第8話 新天地・孤児院へ到着

「父さん、馬車がお空の上を飛んでるよ!」

紺色の髪の小さな女の子が興奮しながら叫んだ。

「ありゃあ、お貴族様じゃねえか…」

その子の父親は呆然とした表情で青い空を見つめている。

親子だけではない。すべての街の人々が馬車が街の上を飛んで行くのを呆然と眺めている。


ここは貧民街、孤児院のある街だ。


「ねえルイド、貧民街に着いたよ!」

「ここが貧民街か…想像よりもきれいだな!」

「うん!あ、あれ孤児院じゃないかな?」

「そうだね!行ってみよう~!」

地図を使って辿り着いた孤児院は、オーロラ色に輝くタイルが貼られたお洒落な建物だった。庭では小学生くらいの子供たちが遊んでいる。

孤児院の屋根に降り立ち、騎獣を消す。

すると下に降りられなくなる。

「んもー、ルピスは馬鹿なの⁉こんなとこに降りたらこうなるっていうくらい分らないの⁉」

「うぅ~…どうしよ」

「…仕方ないから飛び降りよう!」

「えぇっ⁉」

私たちはそれぞれ服一着と宝物、高級な服を二枚売って稼いだお金の袋を持っている。この状態でどう飛び降りろというのだ。

「無理だよ⁉って、きゃー!」

ぴょん、とルイドが屋根から落ちていった。

数秒後、下から声が聞こえてきた。

「ルピス、荷物は僕が持つから降りてきて!」

「いや、降りるっているより、落ちるだから!これ!」

そんなこと言っても、このままここにいても餓死するだけだ。

決心をして、目をぎゅっと瞑って飛び降りる。

すたっ!

目を開けると、ルイドがいた。

「怖かった~…」

「そもそもルピスが変な所で騎獣消したからこうなったんだよ…?」

「…」

「まあ、取り合えず人がいるところに行ってみようよ!」

「うん。」

少し歩くと、小6くらいの黒髪ショートに青色の眼の女の子と鉢合わせた。

「うわ、君誰⁉」

「私はルピス。私の隣にいるのはルイドで、親に追い出されたの。」

「そ、そうなんだ…ちょっと待っててね!」

女の子が建物の中へ入っていってしばらくすると、ここの責任者らしい女性が出てきた。

「ルイドとルピスというのは、あなたたちかしら。」

「は、はい。」

「マーツザック孤児院へようこそ。わたしはここの管理者のマーレですわ。」

「え?入れてもらえるんですか?」

「もちろんよ!では入って。」

「あ、その前にお金をお渡ししたいんですが…」

「え?、あら、寄付金かしら?」

「はい。」

「じゃあ、有難くいただいておくわね。ああ、ミオが持っている二つの箱に、それぞれ大事なものを入れて。」

「「はい!」」

どうやら先ほどの女の子はミオというらしい。

「私はミオ。十一歳よ。ルイド君、ルピスちゃん、よろしくね!さ、箱をどうぞ!」

「よろしくね、ミオ!」

「ミオ、よろしく。」

受け取った箱の中にブローチを入れる。

孤児院は三階建てで、一階は台所と食堂、二階は女子棟、三階は男子棟と家族棟らしい。

私達は双子なので、十三歳までは家族棟、それからはそれぞれの性別の棟で暮らすそうだ。

基本的に六歳から十三歳の子は孤児院の中で勉強や清掃や料理や裁縫、お金の扱い方など生活で必要なことを学びつつ、小物を作って市場で売り出すことをしているらしい。

そのあとは街に出て工房や商店で見習いとして働き、二十歳になったら孤児院を出て家を持ち、仕事を始めるらしい。

大体のことを教わっていると、一人の男の子がやってきた。

「ミオ、この子達って新入り?」

「そうだよ!ルイド君とルピスちゃん!」

「おお、よろしく!僕はエート。ミオの友達で、十一歳。ルイド、男の新入りは久しぶりだから、仲良くしようぜ!」

「うん!」

「もちろん、ルピスもよろしくな!」

「はい!」

エートは身長が高く、黒色の髪に赤色の目だ。

色々とお喋りしていると、食事の時間になった。

…そういえばこの世界でまだ何も食べてないな。茜姉の食べ物センサーが敏感になってそう。

案の定、茜は言った。

「お昼ご飯何だろう?お腹すいた~」

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