第28話 森の異常 ※一部ソフィア視点
俺は依頼の現状を報告をするために冒険者ギルドに戻った。冒険者ギルドはなぜか騒然としている。
時間帯も依頼報告をする夕暮れ時のため、いつもならもっと賑わっている。
「クロウさんどうでしたか? さっきあった地震と関係ありましたか?」
カウンターにいた受付嬢が声をかけてきた。
こいつは俺をいじめたくて急に話をかけてきているのだろうか。
咄嗟に付与術を発動させて話すことにした。
「地震で魔物達が逃げ出していた」
「逃げ出していた!?」
俺はある設定を作ることにした。それは地震で魔物達が逃げ出しているということだ。
地震とはきっとコボルトが使った魔法のことを言っているのだろう。
「あっ……また揺れてるな」
現に今も数時間おきにコボルトが魔法で地面を揺らしている。
「それじゃあ緑色の生物と毛がない物体はなんなだったんですか?」
「あー、それはゴブリンとコボルトだと思う」
「ゴブリンとコボルトですか?」
「ああ。どっちも必死に逃げているところを見つけたし、コボルトなんかストレスで毛が抜け落ちていたぞ」
今回の依頼である緑色の生物と毛がない物体とは、本能的に異変を感じた魔物達が逃げ出しているところを冒険者達が目撃していたという作り話だ。
少し事実を混ぜることで嘘も信憑性が増してくる。
まぁ、実際はほぼほぼ嘘なんだけどな。
「そうですか……」
「命の危険を感じている魔物は俺も目で追うのがやっとだったから、それが変わった生物に見えたんだろうな」
「ご報告ありがとうございました。ではしばらくは森に近づかないように伝えた方が良いですね」
「ああ、それが良いと思う」
どうやらこれで指名依頼は問題ないらしい。
あとは
「それでしばらくの間活動拠点を変えようと――」
「どこに行かれるんですか?」
「ああ、王都に行こうと思ってね」
「そうですか。いつ頃向かう予定なんですか?」
「明日には行くつもりだ」
「急なんですね……」
だっていつまでもイヤーダ街にいたらコボルトとゴブリンの存在がバレてしまうからな。
あいつらに嫌がらせできないのは悔しいが、今は俺の付与術が原因で進化させたコボルトとゴブリンが被害を増やさないようにすることが第一優先だ。
そのままにしていたら何をするかもわからない。
「王都に行っても元気で過ごしてくださいね」
「ああ、今まで世話になったな」
俺は逃げるように冒険者ギルドを後にした。
ただこの話を聞いていたのは受付嬢だけではなかった。
♢
私は冒険者ギルドに来たら驚きのことを耳にしてしまった。どんなにうるさく聞こえる声の中でも、私だけではなくモナとルーダも聞こえていたようだ。
「クロウが王都に移動するって……」
「でも少しだけって言っていたわよ」
「なら活動拠点を変えるとまで言わないはずだ」
「……」
私達の耳に入ったのは"しばらく活動拠点を王都に変える"という内容だった。
王都は資源が豊富のため冒険者達が多く集まるところだ。
そんなところに行ったらクロウは瞬く間にモテてしまう。
現に王都では同性同士の恋愛が流行っているぐらいだ。
せっかく少しずつ目立った私達なのにそんな場所に行ったら私達のことを忘れてしまう。
ここは決断する時よ!
「よし、私達も王都に行こう!」
「えっ?」
「ソフィアどうしたのよ」
「このままじゃクロウは私達を忘れてしまうわ」
「それもそうね。私達はクロウに認めてもらうためにパーティーを組み直したんだわ」
「
「なら私達も依頼を終えたら活動拠点を王都に変えるけどいい?」
「ええ」
私達もクロウを追って活動拠点をイヤーダ街から王都に変えることにした。
知らないところで私達のクロウが他の人と結ばれるなんて許さない。
それはモナとルーダも同じだった。
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