第7話 クラインの魅力

 俺は次の計画を立てるために今日も冒険者ギルドに来ている。


 ギルドに入った瞬間、すでに普段より人が多く賑わっていた。


 今日は何かあるのだろうか。


「よっ、クロウ!」


「ああ、クラインか」


 そんな中、声をかけてきたのはクラインだった。


「今日何かあるんか?」


「ん? 特にないぞ?」


「ならなんでこんなに冒険者が多いんだ?」


「あー、それはあそこが原因だな」


 クラインが指差すところには彼女達がいた。


 どうやら彼女達に声をかけようとして、依頼にも行かずに様子を伺っているらしい。


「別に声をかければいいんじゃないか?」


「おっ、さすが元パーティーメンバーは違うな」


 いや、俺は声をかけられないタイプだ。


 むしろ、女性に自分から声をかけるってなると、ドラゴンが突然街に来るレベルと同等ぐらい考えられない。


「じゃあ、ここは冒険者ギルドで一番のイケメンであるクライン様が行ってこようかな」


「そうかそうか。お前顔だけはいいもんな。行ってこいよ」


 クラインが声をかけたいならそれは仕方ない。


 俺には関係ないことだからな。


 クラインは立ち上がり彼女達に近づく。


「ソフィアちゃん達今いいかな?」


「なによ?」


「いやいや、そんな冷たいこと言わないでよ。こんなに男達から熱い視線もらって困っているんじゃないかと――」


「下心があって気持ち悪いわ」


あたいもこんなヒョロヒョロでいかにも弱そうな男は無理」


「そういうことなので私達はあなたに興味はないのよ」


 彼女達はクラインに言い放つと、徐々にさっきまでの威勢は無くなっていた。


 そのまま落ち込んだクラインは俺の元に戻ってきた。


「なんであいつらあんなに強いんだよ」


「女性はみんな怖いぞ?」


 俺はクラインを慰めるとどこからか視線が痛い。


 チラッと振り返った時には彼女達が睨むようにこちらをみている。


 俺は別に何かしたつもりもない。


 勝手に行動したのはクラインの判断だ。


「クロウは今まであのパーティーでどうやっていけたんだ?」


「んー……よく覚えていない」


「大丈夫か?」


「別に問題はない」


 実際に精神耐性を限界ギリギリまで付与していても、話した記憶全てを覚えておけるほどの余裕は残ってない。


「やっぱりそこは簡単に教えてくれないのか! ここは男の冒険者仲間だと思って――」


 クラインは俺の肩に自分の腕を回すと突然大きな声が聞こえてきた。


「もういい加減にして! 見てられないわ」


 声がする方に振り返ると声の主は彼女達だった。


 また他の冒険者達に声をかけられたと思ったがそうではなかった。


「ソフィア落ち着きなよ。相手は男だよ?」


「そうよ! あたい達とは違う生き物よ」


「それでもあんなにベタベタしているのが気に食わないのよ」


 そう言ってソフィアは冒険者ギルドを去って行った。


「なんか怒ってるぞ?」


「お前が怒らせたんじゃないか?」


「俺?」


「かっこいい男は罪だからなー! ほらどこから見てもイケメンだろ」


 クラインは俺に顔を近づけてきた。


 正直どの角度から見てもクラインはクラインだ。


 そもそも顔が変わることがあるのだろうか。


「やはり私も無理ですわ!」


「ああ、もう見てられない!」


 ソフィアに続くようにモナとルーダも冒険者ギルドから出て行く。


「ほらやっぱりお前がさっき声をかけたのが原因だな」


「ふん、俺は罪な男だな」


「ああ、そうだな」


 俺はクラインを放置して依頼掲示板を見に行くことにした。

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