第21話 初恋は異世界で
「今日はルイデルタークの崖に行き、薬草を採集します。」
今日は理科学実技の日で、ルイデルタークという貴族学校に近いアーレイベーティックの観光名所、「ルイデルタークの崖」に行くそうだ。というのもルイデルタークの崖近辺にしかない薬草がたくさんあるからだそう。
歩いていける距離なので、今回は馬車には乗らない。
…そういえば、基本山とか崖とかって地名プラス崖とかだよね。つまんないの…
「では早速、ルイデルタークの崖に行きましょう。」
今回の引率はゲッツィーナ先生のみで、私たちは並んで外に出た。
20分後。
「皆さん、着きました。『ルイデルタークの崖』です!」
「わぁ」
崖の周りや崖の下、見回す限り緑にあふれている。どこからか鳥の声も聞こえて、
そよ風が吹いている。
…まるでいつか読んだ童話みたい…
「では皆さん、崖に落ちないよう気を付けて、採集を始めてください。」
その声がかかると、もう採集のお供となっている籠編みバッグを左手に持ち、採集を始めた。
「あ、あの鳥とても可愛いですわよ!」
レイカーンが話しかけてきた。
「綺麗な青色ですわね…」
私が前世で暮らしていた都会では見られなかったハヤブサのような鳥が鳴いている。
でも前世の時よりもっと綺麗な色で、鳴き声も鈴を転がしたような音がする。
向こうの方を見ると、チューリップのような形の紫色の花が咲いていた。
「あそこに綺麗なお花がありますわ!
あれ?え?えぇ?」
…あ、また?…
「ど、どうしたのですか?」
「わたくし、また特別魔術を頂いたようです…あ、やはり…」
―…聞こえるかしら?―
前と同様、神様の声が頭に響いた。でも、今度は神様の声が違う。
ブックアイレーナの時は堂々とした感じだったけれど、今回は飾らない感じの声。
―わたくしは植物の神プランツダルツ。あなたに特別魔術『植物探知』を与えにきたわ。説明は以前受けているでしょう。それではかけ方を教えますね。―
―は、はい。分かりました―
―『
―わかりました。『
情報が流れ込んできた。
…えっと、これはナイデーレ。このあたりにしか咲かない植物なんだ。
色は基本深い赤か紫色。傷薬になる。切り取ると枯れなくなる…
―どうやら、うまく使えたようね。それじゃあ―
―はい。左様なら―
「キャ⁉」
どうやら神様と話している間に移動していたらしい。いつの間にか崖の淵にいた。
―――そして、落ち、た。 死ぬ。
ガシッ。
「え?」
「マリリーン、摑まれ!」
なんとあの誕生日祭典の時いた男の子…ナルディウスだったかな?…
が私の手首をつかんでいた。
「上がれるか⁉」
「う、うん。」
勿論それほど下まで落ちていなかったので、岩を掴んで上がっていく。
「落ちなくて良かった…いきなり目の焦点が合わなくなったから、驚いたんだ。
いったい何があったの?」
「あの…」
先ほど起きたことを全て言う。まったく疑わず、頷いてくれた。
「そうか。大変だったのですね…」
「はい。」
「「マリリーン様!無事でよかったですわ…」」
「レイカーン様!ハリエット様!」
「怪我はしてないですか?先生に報告した方が良いですか?」
「大丈夫ですわ。」
その時、私は恋愛感情というものを初めて知った。知ってしまった。
途端に赤面していないか気になってくる。
「そうか。良かった。」
「心配してくれてありがとう存じます、皆さん。」
「いいえ、良いですわよ。」
その後はナルディウスも含んだ4人で、薬などの材料になる薬草を採った。
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