第49話 来るのが早いんだよ! ※一部ソフィア視点

 俺は冒険者ギルドから出ようと、扉を開けると誰かにぶつかった。


 分厚い胸板に俺はギルド内に押し戻される。


「あっ、すま――」


「クッ……クロウ!?」


「クラインか?」


 俺の目の前にはクラインが立っていた。イヤーダ街で活動しているクラインがなぜこんなところにいるのだろうか。


 それにしてもどこか顔がやつれている。


「お前痩せたか?」


「ああ、やっと探したぞ」


「ん? どうしたんだ?」


 クラインは深刻そうな顔で俺を見つめている。


「お前本当に大丈夫なのか?」


 俺は顔を覗き込むと、視界の端にはなぜかあいつらもいた。


 追放した忌々しい女性三人組だ。


 俺の中ではダンジョンがある程度大きくなったタイミングで何か依頼を出して呼ぶつもりだった。


 だが、すでに奴らは王都にいる。


「ってことがあってな……」


「ふぇ!? なんか言ったか?」


「おい……クロウ……またあれを俺に言わせる気かよ」


 クラインは何か話していたが耳に入って来なかった。


 だってあいつらが俺の存在に気づいて、こっちに近づいてきたのだ。


「クラインすまない。今すぐ準備をしないといけないから帰る」


「おい、準備ってなんだよ! おい!」


 クラインに呼び止められながらも急いでギルドを飛び出す。


 俺はあいつらに嫌がらせをする準備に取り掛かるために急いでダンジョンに帰ることにした。


「おい、俺の息子が元気ないのを治してもらうために来たのに……」


 クラインはズボンを少し引っ張り、元気がなくなった息子を眺めてため息をついた。





「ちょっとモナ引っ張らないでよ」


「早くしないとクロウがクラインに取られちゃうわ」


 私達はクロウを追いかけて今さっき王都に着いたばかりだ。


 初めに冒険者ギルドに顔を出そうとしたら、ギルドの入り口でクロウとクラインが話をしていた。


 クロウが王都に向かったのは知っていたが、なぜクラインが王都にいるのか疑問に思った。


 そして、その疑問を感じたのは私だけではなかったのだ。


「クラインに聞かないとわからないわ。きっとあの様子じゃクロウを追いかけて来たに決まってるわ」


「流石にそれは――」


「あなた達はまだ王都で流行っている例のあれを読んでないからそう言えるのよ。私はこの間、貴族時代の友達から渡されたのよ」


 モナが言っている例のあれとは、この間言っていた公爵様と騎士の物語のことを言っているのだろう。


 あれからモナは二人でいる男性を見ては、常にあの二人はできているわと言っていた。


「ほら、あなた達も見てみなさい。クロウとクラインを見ている人がたくさんいるでしょ!」


「ほんとだ……」


 言われてみれば、なぜか冒険者ギルドを遠くから見ている女性達が多かったのだ。


 やはり王都ではモナが言っていた男性同士の恋愛が流行っているのだろう。


「だからちょっと聞きに行くわよ」


「でも流石に……あっ、クロウがどっかに行っちゃうわ!」


「うそ!?」


 気づいた時にはクロウが走っていき、そのままスッと消えていなくなってしまった。


 付与術師はパーティーに守られる存在のはずが、クロウは姿を隠している。


 いつもクロウは目を離すとすぐに消えてしまう。


「二人が早くしないからよ!」


「だって私達はそんなことになるとは思わなかったもん」


あたいだって未だにその……男同士とか考えたことないぞ」


「もう、相変わらず二人は流行に疎いんだから! ほらクラインに何があったのか聞きに行くわよ」


「わかったよ」


「はいはい」


 私達はモナに引っ張られながらもクラインの元へ向かった。

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