第17話 邪魔はさせねえよ
俺は冒険者ギルドに行くと依頼を終えた冒険者達で溢れかえっていた。
冒険者ギルドには冒険者達の憩いの場として、一部飲食店や宿屋のスペースが隣接されている。
そのため酒を飲むものや次の依頼の準備をするものなど様々な人がいた。
その中をぶつからないように、カウンターに向かうと受付嬢が手を振っていた。
急にこっちを見て手を振るのはやめて欲しい。
精神耐性強化の付与をしていない俺それだけで、動悸で倒れそうになってしまう。
急いで精神耐性強化の付与をかけて彼女の元へ向かう。
「クロウさんお疲れ様です」
「ああ。これを頼む」
依頼報告書を出すと受付嬢は驚いた顔をしていた。
そんなに驚くような依頼でもなかったはずだが……。
俺としては簡単な依頼だった。
むしろ、女性相手の依頼じゃなければどの依頼もそこまでは難しくはない。
「この依頼本当に達成できたんですね」
「ん?」
「みんなすぐに帰って依頼を中止する方が多いんですよね。ずっと残ってた依頼だったので助かりました」
「そうか」
コボルトと遊ぶだけの依頼を中止するとは冒険者ギルドには動物嫌いが多いのだろう。
そんなことを思っているとギルドの扉が開いた。
「はぁー、久しぶりに街の依頼を受けたら疲れるわね」
「安全な依頼を受けて報酬が貰えるならいいじゃない」
「
「いつまで言ってるのよ! みんなで強くなるって言ったんでしょ」
「そうよ!」
「ソフィア……モナ……」
どうやら彼女達も依頼を終えて帰ってきたようだ。
「相変わらず良い尻をしてるな!」
「やぁん!」
「ははは、良い声で鳴くじゃないか」
帰ってきた彼女達を男の冒険者達が囲っていた。
「クロウさん、報酬の確認を……気になりますか?」
「いや……」
「ふふ、ソフィアさん達クロウさんがパーティーからいなくなってから、絡まれることが増えたんですよ」
「そうか。俺はもうパーティーメンバーじゃないからな」
「そうですか……。では明日からも街の依頼よろしくお願いします」
「ああ」
俺は依頼書の報酬を受け取り、冒険者ギルドを後にしようとした。
ただ冒険者ギルドから出るには彼女達の横を通らないといけない。
そういうことをやるなら人目のつかないところでやってほしい。
「ははは、本当にでかい尻だな。ん?」
「邪魔だ」
俺は入り口を塞いでる男に声をかけた。
「はぁん? ソフィアちゃん達に捨てられた男が嫉妬してどうしたんだ?」
「いや、図体がデカイお前がいたら誰も通れないだろ」
「ふん、お飾りだった男が調子に乗りやがって!」
「もうこいつらは俺らのものだからな。なぁ、ソフィアちゃん?」
男はソフィアの顔を舐めた。正直同じ男としてこいつの行動は気持ち悪い。
「クロウ……」
そもそも彼女達はお前らのものじゃなくて俺の"嫌がらせ相手"だ。
俺の大事な嫌がらせ相手に手を出したことを後悔するがいい。
「エンチャント"状態異常"腹痛」
魔法を使ったことがバレないように静かに呪文を唱えた。
対象者は彼女達を囲んでいる男達に全員だ。
「うっ……なんか腹の調子が……」
「ああ、俺もちょっとトイレに……」
男達は次々とお腹を押さえてトイレに向かった。
ははは、この俺がそんなに簡単に逃すと思うか?
俺はトイレの扉に向かって付与魔法を唱えた。
「エンチャント"性質変化"硬化」
「エンチャント"性質変化"硬化」
「エンチャント"性質変化"硬化」
扉の鍵に性質変化を付与することで扉が開かないようになるのだ。しかも今回は重ねがけだ。
「おい、扉が開かねーぞ!」
「お前が入らないなら先に俺が入る」
「だから扉が開かねーんだよ!」
「チクショー! こうなったら野糞だ!」
えっ……。流石にその展開は俺も考えていなかった。
俺はすぐに鍵の性質変化の付与を解除したが男達は急いで冒険者ギルドを出た。
窓から覗いてみると男達は冒険者ギルドの前で並んで野糞をしていた。
街の人達からも軽蔑した目で見られている。
「クロウさん?」
「はい……」
声がする方を振り向くとそこには受付嬢の女性がいた。
「後で便の処理を頼むわね?」
「えっ? なんで…….」
「ふふふ、なんでって私は気づいているわよ?」
俺は数時間後に冒険者ギルドの前に並べてある便を一人で片付けることになった。
原因は俺じゃなくて彼女達なのに……。
「くそ……覚えてろよ……」
さらに俺の心の中で彼女達への復讐心は強くなった。
そして男達は誰かに見られてする排便に快感を覚えたとか……。
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【あとがき】
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