第5話 ゴブリン討伐 ※ルーダ視点
今日から彼がいなくなって三人だけのパーティーだ。
「後ろは大丈夫かい?」
「こっちは大丈夫よ」
「お互い周囲を警戒して進むよ!」
魔物の討伐に向かうだけなのに、常に気が抜けないのは普段と違って神経がすり減るような感覚だ。
今まで彼に頼り切っていたのがその証拠だろう。
彼は付与術師の能力を使い、ステータスを常に上げていた。
そのため急に魔物が襲いかかって来ても、すぐに回避することができた。
だが今日からは違う。
お互いに周囲を警戒しながら進まないと襲われた瞬間に死んでしまう恐れがある。
「ゴブリンが目撃されたところはこの辺だわ」
ソフィアが地図を見ながら目的地の場所を探している。
今回の依頼はゴブリン討伐と比較的簡単な依頼だが、装備が整っていない私達にしたら難易度は高い。
装着している防具が一つもないのだ。
持っている武器も今すぐにでも壊れそうな武器のみ。
そもそも装備が整っていないなら採取の依頼を受ければいいと思うが、私達は採取依頼を受けたことがない。
採取も彼が討伐依頼の合間にやっていたぐらいだ。
あの時にでも教えてもらうべきだった。
「本当にここにいるのかしら?」
「依頼書ではここら辺だよ」
周りを見渡してもゴブリンの姿が一体も見えない。
本当にゴブリンがいるのだろうか。
――ガサガサ!
背後から草が揺れる音が聞こえた。
私達は警戒を強め武器に手をかけた。
「シッ! きっとゴブリンだわ」
――クイクイ!
結局茂みから聞こえた声は鳥の鳴き声だった。
「なんだ……鳥か――」
しかし気を抜いた瞬間に敵が襲いかかって来たのだ。
「グエ!」
背後からゴブリンが数体襲って来たのだ。
私達はいつも通りに剣を抜いてゴブリンに切りつける。
「グアァァー!」
「ソフィア早く魔法の準備を!」
「わかってる」
外れ武器と言われている剣も一振りだけはどうにか壊れずに済んだ。
そのまま追撃するように剣を構える。
今すぐにでも切りつけたいが武器の耐久性が心配で動けない。
そんなことを思う暇もなく右の茂みからゴブリンが襲って来る。
「ルーダ右よ!」
「くっ!」
私は今にも壊れそうな剣を使うしかなかった。
剣でそのままゴブリンの攻撃を防ぐ。
ここで剣が折れてしまえば私はゴブリンの攻撃で致命傷を負うかもしれない。
「ソフィアまだか?」
「この武器じゃ魔法の展開に時間がかかるの……」
やはり武器の問題か彼の恩恵が今まで強かったのだろう。
ソフィアも以前は詠唱せずに魔法を放つことができていたが、以前との違いに驚いている。
「私も戦うわ!」
「モナには――」
「でもやるしかないのよ! そのために準備したのよ」
モナはメイスを持ってゴブリンに向かった。
ただ今まで後方で援助していたモナは戦いの基礎もできていない。
そもそも前使っていた武器は杖だった。
杖とメイスじゃ長さも違うし用途も異なる。
「武器の耐久性にかけるしかないのか」
モナを守るように剣を振る。
それでもまだ折れない剣を不思議に思いながらも、命をかけて彼女らを守ることにした。
それが女剣士としての役割だから……。
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