異世界転生奇譚~植物好きと食べ物好きと手芸好きと野球好きは、同じ世界に転生した~

猫原未瑚

麻紀香⇔マリリーン編 全ての始まり

第1話 転生

私は麻紀香。15歳、受験間近の中学3年生だ。

今は登校中だ。植物が大好きで、部活は自然研究部。

いつもの横断歩道を渡る。

「きゃあっ?!」

信号無視をしたのだろうか…、大型トラックが迫ってきた。

トラックがブレーキをかけるが、なかなか止まらない。

トラックのライトに視界が照らされ、巨大な衝撃が全身を走った。


気が付くと白の綿に覆われたような世界が見えた。

「あれ…?痛くない?」

体が全く痛くない。

だが、体が動かない。

機械音が響いた。

『貴女は不慮の事故でお亡くなりになられました。よって、今から異世界への転生を始めます』

「え?ええええええ?」

転生?はえ??

まったく意味が分からない。だが私は大の異世界ファンタジー好きだ。

これから私はファンタジー系の世界で領主の護衛騎士になるのか。恋愛ゲームの世界の悪役になるのか。

普通なら不安になるところだけど、この1分ほどでさまざまな事象が発生しすぎて感覚がバグっているのか、楽しみな感情が胸の99.9%を占めている。…視界が暗くなった。


「マリリーン、マリリーン?」

聞き覚えのない女性の声が聞こえる。

どうやら私はマリリーンという人物に転生したようだ。

目をゆっくりと開ける。

「よかった。体調は悪くない?いきなり倒れるからどうしたのかと思ったわ。」

とりあえず答える。

「う、うん。大丈夫、です。」

「です。なんてどうしたのよ。マリリーンったら、やっぱりおかしいんじゃない?」

どうやらマリリーンは子供で―前世の自分も子供だったが。

この女性は母親のようだ。

驚いたことに、母は前世に見たことのあるような金髪とはまた違う、

鮮やかな金髪だ。そしてアメジストのような綺麗な紫色の眼をしている。

私も母親譲りの金髪だが、少し銀っぽい。目の色は赤だ。それも充血したような色ではなく、ルビーのような色。

「ちょっと頭がまだ痛いから、休んでいていい?」

「分かったわ。ゆっくりしててね。」

寝室らしい部屋のドアを開ける。

「どこで寝るんだろう?」

その時、頭がぐちゃぐちゃにかき回されたような感覚に襲われる。

「記憶?」

マリリーンの記憶が入ってきた。

記憶によると、母はユリリーネという名前。

父はギューティネスで、黒髪に緑の眼。

兄がいて、デュートという名前の、黒髪に紺色の眼。

どうやら母さん、父さんと呼んでいるらしい。

兄の事はデュー兄さんと呼んでいる。

友達は4人で、双子の男子のマススと、女子のレスス、ヌーヴォレコルトとコリアンネ。それぞれの両親の名前がカリブとレスラ、ボージョンとリュウミ、ジャガッテとカリーンカ。身分は平民だが、身の回りの人は少し裕福なほうだ。

この一帯で一番裕福な家はヌーヴォレコルト宅らしい。

情報を一気に読み取りすぎた。さっき嘘をついた罰だろうか、頭が本気で痛くなってきた。少し寝ることにしよう。

意識が融けて、心地の良い暗闇に落ちていった。

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