第34話 ダンジョンクリア

 俺達は今の状況に困惑している。


 ボス部屋だと思って入った部屋にはボスが不在だった。


 せっかくだから強い魔物とこいつらを戦わせて人間に対して危険なのか実力の把握がしたかったが、部屋の真ん中には水晶玉のようなものが静かに漂っているだけだ。


「クリアってどういうことだ?」


『そのままの意味です』


「あれ? コボルトちゃんはいないんですか?」


『資金が足りないのでいないです』


 どうやらダンジョンの運営をするのに資金が必要らしい。


 コボルトはダンジョン産のコボルトに会えなかったのが悲しいのか落ち込んでいる。


「資金ってどういうことだ?」


『そのままの意味です。私はまだ出来たばかりのダンジョンなのでレベルも足りないし資金も足りないんですよ』


 話を聞くとどうやらダンジョンにはルールがあるらしい。


 出来たばかりのダンジョンは様々あるスキルから選択してダンジョンを作成することでできるらしい。


 そこから攻略しようとする人達を倒すことで、経験値と資金を得て少しずつダンジョンとして成長する仕組みらしい。


「それでお前は何のスキルを得たんだ?」


『私は会話・・です』


 俺の聞き間違えだろうか。


 ダンジョンであれば魔物召喚やトラップ召喚という言葉を聞くと思ったんだが……。


「もう一度聞いていいか?」


『はい、私は会話のスキルを選択しました』


 これはやらかしたパターンなんだろう。そもそも会話を主にしたダンジョンってどういうことだ?


「それは話をしたら資金が手に入るのか?」


『いや……人間を倒さないと資金は手に入らないです』


「……」


 これは完璧に詰んでいるやつだ。会話しかできないダンジョンで冒険者を倒すって確実に無理だろう。


「ボス、どういうことですか? コボルトちゃんは出てこないんですか?」


「コボルトさんは馬鹿なので少し静かにしてもらってもいいですか」


「なんだと!?」


 コボルトとゴブリンは戯れあっていた。


 そういえばここにも魔物がいた……。


「魔物ってスキルから出したやつじゃなくてもいいのか?」


『人間を倒せれば問題ないです』


「じゃあ、それに協力したら俺に協力してくれることも可能か?」


『それはあなた次第です』


 俺はニヤリと笑った。


 これで新しい嫌がらせができると確信した。


 有名なダンジョンになればあいつらも新しい装備や資源を求めてくるはず。


 道のりは長いがこいつらも有効活用できるから一石二鳥だ。


「ボスのあの顔は絶対何か悪いことを考えていますよ。気持ち悪いですもん」


「それが兄貴ですからね。ただ、気持ち悪いのは前からですよ?」


 やはりこの二人には躾が必要らしい。


 俺が振り返ると二人ともビクッとしていた。


 こいつらもいい加減学習すれば良いものを……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る