてもきれいで、

たぶんお姉ちゃんに聞けば15分は軽く超えて感想が出てくるだろう。

それにミオやその年齢層の子たちが育てている(お庭の裏に畑があるらしい)ベビーリーフのようなこれまたカラフルな葉野菜のサラダだ。豚のグレービーソースのドレッシングがかかっている。

夜ごはんの飲み物は基本畑のトウモロコシのひげや皮から作ったトウモロコシ茶の冷たいのだ。夏の収穫シーズンに一つ残らずひげと皮を取って乾燥させて煎って保存しておくと、この世界ではほぼ丸一年持つそうだ。(責任取れないので皆さんの世界では一年ほっとくなんてマネ絶対しないでしないでくださいね?)足りなくなると麦茶なんかを飲むらしい。麦茶もほぼ1年じゅう常備されていて、森なんかに皆が水筒で持っていくのは、ミネラル分の多い麦茶らしい。

…そういえばお姉ちゃんがトウモロコシ茶はデトックスになるんだよ~って言っていたような…たくさん飲もっ!あ、でも飲みすぎ注意って言ってた気もするな…

そんなことを考えたり、周りの席のみんなと食事をしていると、あっという間に食べ終わった。


マーレ先生の号令でごちそうさまを言うと、片づけが始まった。

そのあとは入浴タイムだ。今日は男子からで、男子も女子もそれぞれ2グループに分けてお風呂に入るそうだ。

…6人テーブルが9つで、大体席埋まってたよね?女子の方が若干人数少ないけど4分の1と考えて…13.5人?暗算だからあってるかわかんないけど…そんな人数が入れるお風呂なら、期待しちゃっていいかもしれない。この建物、なんか可愛いし。

お風呂=自分磨きの時間。お風呂の綺麗さと使いやすさ、設備は大切だ。

お風呂=面倒くさい時間のお姉ちゃんとは違う。

そうこうしているうちにお姉ちゃんと私のグループの入浴時間になった。

あ、ややこしいからもうそろそろお兄ちゃんって呼ぼう。

≪TAKE2≫そうこうしているうちにお兄ちゃんと私のグループの入浴時間になった。


「じゃあ俺とロン、ルイド、ミサト、リーヌス、ロン、あぁ、2回言っちまった…ナナリー、アイン――ナザクはこっち来い。」

14人の名前をジェラトンさんが言った。ジェラトンさんが指す方向が男子浴場のようだ。

数分後。

「入浴の時間よ!あたしとローゼ、ルピス、エミリとメアリ、ミオ、マゼンタ――サファはこっちね。」

12人の名前を席が遠いせいかあまり顔を合わせたことのない女の子が言った。

この子が指さす方向は女子浴場のようだ。

心は元から女だし、もちろんいかがわしいことは考えていないけれど、女子浴場って入るの当たり前だけど初めてだ。なんか緊張する。

その子が調理室横のドアを開けると、脱衣所があった。

「わぁ、可愛い!」

「でしょ?ここのタイル、ベリー柄なの!」

ミオが答える。

「本当だ!どのベリーも色と形がちょっと違う!」

「このタイルの絵は、1番最初にこの孤児院を卒業して就職した子たちが描いたものなんだよ!」

「へぇ、そうなんだ!なんだか見守られている感じだね!」

「そうだねぇ!」

当たり。ここのお風呂、綺麗。可愛い。つまり最高。

白木のドア無しロッカーに先ほど渡された寝巻きと家から持ってきた下着を入れて、服を脱ぐ。曇りガラスのドアを開けて浴場に入った。

…ちょっとまって。孤児院ってお風呂こんな綺麗なの?私のイメージしてた孤児院と何もかもが違うんだが。

十数人どころか25人くらいまで余裕で入れそうな広い浴槽。

シャワーではなく蛇口からお湯を注ぎ入れた白木の盥で髪の毛を洗うように見えるけれど、じょうろのように細かい穴の空いたふたが付いている。きっとお湯がだんだん冷めてくるし、シャワーのようにぴったり止めたり、温度調節をすることは出来ないけれど、異世界の孤児院でこれはもう十分だ。

…まあ、水やりされてる植物みたいな気分にはなるだろうけどね。

それは置いておいて、今度はシャンプーのチェックだ。

…ちょっと待って。何だこのシャンプー。めっちゃ好みの匂いなんだが。

華やかなで繊細なジャスミンのような香りで、臭さが全くない。

早速洗ってみると、もちろん日本のシャンプーよりかは洗浄力は劣るが、

恐らく環境にやさしいし、肌がデリケートな人でも使いやすいだろう。

髪をすすぎ終わると、次はコンディショナーだ。

…あった!

コンディショナーは髪の艶と調子を整え、キューティクルを傷みにくくする重要な役割だ。正直ないと困るので、あってよかった。

…ん?これコンディショナーじゃない。液体のボディーソープじゃん!

匂いが何をどう考えても石鹸だ。髪につける前でよかったけれど、

このままだと髪質が悪くなってきてしまう。

…どうにかして作れないかな?

今日は残念だけどあきらめることにして、ボディーソープで体を洗うことにした。

体の隅々まで洗い切れば、湯船につかる時間だ。

湯船に入ると、1分くらい先に入っていた子が話しかけてきた。

「ルピスちゃん、孤児院には慣れたかな?

私はベルティー。13歳!手芸が好きなんだ。仲良くしようね!」

「うん!改めて、私はルピス。10歳だよ。私も手芸大好き。こちらこそ、よろしくね!」

ベルティーちゃんは肩までの縦ロールでピンク色の髪の毛に銀色の眼の女の子だ。

「ルピスちゃんも手芸好きなんだ!良いね~!」

「ルピスちゃん、ベルティーちゃん、お話し中にごめんね、私はローゼ。15歳です。よろしくね!私は料理が得意なの。」

「ローゼさんもよろしくね!お料理得意なんだ~!うらやましいな!」

「ふふっ、ありがとう。私のことは呼び捨てかちゃん付けでいいよ。」

「じゃあ、ローゼちゃんって呼ぶね!」

ローゼちゃんはサラサラのストレートの長い赤茶の髪にサファイアのような眼の落ち着きのある大人っぽい子だ。料理が得意なら、おにいちゃんと仲良くなるかもしれない。

「私のお兄ちゃんが料理をするのも食べるのも好きだから、よかったら話しかけてみると良いかも!」

「そうなんだ!知らなかったわ。ありがとうね!」

「いいえいいえ!」

その後もいろんな子が話しかけてきてくれて、賑やかな入浴タイムになった。

でも、1人だけお喋りの輪にも入ってこず、だれとも話さない子がいた。

…あの子、どうしたんだろう?後で寝る前に家族部屋のメアリちゃんたちに聞いてみようかな。

そうこうしているうちにお風呂を出る時間になった。

「あぁ~、気持ちよかったぁ!」

「「ね!」」

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