第7話 ルイドの目覚め
ルイドの瞼がぴくぴくと動き、ゆっくりと目が開かれた。
焦点があっていなかった瞳が数秒してようやくこちらの方を向き、ようやく意識がしっかりと戻ったようだ。
「あお…いや、ル…ピス?あれ、ここどこ?あ、僕の部屋か。」
「茜ええええええええっ!良かった…」
「確か僕、魔力を全放出して、そうだ、どっかの貴族の人に会って、倒れたのか…」
その言葉に、私もルーブェリも、その場にいた私の側仕え、全員が顔を青くした。
私は親が「魔力を搾り取って孤児院」と言っていた記憶以外にあまり魔力に関する
知識が無いのだが、皆の動揺ぶりを見る限り、とても大変なことが起こったとしか思えない。
「『茜お姉ちゃん』、何やってんの⁉魔力がなくなったら孤児院に行かなきゃなんだよ⁉それなのに、…私と、私とそんなに離れたいの⁉」
私が「碧」だということを知っている、この世界で唯一の姉が、自分から私を突き放したんじゃないかと考えると、目の前の姉に対して怒りと悲しみの感情が湧き、眼の奥が熱くなってくる。涙がたまっているのを嫌でも実感しながら、どうにか理性を保っていると。
気付くと後ろの皆が、無表情になっていた。
ルーブェリが冷ややかな目でこちらを見る。それに続いて、両親も、どの側仕えも、恐怖と敵対心が混ざった目でこちらを見てきた。
「あ…」
今まで気が付いていなかった。兄の事を「お姉ちゃん」と呼び、この世に存在しない「茜」という謎の発音を繰り返した自分は、宗教が浸透している周りから見たら、
悪い神の使いとまではいかなくても、この貴族の世に必要のない余計な子供に見える
のだろう。
「ルピス、ルイド、貴様らはこの家には要らない。今すぐ貧民街の孤児院へ行く手続きをしなさい。」
「「え?」」
「魔力無しの役立たずと意味の分からない言葉をしゃべる変な子供なんかがいたら、この家は私の代で廃れてしまう。早く私の目の前から消えなさい。」
「「………………」」
私があまりの酷さに固まっていると、ルイドが嬉しそうににぱっと笑った。
「分かりました!じゃあ今から、孤児院へ向かいますね~!」
「へ?え、ほんとに行くの⁉」
「そりゃあ好都合だな。服一枚くらいはやるから、ルピス、こっちに魔力をここから孤児院までの移動分の魔力だけ残して貴様の魔力をありったけ込めた魔石を渡しなさい。」
そういうと、無色透明のピンポン玉くらいの丸い石を渡された。
「…分かりました、お父様…」
確かこれくらいなはず、と思いつつ魔力を込める。込め終わると、魔石がいつの間にか銀色になっていた。
「さあ、それを寄越せ。」
「はい。」
「そしたらもう貴様らは孤児院へ向かえ。」
「分かりました。さようなら、お父様、お母様。」
跪いて数秒たち、顔を上げると、そこにはもう誰もいなかった。
「ねえ、ルイド…」
「ん?」
「…私、なんだかこれからが楽しみになってきた!」
「ならよかった!じゃあ、ルピスは騎獣を出してみて。」
「分かった!」
私は魔力技術が高いので、少しの魔力でも二人乗りの馬車みたいな騎獣を出すことが出来る。
「魔力取られてるけど平気かな?…お、できた!」
本来は貴族学校で教えられるらしいのだが、何故かルピスの記憶の中にやり方があった。
「おお~!じゃあ、僕はここの領地の地図と服持ってくるね!」
「分かった!私も、1枚って言われてたけど4枚くらいもってっちゃうね!
道中で2着くらい売れば結構なお金になると思うんだ!」
「じゃあ僕もそうするね!」
「うん!」
自分の部屋に戻ると、売る用の高そうな服二枚と、着る用の普通の(といってもかなり豪華だが)服二枚を手に取った。あと、ルピスが宝物にしていた銀細工のブローチ。今はもうここにいないルピスのたった一つのお気に入り。これだけは何があっても、絶対に持っていると決めた。
あとは割と高品質な魔石の入った籠を持ち、ブローチ以外は全て騎獣の荷物入れ部分に入れ込んだ。1分ほどたってルイドも戻ってきて、地図と服四枚、それにこれもルイドのお気に入りだった、こちらの世界の猫型魔獣の形に彫られた瑠璃色の魔石のお守りを持っている。ルイドは高品質の魔石をほとんど与えられていなかったので、私より少し荷物が少ない。
「じゃあ、出発しようか!」
ルイドが言った。
「うん!」
「「せーの、」」
「「れっつごー!」」
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これから始まる、新たなる冒険。
どうかみなさん、二人を応援してください!
(ルイドとルピスのどっちが茜もしくは碧なのかが分からなくなった…
同感した人は応援押して!)
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