第4話 依頼
俺はその後すぐに冒険者ギルドに向かった。
彼女達が事前に何の依頼を受けるか確認する必要があったからだ。
俺の予想は的中し、彼女達は冒険者ギルドの依頼掲示板の前で依頼を探していた。
「やっぱりゴブリンがいいかな?」
「ウルフ系は足が速いから、いざとなった時に素手と魔法で対応できる魔物ってなったらね……」
「あたいはスライムじゃなければいいよ」
「さすがにスライムを素手で倒せとは言わないわよ」
「じゃあゴブリン討伐にしましょうか」
「群れじゃなければ多少の怪我は私の魔法で治せるけど安全第一で戦ってね」
「はーい」
ソフィアが依頼掲示板から紙を取り外すと受付に向かう。
「ソフィアが依頼を受けに行ってる間に私達は武器を取りに行ってくるわ」
どうやら彼女達は別行動をするらしい。
俺はソフィアにバレないように後をつけることにした。
「ゴブリン討伐の依頼ですか?」
「はい」
「ソフィアさんのパーティーであればもう少しランクが高い魔物の方が……」
俺も装備がいくら弱くても、まさかゴブリンの討伐を受けるとは思いもしなかった。
つい最近までオーガやワイバーンの討伐をしていたパーティーがゴブリンの討伐依頼を受けるとは受付嬢もびっくりだろう。
「今はこれでいいんです」
「わかりました。あまり低ランクの依頼ばかり受けるとランクが下がってしまうので注意してくださいね」
冒険者は自分のランクより下の依頼を受けることができる。
ただ、低ランクの仕事を奪うことになるため、措置としてランクの降格がある。
ランクが下がってしまえば、必然的にメンバーのランクを総合してつけられるパーティーランクも下がってしまう。
それを受付嬢は心配していたのだろう。
ソフィアは依頼を受けると冒険者ギルドを後にした。
「次は武器屋の方か」
俺もその後ろをついて行こうと向きを変えた。
すると突然誰かに肩を掴まれる。
「おい、クロウこんなところで何をしているんだ?」
「ああ、クラインか」
俺の肩を掴んだのは同じ冒険者のクライン。
彼はこの冒険者内でもモテてるムカつく男だ。
俺も彼みたいに女性と話しても緊張しない男になりたいものだ。
「お前はついて行かなくてもいいんか?」
「あー、俺は大丈夫だ」
「ふーん、そうなんだな」
クラインは何か考えごとをしているのか黙る。
そしてニヤリと笑った。
「まあ、付与術師は大変だと思うけど頑張れよ」
そう言ってクラインは立ち去った。
どこかその後ろ姿はウキウキとしていた。
♢
俺は彼女達を先回りするように門に隠れて待っていた。
どこか門番の視線が気になるが多分気づかれていないだろう。
気づかれていたら声をかけられるはずだ。
「ソフィアお待たせ」
「武器は大丈夫だった?」
「ああ、今のところは壊れてないよ。だからといって乱暴に扱うとすぐに壊れるから慎重に扱うんだ」
女剣士のルーダはゆっくりとソフィアに杖を渡すと、恐る恐るソフィアは受け取った。
そんな耐久性を上げてはいないはずだが、流石にそこまでビクビクしなくても大丈夫なレベルには上げてあるはず。
「じゃあ出発しようか」
「私達が心を入れ替えた初依頼よ。頑張りましょう」
「ああ」
それにしても心を入れ替えたとは何のことだろう。
どうせ俺をパーティーから追放したことを言っているのだろう。
心を入れ替えたのではなく俺を排除した。
ただそれだけだ。
俺の心の中では彼女達への増悪感が強くなっていた。
ただ、これが成功したら彼女達の復讐心は落ち着くだろう。
彼女達はゴブリンの討伐依頼を達成させるために街を後にした。
俺はその後ろからバレないように追いかける。
あれ?
また門番の視線がこっちを見ていたような……。
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