第14話 森に行ってみよう

 俺はそのままコボルトを引っ張って森に向かうことにした。


 なぜ引っ張ってるかって?


 コボルトが全く自分で歩こうとしないのだ。


 なぜか遠吠えをしながら俺に引きづられている。


 街の中の人達も俺に対して、視線が集まっているからやめて欲しいぐらいだ。


「おい、目立ちたくないから自分で歩けるよな?」


「グゥ!?」


「歩けるよな?」


「……」


「歩けるよな? よし、いい子だ」


 何度も話しかければコボルトも意思が通じることが今回の依頼を通してわかった。


 ポイントとしては撫でようと手を顔の前に出すのが良い。


 そうすると大きく頭を振るのだ。


 だから俺はそのまま頭を撫でた。


 コボルトは嬉しいのかブルブルと震えている。


 俺はコボルトを連れて森に入ると、急に大きな白い塊が飛び込んできた。


「ボス! どこに行ってグギャアアアアア!」


 飛び乗るように白いコボルトが飛んできたため腹に俺が刺さったようだ。


 ゴホゴホと咳き込む白いコボルトはその場で俺を睨んできた。


「ボスいきなりはひどいです!」


「いや、俺は何も……すまん硬質化を付与した状態だったわ」


 そういえば性質変化で硬質化・・・を付与していたのを忘れていた。


 俺は付与を解除するとコボルトに話しかけた。


「そういえばどうやって目を覚ましたんだ?」


「はにゃ? あれはボスが優しく撫でたから寝ただけですよ?」


 どうやら状態異常の睡眠をかけた時に撫でたのが記憶に残っているらしい。


 自分で状態異常の付与を解除するとは、俺もまだまだ付与術師としては未熟なんだろう。


 こんなコボルト相手にも付与術をまともにかけられないなんて、ドラゴンとかが襲ってきたら即死だ。


 昔話の中で街を消し炭にするってあるぐらいだから、できる限り会いたくないな。


「それにしてもこんなに可愛い拙者がいるのにボスは浮気ですか!?」


「えっ?」


「ほらそこに真っ黒なコボルトを連れているじゃないですか!」


 白いコボルトは散歩中のコボルトを指差している。


 ああ、これが浮気になるのか……。


 実際初めての経験だが、あまり良いものでもないな。


「クゥーン……」


 そういえば散歩中のコボルトは白いコボルトを見てからさらに尻尾を丸めて落ち着いていた。


 さっきより震えているのは、森に来てウキウキしているのだろうか。


「いや、このコボルトを散歩して欲しいと依頼があってな! 森の中だから運動不足も解消できると思って連れてきた」


「さすがボスですね! それで何をやるんですか?」


「んー、何が良いんかな……? ゴブリンごっことかはどうだ?」


 俺の言葉に白いコボルトは首を傾げていた。


「ゴブリンごっこですか?」


「一人だけ人間役で他の人達がゴブリンになって追いかける遊びだよ」


「それ拙者も参加したいです!」


 白いコボルトは目を輝かせて俺を見ていた。


 やはりコボルトは元気が良い種族なんだろう。


 流暢に話せるようになり、意思疎通が取りやすくなったことでコボルトの生態が前よりもわかってきている。


「じゃあ俺とコボルト(白)がゴブリン役をやるから君は人間役ね」


「グォ!?」


 相変わらず舌が出ているが、首を大きく振っていた。


 どうやら理解はできているらしい。


 白いコボルトとあった時と比べると大違いだ。


「よっし、じゃあ50秒数えるから逃げてね!」


「拙者も数えるぞ」


 俺達は目を閉じて木に顔をつけた。


「いーち、にーい、さーん――」


「クオォォォーン!」


 コボルトは大きな声で遠吠えをしながら森の奥深くに逃げて行った。


 よし、絶対捕まえてやるぞ。

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