第47話 今日もトラップ日和です
俺は急いでダンジョンに戻るとすでにコボルトとゴブリンがトラップの設置を終えていた。
「ボス、勧誘はどうでしたか?」
「ふふふ、聞いて驚け」
「なっ……なんですか?」
「まさかのギルドマスターがギルド内の冒険者に宣伝してくれることになりました!」
「ウェーイ!」
俺の報告に三人は喜んでいた。ダンジョンなんか泣いているのかだんだん声が掠れるほどだ。
『うっ……』
いや、すでにダンジョンは泣いていた。
今までダンジョンとして認識されていなかったが、それほど辛かったとは思いもしなかった。
「これでボスが
「この中でボスが一番
喜んでいる合間に聞き逃してはいけない言葉が、俺の耳に入ってくる。
「ん? お前ら俺のことをそう思ってたのか?」
「はにゃ? 拙者何も言ってないですよ?」
「はにゃ? オラ何も言ってないですよ?」
二人揃って同じように知らないふりをしていた。ああ、こいつらには本当にお仕置きが必要なようだ。
「お前ら良い加減にしろよ」
俺は目に入ったスイッチを押した。
今押したボタンはダンジョンから持ってきたトラップのボタンだ。
持ち運びができるように魔法陣を付与したのは俺だ。
何のトラップを仕掛けたかは俺も把握している。
「ボスそれは――」
「兄貴――」
ボタンが僅かに青色に光っているため、水が噴射されるはずだ。
食らうがいい水の力を――。
水の力よ!
あれ……?
水は……?
「おい、これどういうことだ」
「実はトラップが壊れていまして……」
「へっ?」
――ガタン、ゴロゴロ!
音のする方に目を向けると何かがこちらに近づいてきている。
「おい、これってまさか――」
「はい、水じゃなくて岩が落ちてくるようになりました」
目の前に突然大きな岩が転がってきた。
確かこのダンジョンの形状って、入り口からボスの部屋までは一直線だ。そこを岩が転がるということは、自然と俺のところへ転がって来るということだ。
「兄貴早く逃げないと巻き込まれますよ」
「逃げろー!」
だから大きな岩が転がってくると、出口に出るまで追いかけてくる。
「おーい、こういうのは早く言えよ!」
「すみません! まさかボスが押すとは思いもしなかったです」
「あれだけトラップに引っかかってたらもう懲りたと思いましたよ」
俺は単純に二人を躾けるためにボタンを押しただけだ。決して好奇心で押したわけではない。
「ボス足元!」
「へっ?」
――カチャ!
また音からして嫌な予感がした。
「あばばば」
「ちょ、前が見えないじゃないか!」
俺が踏んだのは側面から水が噴き出すトラップだった。
トラップをもらってきたダンジョンでは壁に触れた際に水が噴き出すトラップがあった。そのトラップと岩が転がるトラップが入れ替わっていた。
その後もトラップを踏みまくり気づいたら入り口へ追い出されていた。
「はぁ……はぁ……」
「ボス……いい加減気をつけてくださいよ」
「いや、ちゃんと見てたけどあんなに連続にトラップを置くなよ」
もらったトラップの数が多いからか、トラップの間隔が狭くすぐに発動する仕組みになっていた。
数歩歩いたらトラップ、それを回避してもトラップとトラップだけだ。
その結果、常に全力で走っていないと逃げ遅れてしまう。
「おい、こんな状態だと来てもすぐに冒険者達は帰って行くぞ?」
「はにゃ? 一度試してみましたが大丈夫でしたよ?」
「これぐらい簡単ですよ?」
ステータスが高いこいつらを基準に合わせたら、冒険者達はきっとすぐに帰ってしまうだろう。
いくらなんでもトラップが多すぎる。
「もう一度トラップを回収してこい!」
「えー! せっかく設置したのにですか?」
「ああ、今すぐにやり直しだ」
「はーい……」
二人は嫌々そうだが、強制的にトラップの回収をすることにした。
そういえば冒険者達はいつになったらくるのだろうか。
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