第22話 俺の獲物
俺は近くにあった木の枝や石を拾い、集落の上位種がいる小屋へ向かった。
「あいつら馬鹿なのか?」
幸いゴブリンの知識では隠蔽や偽装の言葉がないのだろう。
いかにも上位種がいるってわかりやすい一際大きな小屋があるからわかりやすい。
中を覗くとそこには様々なゴブリンが集まっていた。
ゴブリンが集まっているのもボスがいると言っているようなものだ。
そして一番奥には一際大きなゴブリンが立っていた。
「ゴブリンジェネラルか」
確かにあのサイズのゴブリンなら小屋が大きくないと入れないだろう。
ゴブリンが群れを成すにはある程度知識がある者が必要になる。
それはただ一回進化したハイゴブリンやゴブリンメイジでは無理で、さらにもう一度進化する必要があった。
「あっ、そういえばあのゴブリンはどこ行ったんだ?」
俺はゴブリンジェネラルの前で必死に話しかけているゴブリンを見つけた。
さっきレベル調整をしたゴブリンだ。
彼は必死にゴブリンジェネラルに何かを伝えているが、ゴブリンジェネラルは首を傾げている。
しばらくするとゴブリンは小屋を出て、彼女達がいた小屋に向かって走って行った。
「アイツラバカスギテ、コトバガツウジナイ」
ゴブリンは何か言っていたが片言すぎて俺には聞き取れなかった。
もう"ゴフゴフ"とは言わなくなったのは確かだ。
「とりあえずこいつらだけは討伐しておいた方がいいよな?」
今後のことを考えるとこの集落を潰しておいて損はないだろう。
ただ俺の実力でそれができるのだろうか。
冒険者ランクとしてはAランクだが、そこまで戦闘に特化しているわけではない。
冒険者ランクはEランクから始まり、依頼数と試験を受けて上がる。
基本的に一般の冒険者はCランクが当たり前でそれより下は見習いと言われるレベルだ。
Aランクぐらいからベテランと言われているが、結局補助の付与術師が出来ることは少ししかない。
戦うのは俺の役目ではないからな。
俺はまずこのゴブリン達の動きを封じることにした。
「エンチャント"性質変化"狭小化」
俺は小屋に付与魔法をかけた。小屋自体を狭小化させることで、小屋に押し潰されたゴブリン達が動けなくなるという作戦だ。
作戦は見事的中し小屋の中にいたゴブリン達はぎゅうぎゅう詰めになっていた。
その状態では外へ出ることもできない。
狭い空間にたくさん集まれば、どんどん圧迫されて苦しくなるだろう。
だが、これで終わるわけがない。
上位種はそんなに弱い存在ではないのだ。
「じゃあ後はこれで終わりだな」
俺はさっき拾った石や木の枝を小屋の真上に投げた。
「エンチャント"耐久性"増加」
「エンチャント"耐久性"増加」
「エンチャント"耐久性"増加」
「エンチャント"耐久性"増加」
石や木の枝全体に重ねがけで付与魔法を発動させた。
耐久性が増加したものはどうなるか……。
それは壊れない武器となるのだ。
――ドドドドォーン!
音を立てながら石や木の枝がゴブリンがいた小屋に落ちてきた。
小さなものでも自身の体より耐久性が高いものが、上空から落ちてきたらゴブリンの体でも貫通してしまう。
「グオォォー!」
それでもゴブリンジェネラルは瀕死に近いが息をしていた。
その咆哮は森の動物達が震え上がり逃げていくような気がした。
実際に鳥達が羽ばたいてどこかへ行ってしまった。
「やっぱりゴブリンジェネラルがいたのね!」
声がする方を見れば彼女達がいた。
全員の紐を切って小屋から逃げ出したのだろう。
自分の身は自分で守らないといけないからな。
今なら走ってゴブリンジェネラルから逃げられるだろう。
「私達に倒せるかしら……」
「それでもやるしかないわよ。さっきのゴブリンも人語を話していたから気をつけた方がいいわ!」
「
さっき小屋に向かったゴブリンは近くで伸びていた。
それよりも今こいつらは何の話をしているのだろうか。
冒険者ランクも俺より低く、武器と防具もまともに揃っていない状態だぞ。
「ソフィアが詠唱している間、
あれ、いつのまにか俺が倒そうと思っていたゴブリンジェネラルがあいつらに取られていないか?
ゴブリンジェネラルも俺を認識していないからか、彼女達に視線を向け戦っている。
「気持ち悪いやつめ! お前の金○なんて私のメイスで粉々に砕いて――」
それにしてもモナはいつの間にあんな狂気じみた顔でメイスで殴りつけるようになったのだろうか。
モナの言葉を聞いて俺の股間がどこかスーッとした。
すぐに耳を塞いだがゴブリンジェネラルの叫び声からして相当痛いことをしているのだろう。
「魔法を放てるわ」
「まだたりな――」
「モナその辺にしな!」
ルーダがモナを後ろから抱え込み、そのまま後ろに下がるとソフィアの魔法が発動した。
「アクアバースト」
あれ……?
俺の獲物は……?
気づいた時には勢いよく流れ出る水属性の魔法に破壊された小屋ごとゴブリンジェネラル達は流されて行った。
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