第35話 "性質変化"狭小化
「よし、作戦名を発表しよう」
「ボス急にどうしたんですか?」
「兄貴……?」
どこか二人は心配そうにこちらを見ていた。
「名付けて"たまたま入ったダンジョンが嫌がらせたっぷりでした"でどうだ?」
「……」
せっかく作戦名を考えたのに二人は黙っている。やはり俺の才能に驚いたのだろうか。
「おい、なんか言えよ」
「拙者少し距離を置こうと思います」
「オラもちょっと兄貴のこと初めて残念な人だと思いました」
「……」
こんなに言われるとは思いもしなかった。
別にただ作戦名をつけた方が目的がわかりやすいと、思っただけなのにこの有様だ。
「どうせ俺なんて必要ない男ですよ。パーティーを三回も追放されて、使えない付与術師で邪魔な存在だ!」
「ボスは決して邪魔な男では――」
「パーティーから追放されたのは兄貴が悪いわけでは――」
「あいつらに絶対嫌がらせしてやる!」
「はにゃ?」
なぜか考えているだけでイライラしてきた。そもそもなぜ俺が王都まで来なきゃいけないんだ。
こいつらが大人しくしていたらこうはならなかったのだ。
「お前ら……」
「えっ……」
「ちょ、兄貴……」
俺は二人に詰め寄り肩に手を置いた。
「しっかり働いてもらおうか」
「えー! ボス理不尽ですよ」
「そうですよ! オラ達はゴブリンを見にきた――」
「いや、可愛いコボルトちゃんに会いに――」
「よし、目的が同じならちゃんと働こうか!」
「うぇー!?」
全ての問題はこいつらのせいだ。
レベルアップ調整しなくても話せたら問題はなかったはず。
俺はコボルトとゴブリンを引っ張りダンジョンの入り口まで戻った。
ダンジョンは相変わらず俺達の話を聞いて笑っていた。
♢
「ボス、いつまでここで立っていたらいいんですか?」
「オラ足が疲れました」
「二人とも休むんじゃない!」
「そういうボスだってもう足がプルプルしてるじゃないですか」
俺達はずっとダンジョンの入り口で待機している。
ただ問題が一つあった。
それは……。
ダンジョンに誰も来ないということだ。
出来たばかりのダンジョンでも、人はある程度来るはずなのにここには誰一人来ないのだ。
俺の時みたいにギルドマスターに情報をもらったり、そもそも人が溢れかえるほど多い王都が近くにあるのに誰も来ない方がおかしい。
「ちょっとダンジョンの見学に行ってきてもいいか?」
「えー、ボスだけ可愛いコボルトちゃんに会いに行くんですか? 拙者もコボルトちゃんに撫でてもらいたいです」
「オラも王都のゴブリンに一目お会いしたいです」
ゴブリンはなんとなくわかるが、コボルトは完全にどこかエッチなお店に行きたくて駄々をこねるおっさんみたいだ。
「いや、お前達を連れてくのは流石に無理だ」
ただこいつらを連れて冒険者ギルドやダンジョンに行くのは無理がある。
急に変異種であるコボルトとゴブリンが来たら大パニックになるだろう。
「ボスだけ満喫するんですね? 可愛いコボルトちゃんをモフモフしてくるんですね? 拙者がいるのに浮気してくるんですね?」
「いや、オラは別に大丈夫ですよ。楽しんできてくださいね。ちゃんとどうだったか感想を教えてくださいね。あとは……」
二人とも反応は違うがよほどダンジョンに行きたいのだろう。
俺ができる付与術になにか使えるものが……。
「あっ、あれならいけるかも」
「なんですか!?」
「本当ですか?」
『あのー私も出来たら……』
流石にダンジョンを連れ歩くのは無理だろう。そもそもダンジョンの本体がどれかもわからない。
動くダンジョン……余計に誰も挑戦しなくなるだろう。
「エンチャント"性質変化"狭小化」
俺はコボルトとゴブリンに"性質変化"狭小化の付与魔法をかけた。
「おっ、なんだこれは」
「あれ? 兄貴がだんだん大きくなっていく」
この魔法は対象の全てを小さくできるのだ。
単にまだ使い慣れていないから全てを狭小化させる付与術だ。
「これで連れ歩いても問題ないな」
俺の目の前には毛がない子犬と血色が悪い男の子がいた。
──────────
【あとがき】
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