第23話 火の神の午前と水の神の午後 後編

「♪~」

思わず小さく鼻歌を歌いながら、パーティーの準備を始めた。

私とハリエット、レイカーン、ナルディウス、グランディアウス、ドルデディオ

の6人で、持ち寄りパーティーをするのだ。

一番きれいということで、私の部屋で開くことになった。隣の部屋の子も数人でパーティーを開くようで、何か準備している音が聞こえる。

食器などは1番家がお金持ちのグランディアウスがすべて持ってきてくれるようなので、私は母さんから届いた手織りのテーブルクロスを広げ、火の神の午前の祭りで買った花のブーケをディールマティーナがくれたおしゃれな花瓶に飾る。

カーテンの形を整え、祭りで買った食材を厨房を借りて調理したり、もともと入っていた容器から出したりした。

予算的にも皆それぞれ1,2,3品出すことになっていて、私はピンチョスを2種類、

ワキュレとクエリとミートボールもどきを挟んだものと、ハムとマスカットっぽいベリーを刺したものと、バゲットに似たパンを6人と一緒に食べるディールマティーナの分で7切分ほど用意した。

ディールマティーナも料理を1品作っていてくれたようで、キジリのジャムを混ぜたクッキーが並んでいた。

「ディールマティーナ、有り難う。」

「いいえ、良いのですよ。…あら、いくつか足音が聞こえてきましたよ。お友達が来たのでわ?」

「…本当ですわ。…5人分にしては少ないですね。誰が来たのかしら?

それにしても、ディールマティーナは本当に耳がいいですわね。

わたくし、言われなければわかりませんでした。」

「お褒めの言葉を頂き光栄ですわ。」

コンコン。

「あら、来ましたわ。…何方どなた?」

「レイカーンと、ハリエット様、グランディアウス様ですわ。」

「分かりました。開けてよろしいですわよ。」

皆がいろいろなものをもってきていた。

「あぁ、食器を渡すぞ。」

「ありがとうございます。重かったですよね…?」

「いいや、大丈夫だ。この皿、なんだか軽いんだよ。

重いというより、薄いから割れないか少し心配になったほどだ。」

「ああ、それなら良かったですわ。

…本当ですわ。軽いですね…。」

グランディアウスから食器を預かり、テーブルに置く。

「あ、このお花可愛いですわね!」

「ありがとうございます。」

「……あ。皆、水の神の眷属たちの演奏が始まったぞ。」

「本当ですわ…」

この世界でも前世でもあまり聞いたことがないような音がする。

「素敵ですわね…。」

コンコン。

「あら、殿方2人が来たようですわよ?

マリリーン様、扉を開けてください。」

「何方ですか?」

「ドルデディオと、ナルディウス様です。」

「分かりました。開けますね。」

皆揃ったので、廊下にあった椅子を借り、それを並べて、その後は盛り付けをした。

全ての食器と食べ物が揃い、食事を始めた。

ハリエットが木の実と葉野菜のサラダと、柑橘のパイを、

レイカーンがローストビーフのようなものと、レイカーンの実家がある場所の有名な野菜の温野菜サラダを持ってきた。そのサラダのドレッシングはレイカーンのお母さん伝授のもので、

とても美味しい。

グランディアウスは食器をもってきていたので、1品のみ持ってきた。

人参のようなキュロテという野菜のグラッセのような物。

ドルデディオはプルーンのようなドライフルーツの入ったパンと、

クリームチーズの挟まったクラッカーだ。

ナルディウスはカリンとキジリ、ブルーベリーに似たベルーレダという果物の

ミックスジュースを持ってきた。

何と11品もある。

水の神の眷属たちの演奏を聴きながら、皆の持ち寄った食べ物を食べる。

「ドルデディオ様、このパン美味しいですわ!」

「そう?良かったな…。なんだか美味しそうだったから祭りで買ったけれど、

想像以上に美味しかったかも。あ、マリリーン様が持ってきたパンも美味しいぞ!」

「良かったですわ。」

「グランディアウス様、このグラッセ美味しいですわ。」

「良かった…。自分で作ったから、不味いかもってずっと緊張してたんだ…。」

男性陣は意外と貴族っぽくないしゃべり方をしている。

「マリリーン様、このお料理美味しいですわ!わたくし、初めて見ました。

何というお料理なんですの?」

この世界にピンチョスが存在していないらしく、ハリエットに質問された。

「えっと、ピンチョスって名前ですわ。食品の組み合わせで味が全く違うので良いですわよね。」

「ええ!特にここに入っているお肉が美味しいですわ!」

「気に入ってくださって良かったですわ。」

しばらくして。

「あら、もうこんな時間ですわよ、皆様もう浴場に行かれた方がよろしいのでは?」

「あら!本当ですわ。皆様、浴場へ行きましょう!

荷物をまとめて…グランディアウス様!大丈夫ですか…」

軽いとはいえかなりの量の食器を持っているグランディアウスが心配になった。

「うん、大丈夫。行きの食べ物がもう無いから、結構軽くなった。」

「そうなのですね。あぁ、もうみんな準備が終わったようですね。

皆様、左様なら!」

「左様なら!」

「またな!」

「左様なら。楽しかったですわ!」

「左様なら!楽しかったぞ。」

「左様ならぁ!」

扉が閉まった。

「ディールマティーナ、楽しかったですか?」

「ええ。あぁ、片づけをして浴場に行かなければなりませんね。」

「分かりました。」

片づけを終え、浴場へ行った。

やはり皆、先ほどのパーティーの話で盛り上がっている。

入浴後は部屋に戻り、すぐに寝た。

…楽しかったなぁ…

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