第59話 これでストーカーライフができるぜ

「とりあえずスキルを見てくださいよ!」


 ダンジョンはそんなにスキルを見せたいのか、胸にある水晶玉に手を触れると、突然壁に文字が出てきた。


――――――――――――――――――――


《スキル》

[職業] 魔迷宮

会話 100

モニター召喚 100

転写 100

擬人化 100

分離 100

ダンジョン生成 100

アイテム召喚 80

トラップ召喚 70

魔物召喚 80


――――――――――――――――――――


 このスキルの構成はなんだろう。なぜダンジョンに大事そうなスキルは他よりも低めなんだろうか。


「とりあえず今のスキルはなんだ?」


「これは転写ですね! ステータスのスキルを壁に転写してます」


 基本的に鑑定の能力か魔道具だとステータスを見ることができるが、スキルに関しては人に見せることはできない。


 だから大体は紙に書いてパーティーメンバーなどに共有したりする。


 そういえば、俺は一度もパーティーにスキルを共有してもらったことはなかったな。


「あれ、なんかボス落ち込んでますよ?」


「兄貴大丈夫ですか?」


 過去は過ぎたことだから忘れよう。こんなところで落ち込んでいても仕方ない。


「ああ、問題ない」


 俺は引き続きスキルの話に戻した。他にも見たことない言葉のスキルが存在していたからだ。


「転写はわかったがモニター召喚はなんだ?」


「それは私にもわからないのでやってみますね」


 モニターという訳のわからんものが、召喚できるらしいがダンジョンも実際なにかわからないらしい。


「モニター召喚!」


――ドォーン!


 ダンジョンが呪文を唱えた瞬間、空から薄っぺらい何かが降ってきた。


 どこから見てもただの黒い板にしか見えない。


 衝撃音は大きかったが、実際はそこまで重さもなさそうだ。


「これで潰して戦うスキルか」


 俺には召喚スキルがないため、仕様がわからない。ただ、目の前の黒い板がモニターという物体ということはわかる。


「あのー、どこかにスイッチがあるらしいです」


 ダンジョンは何かが書いてある紙を読んでいた。


 スイッチがあるってことは何かのトラップなんだろうか。


 俺達はモニターを囲んで触っていると、側面にどこか出っ張りがあることに気づき、ゆっくりと押してみた。


――ブーン!


 突然、黒い板に色がつき動き出した。


「私はいると思ったのにな……」


あたいもまだまだってことだな」


「でもアイテムももらえたことですし、また来てみるのもいいですね」


 どこからかあいつらの声が聞こえると思ったら、モニターにはさっきまで俺達を追いかけ回していたあいつらが映っていた。


「ひいぃぃぃ!?」


 その姿にゴブリンとはモニターから離れて行った。突然あいつらが映るとは誰も思っていない。


「これが管理システムですか」


「管理システム?」


「ダンジョンにはダンジョンコアだけが、中の状況が確認できるスキルがあるんです」


「それが管理システムっていうのか。だからあいつらがここに映ってるのか?」


「きっとそうですよ」


 そのままモニターを見ているとダンジョンの入り口が見えた。


 中の状況が確認して、共有できるとダンジョン管理もしやすくなる。


 あいつらがまた来た時、どこまでも嫌がらせができるし、その状況を確認することができる。


 それだけで笑みが止まらない。


「ご主人様?」


「ああ、すまない」


 俺は表情を再び戻し、ダンジョンに話を続けさせた。


「モニターにも人数が3となっているので中にいるのはご主人様達だけになりましたね」


 モニターの上に書いてあった数字が6から3に変化した。


 そこの部分は、現在のダンジョン内の人数になっているらしい。


 彼女達がダンジョンからいなくなったということだ。


「中々便利なスキルだな」


「兄貴、ここに何かありますよ」


「どこだ?」


 コボルトがスイッチとは反対側のところに別のボタンがあることを発見した。


 コボルトの大きな肉球では押せないため、代わりに俺が触れると突然モニターが切り替わった。


「今日の散歩……ワン!」


「へっ!?」


「うぉ、コボルトちゃんじゃねーか!」


 コボルトは画面に入る勢いで顔を近づいていた。モニターに映るのは人間と散歩する犬の姿だった。


 こいつは犬とコボルトの見分けもつかないのだろうか。


 まぁ、確かに犬を大きくしたらほぼこいつと変わら――いや、毛がなかったな。


「お前を仲間に認めよう」


「コボルトさん……」


 コボルトとダンジョンは熱く抱き合っていた。

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