第10話 はじめての森

美味しいごはんを食べ終わると、森へ行く時間になった。

貧民街には採集や狩りをするための森があり、寄付金で買った鎌やナイフを使って食べ物や日用品を作るのに使う木の実を採集したり、槍を持って行って豚や牛を狩ったりするのだそうだ。ミオ曰く、基本的に女子が採集、男子が狩りだが、強い女子や体が弱い男子、不器用で採集なんてできない、という女子や薬草に詳しい男子は反対の役職に就くことがあるそうだ。

「エートは狩りがとってもうまいのよ!もしも強そうな獣が出て来たら、エートを呼ぶと良いよ!」

ミオがエートをほめる。

「プレッシャーかけんなよ、ミオ…」

エートが照れる。

女子にはモテる(百合?)が男子には全くモテなかった僕には、この情景が若干きつい。気まずくて少し目を横に向けると、エミリとメアリがいた。

お姫様に憧れるかのようなキラキラとした瞳を2人に向けるエミリと、気まずそうに立って編み物ををしているメアリ。双子とは思えない反応の違いだ。

「さぁ、皆さん、森へ向かいましょう!」

マーレ先生が皆に呼びかけた。

「は~い!」

孤児院の外に出ると、茶色の煉瓦の建物で構成された街並みが広がっていた。

「わあ!」

貧民街とは思えないほどきれいで、清潔度は貴族街とさほど変わらない。

しばらく石畳の路地を歩いていると、森にたどり着いた。

森には青く澄みわたった水の流れる川やカラフルな魚の泳ぐ池が多々あり、林檎や檸檬、あけびのような実のなった木もたくさんある。先ほど飲んだジュースの原料、木苺のようなコルデの実がたくさんなっている低木がありとあらゆるところにあったり、まるで宝石箱のようだ。

「あ!皆、カリンがあるよ!」

メアリの指さす先には、ヘチマのような形で艶のある薄紫をしている実があった。

白樺ようなの木に蔓がまとわりつき、その蔓に実がなっている。

「おお!じゃあ、女子とアインとリヒト、それに今日初めてのルイドは採集!3人以外の男子とリンは豚を狩りに行こう!」

アインは少し体が弱いことから、リヒトは薬草に関する知識があるから、

そして僕は今日から1週間は、危険な狩りには行かず、森になれるために採集をするらしい。

「採集組は私とユリアンネ、狩り組はエートとリンについていってね!」

「「りょーかいっ!」」

「じゃあ採集組の皆は、まずカリンを採集しよう!」

そう言うと、年長の4名ほどで採集に使うナイフを配り始めた。

「カリンは実のてっぺんと蔓の間の枝のどこかを切れば採れるよ!

それじゃあみんな、カリンの巻き付いた木は4本あるから、4グループに分かれて採集をしよう!」

16人の子供たちが4人ずつに分かれた。エミリとメアリ、ルピスと僕だ。

さっそく実を掴んで、枝の真ん中あたりをナイフで切ってみた。

プツ、と音がして実が採れた。それを繰り返して半分ほどを採集し、背負っている籠に入れた。

どのグループも大体同じ数ずつ採り終わると、次はジュースやジャムにするためのコルデの実と、もっと真ん丸で同じような味のするキジリの実を採集した。

採集しながらメアリが密かにキジリの実を食べた。どうやら気が付いたのは僕だけのようで、にっと笑って僕もキジリの実をこっそり食べた。

甘みがかなり強いけれど、ほどよく酸っぱくてえぐみが無く、とっても美味しかった。

最後は2人以上でのグループの自由行動だ。何を取ればいいのか二人で迷っていると、長い緑色の髪を後ろで縛っていて、髪と同じような緑色の目のリヒトが話しかけてきてくれた。そこで僕たち3人で傷に効くヨモギのような草と、様々な料理に使うことが出来るというアイルというオレンジや赤や紫、紺色をしている丸いきれいな実を採集した。

やがて時間になり、孤児院への帰路に就いた。

「あ~、楽しかったぁ!」

「森、気に入ったかい?」

「うん、もちろんです!」

「ならよかった!」

明後日も森へ行くそうだ。貴族としての生活よりも1億倍楽しいな、と思いつつ、孤児院の扉をくぐった。

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