第25話 進路希望

今日は、『第一学年進路希望調査』の日だ。やたら長ったらしいが、簡単に言えば『1年生がいつ卒業するか、4年生から始まる専門学コースのどれを受けるかの調査』である。

何と貴族学校では、3年生まで最低限の技能や知識を身に付けた後、すぐに卒業するか、7年生までしっかり勉強して卒業するか、本人が決めるらしい。

親が偉い人だったりすると、家庭の事情として跡継ぎとして育てる教育を別に受けたりする子は3年生までしかいないことが多いそうだ。

私は7年生までいるつもりだ。

そして専門学コースというのは、5つに増える授業のうち、2時間の授業の事を指すらしく、騎士コース、文学コース、魔術学コース、魔植物コース、数学コース、側仕えコースに分かれるそうだ。学生は2つまでのコースの受講が可能で、私は魔術学コースと魔植物コースに行きたい。

ちなみにハリエットは7年生までいて、コースは文学コースと側仕えコースを受けて、レイカーンも7年生までで、コースは数学コースを受けるそうだ。

私たちには関係ないが、領主候補生は領主候補生コースを必然的に受けなければならないらしい。

5年生でも進路希望調査があるらしく、大学のような感じで、生粋の貴族のみが行く成人貴族学校というものに行くのかと、さらに5年で追加される、受けても受けなくてもいい部活動のようなものの補助コースの料理・手芸コース、音楽コース、美術学コースを受けるのかも調査されるそうだ。

私はもちろん成人貴族学校には行かないが、料理・手芸コースに入ろうかと思っている。

朝食を食べ終え、中央館へ行く。

1年生の数の机と椅子が並べられていて、教卓のような場所には領主候補生の筆頭側仕えのルパンディアが立っている。

「今回は先生たちが忙しかったようなので、わたくしが仕切らせていただきます。

1年生の領主候補生の筆頭側仕えでございます、ルパンディアです。

本日は宜しくお願いします。

先ずわたくしが質問の書かれた紙を配ります。」

そういうと、杖を出して何か呪文を唱えた。

ルパンディアの手にあった紙が皆に1つずつ配られていく。

…すごい。こんなこと出来ちゃうんだ…

「今からペンを用意します。皆さんは先日配られた杖を出してください。

今から私が呪文を唱えるので、皆さんはそれに続いてください。

『英知の神ブックアイレーナよ、我が身の魔力と引き換えに、書く能力を与えたまえ』」

ルパンディアの持っていた杖が羽ペンのようなものに変わった。

「皆さんもペンを出して、回答は選択肢に丸をつけなさい。」

『えっと…、英知の神ブックアイレーナよ、我が身の魔力と引き換えに、書く能力を与えたまえ』

自分の魔力の色、赤色っぽい色のペンが出てきた。

魔力の色に線が引かれていく。

全てに丸をし終わると、ルパンディアに紙が飛んで行った。

…自動で戻ってくの⁉凄すぎるって…

皆の回答が戻ってくると、ルパンディアが退室を促した。

中央館を出ると、やはり先ほどの事で皆興奮したのか、皆が話し始めた。

「…マリリーン様。ハリエット様!先ほどの紙、すごかったですわね!」

「ええ。…ハリエット様はあのような魔術、ご存じでして?」

「いいえ、初めて見ましたわ。あのような魔法があると、皆さん楽でしょうね。」

「ああ、希望調査とは思えないほど楽しかったですわ。」

「ええ、そうですわね。…あら、ハリエット様、レイカーン様。次の授業は何だったかしら…?」

「うーん…、ああ!次は理科学で薬草を使ったお薬の作り方を学ぶのでしたわ!

楽しみですわね。」

「あら、ハリエット様、よく覚えておりますわね…。

次の授業も楽しみですわ!」

「ええ、レイカーン様!」

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