第66話 魔物の群れ

 俺は急な出来事に思考停止してしまった。


「ご主人様♡」


「お兄様♡」


 呼び方は色々あるが、年齢層がバラバラな女性に俺は囲まれていた。


「ご主人様は僕のです! 穢らわしい人達はどこかに行ってください!」


 そんな俺をダンジョンが引っ張り出して救出してくれた。


 やはり"精神耐性"を付与しないと、いくら魔物だからといって女性相手は無理だ。


 俺が召喚したのは、腕が羽になっているハーピーという種類の魔物だ。


 実際のハーピーはどちらかといえば、体は人間だが見た目は鳥に近くて気持ち悪いはずだ。だが、目の前にいるハーピーは腕だけが羽になっており、人間と変わらない。


「おい、お前達は大丈夫――」


「拙者が求めていたのはもふもふとしたコボルトちゃんです」


「こいつらゴフゴフ話す頭の悪いゴブリンですよ」


 困っていたのは俺だけではなかったようだ。


 コボルトと見た目が似ており、サイズだけが小さくなったミニコボルト達に囲まれたコボルト。ゴフゴフと話しかけられて混乱しているゴブリン。


 せっかく魔物召喚できたと思ったのに、散々な結果だ。


 唯一よかったのは少し体が小さめだが、ダンジョンの話をしっかり聞いているトカゲ達だろう。


『まさか本当に全部召喚するとは……』


 魔物キャッチャーは全て魔物召喚できるとは思っていなかったようだ。


 俺達としてはこんなことになるのなら、魔物を召喚するべきではなかったと思っている。


 現に拡張されたはずのこの部屋が狭く感じる。


 後から魔物キャッチャーから聞いた話だが、魔物は召喚者の魔力に合わせて見た目や能力が変わるらしい。


 なぜ、俺には見た目が人間の女性に近いハーピーなんだろうか。


「ご主人様、そろそろ人間達が部屋に近づいてきます!」


 俺達は冒険者を追い払うために魔物召喚をしていた。それを忘れてしまったら何のために、魔物キャッチャーの中を通ったのだろう。


「よし、お前達に命令する!」


 俺の声に魔物達の視線は集まる。どこか優越感に浸れる感覚も悪くない。


 置いてあるモニターに指を差して命令する。


「冒険者達を全て排除しろ!」


 魔物達はピシッと姿勢を正して、胸のところに手を持ってくる。


「ハイ! イエッサアアアァァァ!」


 部屋中に響く声はダンジョンが大きく揺れるような気がした。

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