第3話 取り合えず家へ帰ろう
思わぬ事態にぼーっとしていると、
『なあ、なんかうちら貴族になったっぽいから、なんかそれっぽく話そう?』
と小さな声で話しかけられた。
「まあ、取り合えず家に帰ろっか、ルピス?」
「ええ、そうしましょう、兄上。」
二人でクスリと笑い、記憶の中にある家へと向かう。
いかにも「貴族街」な石畳の上をてくてく歩くと、あっという間にルピスの家へ到着した。
でかい。
「ここが俺たちの家か…」
「大きいですわね…」
家の門の前に立ち、インターホンらしきものを押す。
リーン♪
想像と違う、生々しい鈴の音がして思わず驚く。
その後、老女の声が聞こえてきた。
「おや、誰かと思ったらルピス様ではありませんか。
この家に来るときは錠に手をかざせば入れるということをお忘れになったのですか?」
どうやら間違ったらしい。ここはごまかそう。
「ああ、そうでしたわ。忘れていました。気を付けます。」
「覚えているのならいいですよ。さあ、お入りになってください」
南京錠のような物にルイドが手をかざすと、小さな魔法陣が光り、かちゃりと錠が外れる音がした。
「わ、ほんとに開いた。すごいな、ルピス。」
「ええ、そうですわね、ルイド兄さん。」
薔薇に似た花の茂みや林檎に似た実のなる木の間をくぐりぬけ、お屋敷のドアを開ける。
「おかえりなさいませ、ルピス様。」
「おかえりなさいませ、ルピス様。さあ、ご両親がお待ちですよ。」
若い女性と男性に声を掛けられ、思わずたじろぐ。
だが、側仕えみたいなもんだろうと思い2人についていく。
居間に入ると、4人の側仕えらしき人と、両親らしき人物が待っていた。
側仕えた地は全員、僕に向かってお辞儀をした。ルイドには見向きもしない。
両親までもがそうだった。
「ルピス、おかえり。」と、ルピスたちの父親。
「ルピス、お散歩は楽しかった?」と、母親。
「ええ、とてもたのしかったですわ」と答えると、2人とも嬉しそうにしていた。
「僕も楽しかったです!」とルイドが言うと、
「…ルイド、お前には何も聞いていない」と返された。
「え…?」あまりに酷い反応にまたたじろいでしまう。
隣のルイドも顔を引きつらせている。
「ルピス、貴女は良いのですよ。沢山喋ってくださいね。」
僕には優しいのに、その奥の目が笑っていないように見えてとても不気味だ。
…怖い。こんなのもうやだ。
「お母様、お父様、部屋に戻ってもいいですか?」
「ええ、もちろんよ。」
「ああ、ゆっくり休め。」
「お母様、お父様。僕も部屋に戻って良いですか?」
「ああ、戻れ戻れ。」
「早く行きなさい。」
僕にはルピスの専属側仕えであろう4人と、玄関にいた1人、それにインターホンで応対してくれたお婆さんが付いてきたのに、ルイドには誰もついていかない。
こんなの怖い。とりあえず1人になりたい。
ルピスの記憶の中の筆頭側仕え・マリンリアーナに、
「しばらく1人にさせてくれませんか?」と言うと、
「ええ、かしこまりました。夕食の時間になったらお呼びいたします。
お部屋まではついていってもよろしいでしょうか?」
「ええ。」
ほどなくして部屋に着く。側仕え達はそれぞれの部屋へ帰り、ようやく1人になることができた。
「はあああああっ」
今のうちに記憶を呼び出しておこう。
まずルイドについて。なぜ彼はあんなに冷たい態度を取られているのだろう?
「ああ、なるほど…」
まずこの世界には貴族に階級があって、うちは2級中流貴族で、一族にそれに相応した魔力があるらしいが、ルイドにはなぜか5級下流貴族分の魔力しかないらしい。
そのような子供は、その魔力相応の家に養子に出されるか、神官となって一生神殿で働き続けること。
だが今は神殿の神官の数が魔術具化(機械化的な?)であまり数が必要なくなっているらしく、養子に出るしかない。でも、養子を必要としている家庭がいなかったら?
ルピスの魔力によって、ルイドの結末についての会話を盗み聞きした時の映像が再生される。
「貴方、ルイドはどうするのですか?」
「…今のところ養子の受け取り家庭が見つかっていない。
まあ、魔力を搾り取って孤児院、だろうな。」
寒気がした。
こんなに恐ろしいことをどうして淡々と話せるの?
こんな人の血が自分にも通っているの?
そもそも、この世界、なんなの?
…あの世界に帰りたい。懐かしい、お父さんとお母さんと、従妹のるりりがいた家へ。
感情を落ち着かせたいので、るりりについての説明をしよう。るりりは、お母さんの妹の娘で、僕たちとは1歳差。彼女の両親は数年前に病気で亡くなっていて、うちで一緒に住んでいた。小柄で人懐っこい性格で、本当の妹のような存在だった。
…もうやだ。お父さん、お母さん、るりり…助けて…
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数日間にわたって書いていたら最大級の文章量になりました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
さあ、ルピスとルイドの運命は?
次回もお楽しみに!
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