第26話 謎の生物
あれから次の嫌がらせを探しているとギルドの受付嬢から招集がかかった。
ちなみに今日もしっかり精神耐性を付与している。
「クロウさんにギルドから指名依頼があります」
「ん?」
俺に指名依頼とは珍しい。そもそもギルドからの指名依頼はBランクからしかできないはずだが、確かBランク以上って……俺を含めても数人しかこの街にはいなかった。
そりゃー付与術師でも俺が呼ばれるわけだ。
「それで依頼とはなんだ?」
「冒険者達から森に異様な存在がいると話があったのよ。それを調査してきてほしいの」
「異様な存在?」
「人型で緑の生物と毛がない謎の物体が森の中を高速で移動しているらしいのよ」
なぜか俺の中であいつらの存在が頭をよぎった。
確かに新しく仲間になった
――――――――――――――――――――
「ボスゥー! 拙者達ゴブリンごっこをしてました」
「あいつオラにゴブリンの役をやれって言うんだぜ? そもそもオラはゴブリンだしな」
「ほらほら、そんなこと言ってないで早く追いかけてこいよ! お前のその筋肉は見た目だけかよ」
「なんだとぉー!」
――――――――――――――――――――
こんな感じで遊んでそうな気がする。ただでさえ見た目も大きいし、二人とも素早いから突然出てきたら冒険者が驚くのも無理もないだろう。
ただ、あいつらって人や女性が苦手だから人前に出てくることもないはずだ。
そもそも俺も人なのに、コボルトは問題ないのだろうか。
「期限はいつまでだ?」
「早めでお願いします。見つけられなくても良いので情報が掴め次第お願いします」
「ああ」
俺は謎の二人組の正体を探る依頼を受けることにした。
あいつらでなければいいと俺は願った。
♢
森に向かう明らかに様子がおかしいとすぐに気づいた。
普段は鳥が飛んでいたり、動物を見かけることがあったが全くいない。
そもそも木は薙ぎ倒されており、地面は大きく抉られていた。
明らかに何かがいるとわかるほどだ。
「エンチャント"力強化"」
「エンチャント"魔力強化"」
「エンチャント"防御強化"」
「エンチャント"速度強化"」
何かが起きても良いように自身に付与魔法をかけて強化した。急に強い魔物が出てくる可能性があるからな。
流石に付与術師だけでは、災害級と呼ばれる強い魔物に遭遇したら即死だ。
俺は森の中を周囲を警戒しながら歩いた。たしかに何かが高速に動いているような気はしていた。
基本的に一方向からしか吹かない風がいろんな方角から吹いているのだ。
――ドオーン!
「エンチャント"力強化"」
「エンチャント"魔力強化"」
「エンチャント"防御強化"」
「エンチャント"速度強化"」
突然大きな音がしたため、さらに付与魔法を重ね掛けした後に音の鳴る方へ向かう。
近づいて行くと禍々しい魔力を感知した。災害級の魔物が近くにいるとその場ですぐにわかるほどだ。
森の奥は激しく地形が変わっていた。俺は警戒を強めると、誰かが背中を突いていた。
Aランク冒険者の俺が背後を取られるとはな。
大きく飛んで距離を取りながら振り返る。
「ボスゥー! お元気でしたか!」
「人間か!」
そこにいたのはコボルトとゴブリンがいた。
災害級の魔物ではなく、俺はほっとため息をつく。
「お前らこんなところで何やってたんだ?」
「ゴブリンごっこをしてましたー!」
「オラはそもそもゴブリンだ!」
あれ、この感じは俺が思っていた感じと似ている。
「早く拙者に触れないといつまで経ってもゴブリンのままだぞ!」
「だからオラはゴブリンだって言ってるだろ!」
ゴブリンはコボルトに向かって走ると、そのままコボルトに触れようと手を伸ばす。
「お前の筋肉は見せかけか?」
「なぁ!?」
――ドゴーン!
コボルトはやはり素早いのが特徴なんだろう。ゴブリンに触れられる前にあっさりと避けていた。
地面に突き刺さる拳は辺りの地形を変化させている。
今までの地形の変化はゴブリンがコボルトを捕まえようとしてできた結果だった。
「ほらほら! 早く捕まえてみろよ!」
「ぐぐぐ」
ゴブリンは手に力を入れて再びコボルトに駆け寄る。
このままでは本当に森を壊す可能性があった。
災害級の魔物よりこいつらのほうが厄介だ。
「お前らいいかげんにしろ!」
俺は二人の合間に入るとそのまま頭を持って地面に押さえつけた。
――ドッゴオオオオオン!
無事に俺はコボルトとゴブリンを押さえつけることに成功した。
「ボス酷いですよ!」
「ぬぬぬ、こいつ強い……」
明らかにこいつらのせいで森が形を変えようとしていた。以前の綺麗な森の姿はすでに無くなっている。
「お前らのせいで森が――」
「いや、これはボスのせいですよ?」
「壊したのはオラじゃないぞ」
「えっ? これは……」
俺が二人を押さえつけた時の衝撃で地面は大きく二つに割れていた。
ひょっとして俺が災害級の魔物か?
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