第37話 部分狭小化
ああ、俺も人間恐怖症になりそうだ。
冒険者ギルドに向かうまでが地獄だった。
「ママ! あのおじさん変な犬と人形を抱えているよ?」
「こら! 見ないの! 絶対あんな変な大人になってはダメよ?」
「はーい」
こんな感じで王都の人達から注目されていた。ゴブリンが人形に見えたのは単に血色が悪いからだろう。
あとは女性と人の多さに二人は固まっていた。
それにしてもやはり人が多い王都だからこそ、こんな言われようなんだろうか。
周りに目線を気にしながらも俺は冒険者ギルドについた。
「よっ! ダンジョンの捜索はどうだったんだ?」
声をかけてきたのはギルドマスターだ。ただギルドマスターの視線も俺の手元にあった。
「えーっと……パーティーから追放されたら趣味も変わるんだな。俺は気にしないぞ? まぁ、男にはいろいろあるからな」
なんか温かい目でこちらを見ている。
この間も思ったがギルドマスターは俺をイライラさせるのが得意なようだ。
俺の趣味は昔から変わってない。
そして、女性が苦手なのも昔から変わらない。
「ダンジョンは外れでした」
「そうか。まぁ、できたばかりだと仕方ないからな。三日も帰って来なかったから心配したぞ」
朝にはダンジョンから出てきたと思っていたが、まさか三日も中にいたらしい。
外から冒険者が来るのを待っていたが、あの時から時間がだいぶ経過したのだろう。
「ご心配かけてすみません。今度は大きなダンジョンに行ってみようかと思います」
「おい、付与術師が何無理なことを言っているんだ!?」
このギルドマスターは時折失礼なことを言ってくる。
付与術師でもやる時は……いや、負けるかもしれない。
俺なんてコボルトとゴブリンに勝てる気がしない。
今回はあいつらがいるからダンジョンに偵察に行こうと思ったのだ。
「ははは、勉強のためなので大丈夫ですよ」
「あー、クロウが言うなら仕方ないか。ダンジョン初心者ならここがおすすめだぞ」
俺が教えてもらったのは王都から少し離れてはいるが、数年前にできた魔物があまり強くないダンジョンだった。
アイテムの還元率やダンジョンの危険率を比べると冒険者に優しいと評判だ。
付与術師として未熟な俺でも、どうにかなるとギルドマスターは判断したのだろう。
「あー、ならそこに行ってみます」
「気をつけてな!」
俺は冒険者ギルドを出ようとしたが、傷ついた心は忘れていなかった。
グッと締め付ける胸に俺はギルドマスターに付与術をかけることにした。馬鹿にしたことを後悔させてやる。
「エンチャント"性質変化"狭小化」
今さっき思いついた部分的な狭小化のやり方を試すことにした。
お前の男としての威厳を奪ってやる。
俺はギルドマスターのあるところに"性質変化"狭小化を付与した。
その後トイレから絶叫するギルドマスターの声が聞こえてきたと噂が広がっていた。
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