第29話 女子会という名の祝賀会...かと思いきや
「ふわああああ」
昨日は早く就寝したのに、今日が楽しみすぎて途中で目が覚めた。
そのせいで少し眠い。
「生粋の貴族だったら、生粋のこの世界の人だったら、こんな事無さそうなんだよな…。」
この世界の人は若干テンションが低い。楽しみすぎて寝れないとか、緊張で手汗かいたりそういうの無いらしい。
「…そういえば、初めて『生粋のこの世界の人だったら』って考えたかも?」
前の世界に戻りたいって、ひそかにずっと考えていたのに。
不思議なような、怖いような。
よく小学生の物語文の授業である「主人公の心情の揺らぎ」みたいな物を
初めて経験したような気がする。
コンコン。
ディールマティーナが来たので、食堂に移動し朝食を摂る。
今日も会議室を借りて女子会と言う名の祝賀会をする。
会議室にお菓子と食べ物を持っていく。
私はクッキーとアップルパイもどき(この世界にはリンゴがないので、似ているけれど皮が紫色をしている「リュズ」という果物を使った)を持っていく予定だ。
「ああ、楽しみだな…。」
女子会は午後からなので、私は今から街へ出てディールマティーナと買い物へ行くのだ。
貴族学校の周りの町へ歩いて出てくるのは初めてなので、とても楽しみだ。
待ちきれなくて、準備をするとディールマティーナのいる寮の側仕え館へ急ぐ。
コンコン。
「ディールマティーナ、早く行きましょう。私は準備出来たわよ。」
「ああ、申し訳ございません。今すぐ行きましょう。」
ガチャ、とドアを開けてディールマティーナが出てきた。
「まあ!」
貴族学校の生徒の私はいつもの制服のままだが、側仕えは基本服装は自由だ。
とはいえいつもどの側仕えも質素な格好をしていたが。
今のディールマティーナは外出用の服を着ていた。
深い紫のワンピースには純白の天使の羽のような模様があって、
金細工の貝殻のブローチをつけている。
「ディールマティーナ、そのブローチは素敵ですわね。」
「ああ、このブローチなら、今から行く街に似たようなものがたくさん売っていますよ。」
「そうなのですね。」
入学式の時にもらったお金もまだ学校関連のものを買ったのと授業料くらいしかひかれていない。たまには服飾品を買うのもいいかもしれない。
学校の通ったことのない道を通り、大きな門から街へ出る。
広い石畳を歩き、まるでテーマパークのような街並みに見惚れる。
だが、事態は一変する。
ディールマティーナと一緒に最初に行くお店に入ろうとした時だった。
「キャッ」
私の視界が、真っ暗になった。
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