第53話 クロウの居場所 ※一部ソフィア視点

 俺達は急いでトラップの準備を進めた。ゴブリンに関してはあいつらに復讐してトラウマを克服するチャンスだと励ますと、どうにかいつも通りに戻った。


 むしろ自分から動くほど活発的に働いている。


「ボス、この針地獄はここでいいですか?」


「いや、流石に入ってすぐあったら誰も奥まで来れないだろう」


「さすがボス!」


 トラップの数が多い分、二人を放っておくと即死級のダンジョンができてしまう。


「じゃあ次のトラップを――」


『ご主人様今いいですか?』


「あー、どうした?」


『今冒険者と思われる人達がダンジョンの中に侵入しました』


「なにぃー!?」


 俺達がトラップの配置を終える前に、冒険者達が来てしまった。


 急いでトラップを設置して隙間に仲間達と隠れることにした。





 私達は冒険者ギルドでこの話を聞いて早速ダンジョンに向かった。


 なんと受付嬢の話ではクロウはダンジョン攻略をしているらしい。


 一人でもダンジョンを攻略するクロウって――私達の実力がまだまだと再認識するばかりだ。


「確か聞いたダンジョンってここら辺だったかな?」


「説明してもらった地図では確かここだったはずよ」


「初めてのダンジョンだから自分の腕試しにちょうど良さそうだな」


「私もせっかく戦えるようになったから楽しみだわ」


 ルーダとモナは早速やる気に満ち溢れていた。


 モナも以前は後方支援をしていたが、今は自らメイスを片手に魔物達の中に突っ込んで戦うスタイルに変わってきている。


 私達の新しい戦い方がどこまで通用するのか楽しみになっていた。


「それにしてもダンジョンが見当たらないわね」


「ギルドの方が言うには、まだ管理されていないから入り口もわかりづらいと言っていたよ」


「なら見つけるのは自力ってことか……ん?」


 ダンジョンの入り口がわからず教えてもらった場所の周囲を彷徨っていると、知っている匂いが風に乗って流れてきた。


「これって……」


「やっぱり二人も気づいたのね」


「ああ」


 匂いからしてクロウが近くにいるのがわかる。私達は毎晩クロウが着ていたシャツを握りしめて寝ている。


「匂いからしてこっちか?」


 一番五感が良いルーダに頼るように私達はダンジョンを探すと近くに大きな穴を見つけた。


「これがダンジョンかしら……。思ったよりもただの穴だね」


「まるで魔物が掘った穴のようね」


 ルーダがここにクロウがいると分かれば、行かない手はない。


「ダンジョンといえば報酬よね」


「ふふふ、モナは何か欲しいものはあるの?」


 ギルドの話ではここでレベルアップポーションが見つかったらしい。


 ステータス、スキルともに強くなるそのポーションは冒険者にとっては神のようなアイテムと言われている。


 それを飲むだけで強くなるなら、今すぐにでも欲しい。


「私は惚れポーションがあったら嬉しいわね」


「いやー、さすがに存在しないでしょ」


 惚れポーションとは飲んだ後、一番はじめに見た人を惚れてしまうという伝説の薬だ。


 本などには出てくるが本当に実在するのかもわからない。


 ただ、レベルアップポーションも伝説に近い分類のポーションのため、ひょっとしたら出てくる可能性もあった。


「もし見つけたらどうするんだ?」


「それはクロウに使うわよ」


 もしそうなったら私は諦めるしかないのだろう。


 私達はそんなたわいもない話をしながら、ダンジョンだと思われる穴に入っていくことにした。

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