第16話 依頼完了
たくさん遊ぶといつのまにかコボルトも落ち着きを取り戻していた。
今は尻尾を振って隣を歩いている。
「ボス、また戻ってきますよね? ね?」
「ああ」
「そいつと浮気しないですよね? ね?」
こっちの白いコボルトは相変わらずうるさい。
今回は爪を引っ掛けないだけまだマシなんだろうが……。
「浮気をするはずが……ないな」
白いコボルトは変わっているが毛並みは良いから、野営するにはちょうどいいだろう。
ただ、見た目は断然黒いコボルトの方が可愛い。
どこか気持ち悪いからな。
「その間はなんですか! ボ――」
「エンチャント"状態異常"睡眠」
あまりにもうるさいため、状態異常を付与して寝かせることにした。
これでしばらく他の人にも見つからず静かに過ごせるだろう。
「はぁー、なんでコボルトってこんなにうるさいんだろうな。ああ、お前のことじゃないぞ?」
俺の横にいた黒いコボルトは首を傾げていた。
やはり言葉を理解するにはこいつもレベルが足りないのだろう。
勝手にレベルを上げると依頼主に怒られてしまうため、話せないが心のコミュニケーションでどうにかなるだろう。
「とりあえず暗くなる前に帰るか」
「ガウ!」
「よし、じゃあ街まで競走な!」
どうにか言葉も伝わっているしな。
俺はコボルトとともに街まで走った。
ステータス付与を重ねがけしないと全く追いつけないほど黒いコボルトの足は速かった。
全力疾走をする俺達を見て門番が警戒していたのは面白かった。
俺を見た瞬間に槍を構えたからな。
普通なら隣にいる黒いコボルトを見たら構えるだろうに……。
そのまま屋敷に戻ると玄関で執事が待っていた。
「冒険者様お疲れ様です」
「お疲れ様です! たくさん散歩してきましたよ。なぁ?」
コボルトに声をかけると尻尾を振っていた。
大きく振った尻尾が俺の視界を邪魔するほどだ。
「ふふふ、こんなに喜んでいるバリーを見たのは久しぶりです。ありがとうございました」
「いえいえ」
どうやら黒いコボルトの名前はバリーと言うらしい。
正直どちらもコボルトだから呼びづらかった。
「こちら報酬と首輪ですね」
執事から青色の首輪と依頼書を受け取った。
バリーが付けている首輪と全く同じで色違いの物だ。
これなら森で寝ているコボルトに似合うだろう。
「じゃあ、コボルトまた今度も遊ぼうぜ!」
俺は屋敷を後にして一つ目の依頼を報告するために冒険者ギルドに向かった。
「ははは、お前さんコボルトって言われてたのか!」
「クゥーン」
「また昔みたいに甘えん坊になって……。私が元気だったら遊んでやれるんだけどな」
「ガウ!」
「そうか。また今度ゆったり散歩にでも行こうか」
振り返るとそこには執事に優しく抱きつかれて尻尾を振っているコボルトがいた。
あの時のように襲ってくる様子はどこにもなかった。
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