第48話 おーい、冒険者よー!
俺達はあれからトラップを回収して、再度置き直しながら冒険者達が来るのを待っている。
「あのー、兄貴いいですか?」
「なんだ?」
「本当に冒険者達の勧誘に行ってきたんですか?」
しかし、いくら待っても冒険者達は現れない。
ちゃんと王都の冒険者ギルドに来た時に、新しくできたばかりのダンジョンからドロップしてきたと伝えたはずだ。
「ちゃんと行ってきたぞ!」
「ボスもう一度行ってきた方がいいんじゃないですか? きっとみんな迷子になってますよ?」
「そんなはずはないだろう。だってここを教えたのはギルドマスターだぞ?」
「そうですよね……。でも王都にはダンジョンがたくさんあるから間違えたのかも知れないですよ」
確かにここのダンジョンを見つけたのは偶然だった。
王都周囲のダンジョンはこの間行ったところと、このダンジョンを含めると近場に二ヶ所あることになる。
「お前らがそんなに言うなら、もう一回ギルドに行ってくるよ」
俺は本当にギルド内でダンジョンの宣伝がされているのか確認するためにギルドに戻ることにした。
♢
俺は何度王都の冒険者ギルドを往復すれば良いのだろうか。
そんなことを思いながら冒険者ギルドの扉を開けると中は静まり返っていた。ギルド内にいたのは数人の冒険者と受付嬢だけだ。
俺は精神耐性増加を付与させると受付嬢に話しかけた。
「あのー、皆さんはどこに行ったんですか?」
「あっ、クロウさん! 皆さんならクロウさんが言っていたダンジョンに行きましたよ?」
「へっ?」
この受付嬢は何を言っているのだろうか。もし俺のいたダンジョンに向かっていたら、今頃ダンジョンには人が溢れ返っているし、俺が王都に向かっている間に誰かとは会うはずだ。
「俺もダンジョンの入り口に待っていたんですが、誰一人来なかったですよ?」
「えっ……ほんとですか?」
「はい」
受付嬢は裏に戻ると大きな地図を持ってきた。
そろそろ俺の精神耐性も限界を迎えそうになっている。
受付嬢が地図を広げると中心には王都があり、いくつか周辺にはバツ印が書いてあった。
「ここに書いてあるのが現在王都で確認されているダンジョンになります」
「ああ」
そこには以前行ったダンジョンも書かれている。
「それでクロウさんが行ったダンジョンってここですよね?」
俺は受付嬢が指を差したところを見るが、完全に差しているところが違った。
俺が行っていたダンジョンは指を差した方と反対なのだ。
しかも、まだ何も印が書いていない。
「俺が行ったダンジョンはこの辺です」
俺は地図を指差すと受付嬢は指と顔をチラチラと何度も交互に見ている。
「クロウさん本当ですか?」
「ああ」
「それって新しいダンジョンじゃないですか!」
「うぇ!?」
「早くダンジョンに向かったギルドマスターに報告して管理しないといけないですね! クロウさん報告ありがとうございました」
受付嬢は裏に消えると、ギルドマスターに連絡しに行ったのだろう。
ギルドマスターがいないとは思っていたが、まさか責任者自体がダンジョンに行っていたとは。
そんなにレベルアップポーションがすごいのだろうか。
そして俺はテーブルの広げられた地図を再び確認して初めて違和感に気づいた。
この間行ったダンジョンが、教えてもらったダンジョンと全く違う反対方向に存在していた。
どうやら、俺は今まで王都周辺の地図を上下逆さに見ていたらしい。
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