第39話 謎のダンジョン

 目を覚ますとコボルトとゴブリンはなぜか俺にくっついていた。


 二人して何かボソボソ言いながら震えている。


「街は怖い……人間も怖い……」


「オラはこのまま死んじまうんだ……オラは……」


「おはよう」


 俺が声をかけると二人はビクッとした。


 不安げな顔はパッと明るくなり俺に抱きついてきた。


「ボスゥー! 起きるのが遅いです」


「そうです! オラ達が心配じゃないんですか」


 二人は俺にべったりとして離れる様子はなかった。


 狭小化で小さくなっているから問題ないが、大きい姿のままだと今頃潰れていただろう。


 それにしてもこの反応は何かあったのだろうか?


「昨日拙者、死ぬかと思いました」


「オラもです!」


「心配って……ただのこむら返りだろ?」


「はにゃ?」


 コボルトとゴブリンはお互いの顔を見て考えているようだ。


 昨日は二人ともこむら返りをして動けなくなっていた。


 夜に痛みが走って飛び起きるのが一般的だが、魔物は人間とどこか構造が違うのだろうか。


「こむら返りって言ってな――」


 俺は二人に昨夜のこむら返りについて説明する。


「では拙者が昨日見たのは……」


「あー、多分ここの店主だぞ! 心配して水を持ってきてくれたぞ?」


「そっ……そんなことだろうと初めから思ってたぜ! まぁ、ゴブリンが驚いていたから拙者も驚いちまったぜ」


「オラを起こしたのはコボルトさんじゃないですかー!」


 次第に状況が理解できたのか二人は俺から離れた。


 二人は今日も朝から戯れあって元気そうだ。


「じゃあ、準備してからダンジョンに向かうぞ!」


「やっと可愛いコボルトちゃんに撫でてもらえるのか!」


「王都のゴブリンは優しいといいな」


 二人ともそんなにダンジョンを楽しみにしていたのか。


 それにしてもコボルトよ……。


 生えてもいない毛を一生懸命手櫛しても変わらないぞ。


 しかも胸毛だけ一生懸命真っ直ぐに伸ばして、さらに気持ち悪さが増しているだけだ。


 俺達は店主に挨拶をして、昨日紹介された還元率と危険率が低いと言われているダンジョンに向かうことにした。





「あのー、ボス?」


「なんだ?」


「ダンジョンってこんなに恐ろしいところなんですか?」


「いや、俺もわからないが入る前からして不気味だよな」


 俺達はダンジョンに着いたが入り口で入るか迷っていた。


 還元率も危険率も低いと言われて来たダンジョンだが、見た目からして暗くて不気味なのだ。


 どこかこの先は行ってはいけない雰囲気が出ている。


「でもこの中に可愛いコボルトちゃんがいるんですよね?」


「あー、多分そうじゃないか?」


 普通のダンジョンならコボルトの一体はいるだろう。


 だが、こんな雰囲気のところに本当にコボルトがいるのかも疑問だ。


「ボス、何かありますよ?」


 コボルトは入り口で小さな石を見つけた。


「なんだこれ? 水晶玉か?」


 わずかに光っているが色がくすんでおり、ただの石にしか見えなかった。


「まぁ、邪魔だから捨てておくか」


 俺はその石を遠くに投げた。


――パリン!


 どこか遠くで何かが割れる音が聞こえた。


 石が何かに当たったことで下にあったものが割れたのだろう。


「じゃあ、兄貴行きましょうか」


「おっ……おう」


 どこか頼りになるゴブリンを先頭に俺達はダンジョンの中を進むことにした。


 この時俺達は何かおかしいと気づいて帰るべきだったのだ。


 後から聞いた話では王都には近づいてはいけないダンジョンが存在していた。


 そこはトラップや魔物も即死級で入ったら絶対返って来れないと言われているダンジョンだった。


 今は誰も入らないように、入り口に防御魔法がかかった水晶玉で管理しているとか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る