第8話 コボルト捕獲

 俺は依頼掲示板で次の嫌がらせを探した。


 今度は確実に実行出来そうなもので……。


 ふと目に入ったのは"コボルト"の討伐依頼だった。


 コボルトといえば犬型の魔物で見た目は可愛いのに獰猛なのが特徴的だ。


 きっと女性が好きな魔物で間違いないはず。


 そう思った俺はコボルトを利用して彼女達に嫌がらせをすることにした。


 コボルトはゴブリンがいた森に生息する下位の魔物だ。


 実際俺も何度か遭遇しているが目がギュルルンとして可愛らしい見た目をしていた。


 今回は可愛らしいコボルトが彼女達に近づいて、その間にコボルトを強化して彼女達を倒す作戦だ。


「コボルトはどこかな?」


 森の中を彷徨っていると偶然一匹でいるコボルトを見つけた。


「エンチャント"耐久性"増加」


 俺は近くにあった木の枝に耐久性の増加を何度もかける。


 そもそも俺自身が戦うことをしないため武器を持ち歩いていない。


 そのため近くにある物に付与術をかけて対策するのが俺の戦い方だ。


――ガサッ!


 コボルトの後ろから少しずつ近づくが、俺はまた何かに足を引っ掛けてしまった。


 音に反応したコボルトは振り返った。


 ギュルルンとした目で俺を見つめている。


 遊んでほしいのだろうか?


 すると俺に向かって飛びついて来た。


 だが今はそれどころではない。


 俺はそのまま木の枝でコボルトの体を叩いた。


――メリメリ!


 あまり聞いたことない音がコボルトの体から聞こえてきた。


 コボルトって木の枝よりも弱かっただろうか。


 俺はとりあえず紐で身動きが取れないようにしてコボルトを捕獲した。





 しばらく待っているとコボルトは目を覚ました。


 なぜか俺の顔を見ると震えて怯えている。


「そんなにびびらせることをしたつもりはないけどな……」


 俺が近づくとさらにコボルトはガタガタと震えていた。


 口が見たこともない速さで振動している。


「俺に協力してくれたら見逃そう」


 今回の作戦はコボルトの見た目に釣られて寄って来た彼女達を油断させて攻撃するという嫌がらせだ。


 だが、俺の言葉にコボルトは反応しなかった。


 きっとレベルが低いのが問題なんだろう。


 強い魔物であれば人の言葉を話すことができる。


 赤い空飛ぶトカゲがその一種だ。


 やつは自分のことをドラゴンと言っていたが、ドラゴンがあんなに弱いわけない。


 過去に俺の強化した木の枝で突いたら泣いて逃げて行った。


 だから俺はコボルトに"レベル調整"アップの付与を使って会話できる段階までレベル調整することにした。


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「おい、俺に協力する気になったか?」


 再び声をかけても反応は同じだった。


 単純に付与が足りなかったのだろう。


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「クォ!?」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「クオオオオ……」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「クッ……」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「ちょ……まっ……」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「これいじょ……」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「エンチャント"レベル調整"アップ」


「もうやめてくれぇーーーー!」


「やっと話したか!」


 視界が明るく光ると突然大きな声が聞こえた。


 そこにはさっきまでの小さなコボルトは消え、凛々しく逞しい毛並みのコボルトがいた。


 俺は魔道具を使ってコボルトを鑑定すると新しい種族へと進化していた。



《ステータス》

[名前] コボルト

[種族] 魔獣/雄

[能力値] 力SS/SS 防御A/A 魔力S/S 速度SSS/SSS

[職業] フェンリル


 どうやら俺はコボルトを強化しすぎたようだ。

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