第31話 穴の正体
「じゃあ、またすぐに戻ってくるからね」
「ボス待ってますよ?」
待っていると言いながら相変わらず爪が俺の服を引っ掛けている。
そんなコボルトをゴブリンが必死に剥がしていた。
以前は付与術で寝かしつけていたが、ゴブリンがいても残されるのは嫌いらしい。
「兄貴今がチャンスです!」
「ああ、助かった!」
「ボスウゥゥー!」
爪が外れた瞬間に俺は王都に向かって走った。
俺が見えなくなるまでコボルトの遠吠えはずっと続いていた。
♢
久しぶりに来た王都は相変わらず賑わっている。
イヤーダ街からは馬車で五日ほどかかるがコボルトに乗れば二日で着いた。
前回はAランクになった時に来たから軽く一年以上は経っているだろう。
あの時は彼女達と一緒にパーティーで来ていた。
俺はとりあえず冒険者ギルドに行って情報収集をすることにした。
中に入るといつもと変わらない雰囲気に懐かしさ感じる。
「んっ、クロウじゃないか!」
声をかけてきたのは王都のギルドマスターだった。
「お久しぶりです!」
「あれ? パーティーはどうしたんだ?」
せっかく考えないようにしていたのに、環境がそれを許さなかった。
これだけ人がたくさんいる王都の中でも彼女達は目立っていたからな。
「また追放されました」
「ははは、付与術師じゃ仕方ないか」
ギルドマスターは俺の肩を叩いた。はっきり言って叩かれている痛みより、遠回しに付与術師が使えないと言われている方が心が痛い。
「それでなんでまた王都に来たんだ?」
「あー、しばらく活動拠点を変えようと思いまして……」
流石にコボルトとゴブリンが目立つから王都に逃げてきたとは言えないからな。
まずはあいつらが見つからずに生活できる場所の確保が一番必要だ。
「おっ、ならダンジョンに挑戦してみたらどうだ?」
「ダンジョンですか?」
確か王都にはいくつかダンジョンというものが存在している。
ダンジョンに入ると様々なトラップや魔物がいて、そこから出てくる魔石や鉱物が良い資源になるらしい。
冒険者の中でダンジョン攻略で生計を立てている人もいるぐらいだ。ただ、仕組みが複雑なため中々中を進むのが難しいと言われている。
「最近また新しいダンジョンが出来たから挑戦してみたらどうだ?」
俺はなぜか王都に来るまでに埋めた穴が頭をよぎった。
確かダンジョンは管理されているから流石に間違って埋めることはないはずだ。
「そのダンジョンって管理――」
「ああ、まだ出来たばかりで管理はされていないな」
これは失敗したやつだとすぐに感じた。確かに変わった穴だとは思ったが、そこがダンジョンなんて誰も思わないだろう。
「どうだ? 一応Aランクだから危険かどうかも見てほしいからな」
「わっ、わかひまじた!」
俺はすぐに冒険者ギルドから出ると王都を後にした。今すぐコボルトが埋めたダンジョンを掘り出さないといけない。
「あっ、ボス早かったですね!」
「兄貴何かあったんですか?」
俺が焦って戻ってきたから二人はどこか心配していた。
「今から聞く話は誰にも言うなよ」
「拙者にはボスとこやつしか友達はいないですよ?」
「オラも同じだ」
「……」
こいつらは自分で言って悲しくならないのだろうか。友達がいないのは俺も同じだからなんとも言えないが……。
俺の唯一の友達ってクラインぐらいだからな。
そういえばあいつに挨拶もせずに王都に来てしまった。
「それで何があったんですか?」
「あー、実はな――」
王都の冒険者ギルドで聞いた話をコボルトとゴブリンに伝えた。
「はふはふ、ダンジョンって可愛いコボルトがたくさん出てくるところじゃないですか!」
「いや、オラはゴブリンの群れが出てくると聞いているぞ」
二人とも間違えではないがどこか知識が偏っていた。
それにしてもダンジョンを埋めたことには触れないのだろうか。
「それでボスはなんで焦ってるんですか?」
「えっ? だってダンジョンを埋めた――」
「それぐらいまた掘ったら良いじゃないですか?」
確かに埋めたのならまた掘っても問題ないはずだ。
入り口だけしか埋めてないはずだしな。
コボルトは[職業]
「よし、今から行くぞ!」
「ボス、今ですか!?」
「さすがに今は真っ暗だからコボルトの目でも見にくい――」
「大丈夫だ! 俺は付与術師だからな!」
ちょうどこれだけ暗い環境であればバレることもないだろう。
俺の言葉に渋々コボルトとゴブリンはついてきていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます