第15話 採集
今日は貴族学校の遠足こと、行楽の日だ。1年生はまだ遠くへは行かないが、貴族学校のある中心地から離れた「ウォーゲディーア」というところに行く。
大きな「ウォーゲディーア山」で、採集をするのだ。ちなみに最高学年の7年生になると、国会議事堂に行くみたいな感じで各領地の領主館に行くそうだ。
バスサイズの領地別馬車(前乗った馬車より百倍快適だった)に乗り、25分くらいで到着した。
男女に分かれ、先生についていく。男子は植物採集と魔獣採集、女子は植物採集と宝石取りに出かけるそうだ。
…そういえば宝石取りって、どうやってやるの?…
まずは植物採集。家政科で作った籠編みのバッグに採集物を入れていく。
私はハリエットとレイカーンと一緒に採集して、石鹸作りやシャンプー作りに使うハーブをたくさんと、ドライフラワーにして、自室に飾る用の花を幾つか採集した。
次は宝石取りだ。
「皆さん、次は宝石取りです。この先にある湖に飛び込んでください。」
ゲッツィーナ先生に言われた。
…って、何⁉湖に飛び込む⁉どゆこと⁉大丈夫なの⁉
だって、ここ底見えてないんだよ⁉自殺行為にしか見えないよ~⁉…
内心パニックになっているが、しばらくして目の前に現れたそれ自体が宝石のような鮮やかな群青色の湖に、皆入っている。遅れないように恐る恐る入ってみる。
「⁉」
ふよふよしたゼリーのような空間にいた。
しかも、息ができるし体が全く濡れていない。
皆も驚いた顔をしながら、下目掛けて泳いでいる。
暫くすると。
「…わぁ」
地面に足が付き、上を見上げる。半透明な緑の木に、沢山の宝石が木の実のように
実っている。それも、カラフルでいろんな形の宝石が。
「皆さん、驚きましたか?…実は少し、私も驚いているのです。
あの宝石たち、とても沢山の色ですよね。あれが、とても珍しいのです。
いつもは紫やピンク色の宝石ばかりなのですが…もしかして、今年は聖女の年なのですかね…?
あ、聖女の年とは、近い未来大きな影響を世に与えるであろう子供が来たときの事です。」
先生が言った。
「聖女…誰なんでしょう?」
ハリエットが声を掛けてきた。
「ここにいる女の子だけですものね。かなり絞られます」
「聖女はきっとマリリーン様ですよ!」
「ふえっ⁉」
「だって、誰も考えたことがないようなものを作ったり、前に綺麗なお花を毛糸で作っていましたし…なにより、マリリーン様、とっても美人ですもの!」
レイカーンも話に入ってきた…って、え⁉…
「えぇ、私もそう思うわ。」
ハリエットも頷いている。
「きっとこの木も分かっているのでは無いのでしょうか…?」
周りの皆も、誰が聖女か話し始めた。だが。
…なんで皆話が終わったと思うとこっち向くの⁉…
しかも周りの生徒だけでなく、先生もこちらを向いている。
…ぎゃあ、どうするの⁉…
暫く硬直していると、先生が咳払いをして話を再開した。
「わたくしが聖女だと思う方はもう決まっていますが…敢えて言いませんね。
貴方たちには、宝石を採集してもらいます。これから先、自分の象徴になりますから、よく考えて選ぶこと。それではどうぞ」
どうやら女子は初めてとった宝石が、男子は初めてとった魔獣とその骨が自分のお守り兼紋章になるらしい。
…そうなの⁉それじゃあ、可愛いの採るぞ!!…
「あ、宝石は枝から手でもいで採れますわよ!」
先生曰く簡単に取れる様だ。
「これ綺麗かも…」
ひときわ美しく輝く宝石が見えた。私の眼と似ている赤をベースに、虹色が周りを取り巻いている。
「あ、マリリーン様、それさっきわたくし達が採ろうとしましたが、取れませんわよ?というより、手でも触れられませんでしたわ…」
がっくりした様子のハリエットとレイカーンが話しかけてきた。
「そうなんですの?私も試しに…取れましたわよ?」
「えぇっ⁉」
確認のため、レイカーンに触ってもらうが、やはり少しも触れられない。
ハリエットも同じだ。
「やはり。マリリーン様が聖女でしたか。」
先生の説明によると、聖女の年は1つ、美しく輝く宝石があるそうだが、それは聖女本人しか触れないそうだ。
「そ、それじゃあわたくし、本当に聖女だったのですか⁉」
「えぇ。」
「やはり!わたくしたちの推理が当たりましたわね!」
ハリエットたちは嬉しそうだ。
…にしても、私が聖女だなんて…
皆が宝石を採り終わると、湖から貴族学校へ戻った。
今日はもう授業は無く、明日紋章作りの授業があるそうだ。
部屋に戻り、花をドライフラワーに、ハーブも軽く乾燥させるために窓辺に置いた。
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