第43話 コボルトちゃあああーん!
俺達はその後もスライムや他の魔物を倒してアイテムを回収した。
途中ゴブリンが出てきたが、普通のゴブリンとは違うためうちのゴブリンは怒っていた。
何が違うかゴブリンに聞くと、あいつらは頭の出来が悪いと終始怒っていた。
「あっ、また脳筋ゴブリンが出てきたぞ」
「またあいつらゴブリンの価値を下げやがって!」
こうしてゴブリンは怒って、同じゴブリンを抹殺している。
たしかにダンジョンにいるゴブリンは、どこか知性がなく若干凶暴だった。
見た目も少し異なり、森にいるゴブリンよりも筋肉隆々で体も大きめだ。
それにしても同じ種族を容赦なく倒すゴブリンには驚きだ。
あんなに集団で生活していたゴブリンなのに、意外にも仲間意識はないらしい。
「ボス、今いいですか?」
「なんだ?」
「コボルトちゃんはいつ現れるんですか?」
「あー、そのうちじゃないか?」
スライム、ゴブリン、オーク、ハーピーと出てきたが、まだダンジョン産のコボルトは見たことがなかった。
「まぁ、そんなに落ち込むな……おい、ちょっと見てみろよ!」
「またそうやって拙者を騙して――」
俺達の前を毛並みがふさふさで凛々しいコボルトが歩いていた。
コボルトはなんだと目をパチパチと瞬きをしたり、擦ったりしている。
「コボルトちゃあああああん!」
コボルトは走ってダンジョン産のコボルトの元まで駆け寄った。そんな様子を俺とゴブリンは応援するように見守っていた。
「ヘイ、そこの可愛いお嬢ちゃん! 私とちょっとお散歩にどうだい?」
「ガゥ!」
声の掛け方も中々独特だ。きっとコボルト界では一緒に散歩をするのが誘い文句なんだろう。
「いや…….、これは――」
「ガウガウ!」
「君だってコボルトなのに二足歩行ではないじゃないか!」
おや?
どこか雲行きが怪しくなってきたぞ。
今回は友達から始めて、おいおい結婚できる相手を探していると言っていた。
それなのにすでに失敗しそうな勢いだ。
「ガルルルル!」
「いや、拙者はただ君とお散歩がしたく――」
――パチン!
「ちょっと待ってよー!」
ダンジョン産のコボルトはうちのコボルトを殴りどこかへ去ってしまった。
「これは振られたってことか?」
「たぶんそうですね」
「せっかくダンジョン産のコボルトに会えたのにな……」
遠くで見守っていた俺達はコボルトに近づいた。
コボルトは寂しそうに膝を抱えて座っている。
「おい、大丈夫だったか?」
「ボ……ス……」
「コボルトさんは頑張ってましたよ?」
「次に行ってきます!」
「へっ!?」
「拙者次に行ってきます! コボルトちゃんは他にもたくさんいますからね!」
急にコボルトは顔を上げると、どこか吹っ切れた顔をしていた。
落ち込むのもはやかったが、立ち直るのも早い。
普段から落ち込みやすいと思っていたが、恋愛に関しては積極的らしい。
♢
その後も出会ったダンジョン産のコボルトには、声をかけ続けていたが全て振られていた。
俺から見てもよく頑張ったと言えるほどだ。
とにかく手当たり次第に声をかけていたが、きっと今のコボルトで30体は声をかけているだろう。
「ボスゥー!」
「また振られたな。次はどうするんだ?」
「次も行きますよ!」
俺としては落ち込んでなければ特に問題ない。ただ、振られる原因はなんだろうか。
ひょっとしたら俺の付与術で、どうにかすることが出来るかもしれない。
「コボルト達はお前をなんて言ってたんだ?」
「いやー、
それは完全に俺のせいだ。俺が暑いのかと勘違いしてかけた付与術後が原因だ。
あれから中々毛は生えていない。
相変わらず胸の毛だけが残っている。
お手入れをしている姿を見ていると、俺は毎日胸が痛かった。
「コボルトさん、他には何か言ってませんでしたか? 時折二足歩行がって言ってるのが聞こえてましたが……」
「ああ、拙者が二足歩行で歩いているのが気持ち悪いって……そんなに気持ち悪いですか?」
たしかに言われてみれば出会ったコボルト達はみんな二足歩行では歩いていなかった。
むしろ見た目もどちらかと言えば、昔依頼で受けた散歩したコボルトに近い。
「まぁ、ちょっとお前は変わっているからな」
「そうですよね。同じコボルトなんていませんからね」
「ああ、また声をかければきっと可愛いコボルトちゃんとお散歩に行けるはずだ!」
「コボルトさん頑張りましょう!」
俺達はその後もダンジョン産のコボルトを探すためにダンジョン内を歩き回った。
俺達は大事なことを知らなかった。
コボルトとウルフ系の魔物はそもそも種族が異なるということを……。
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