第11話 新しい嫌がらせ作戦
"コボルト、君の瞳にギュルルン作戦"は失敗に終わり今日も討伐依頼の掲示板を前に俺はどうするかを悩んでいた。
ちなみにコボルトは森の中で待っている。
あいつが街に着いてきたら俺の嫌がらせ作戦ができなくなってしまうからだ。
街の中に入った瞬間に討伐対象になるし、俺も注目の的になるのだろう。
だから俺はコボルトを森の中で眠らせている。
森を出ることがわかった瞬間に、俺の服に爪を引っ掛けて街に帰さないように引っ張っていた。
「かよわい拙者を森に置いていくのか?」
「
ずっとこんな調子で俺を引き止めるのだ。
「エンチャント"状態異常"睡眠」
あまりにもうるさいため、状態異常である睡眠をかけて街に戻ってきた。
集団でいるはずのコボルトが一体でいたのも何か性格と関係しているのだろう。
とにかくあいつは構ってちゃんだからな。
それで次の作戦は前の失敗を考慮して付与回数を減らそうと思う。
また魔物を使った方法をするのかと言われたらあれだが……。
そして依頼掲示板の前に立ってはいるものの、良い作戦が思いつかないのだ。
「よっ、クロウ!」
「ああ、クラインか」
声をかけてきたのはクラインだ。
最近やたら冒険者ギルドに一緒になって声をかけてくることが多い。
「こんなところでどうしたんだ?」
「あー、なんか良い依頼がないかなって?」
彼女達に嫌がらせができる良い依頼がないか見ているところだ。
「良い依頼か? 討伐系だと中々一人では受けにくいしな……」
「そうだよなー。付与術師だと中々出来ること少ないんだよな……」
付与術師で嫌がらせって中々難易度が高いからな。
流石に状態異常付与するにも嫌がらせの範囲を超えて命の危険に繋がる。
まぁ、あいつは魔物だからいくら寝かしたままにしておいても死にはしないだろう。
「そういえば、今日ソフィアちゃん達街の依頼を受けてるらしいぞ?」
「ああ、そうか」
「また反応が鈍いなー。でもなんで急に街の依頼を受けることにしたん――」
「それだ!」
「うぉ!?」
俺は良いことを思いついた。
大きな声を出したためクラインは隣で手を広げて驚いている。
「クライン!」
「なぁ……そんなに近づいてどうしたんだ?」
「助かった!」
クラインにお礼を伝えると、違う依頼掲示板の方へ走った。
「あいつどうしたんだ? 急いで街の依頼掲示板の方に向かって……」
俺が向かった先はこの街、イヤーダ街の住人が依頼する街の依頼掲示板だった。
♢
俺は想像以上の依頼の量に呆気に取られている。
今回考えた嫌がらせは"街の依頼を無くしてこのままじゃ食べていけないよう……とほほ作戦"だ。
単純に街の依頼の数を減らすというシンプルで簡単なことだ。
彼女達はきっとゴブリンのことがあってから少し資金を集めるために街の依頼を受けているのだろう。
長いこと一緒にいた俺にはその考えはお見通しだ。
だからその依頼を俺が全て受けてしまえば奴らはお金が稼げなくて困るはず。
依頼掲示板に溢れるほど依頼があるということは、低ランクの冒険者が受けていない証拠。
だからあいつらだけに対して嫌がらせができるはずだ。
「とりあえずここからここまで受けてみるか」
俺は古い依頼である上の段の端から端まで取って受付嬢のところへ向かった。
「クロウさん依頼ですか?」
「ああ」
もちろんここにくる前にしっかりと精神体制の付与魔法をかけてきた。
なぜ冒険者ギルドの受付は女性しかいないのかとクレームを出したいぐらいだ。
できれば今すぐに男に変えてもらいたい。
「本当に受けるんですか? 討伐依頼でもないので報酬も少ないですよ?」
「ああ、それでいい」
金ならいくらでもある。
とりあえずあいつらに嫌がらせができたら問題ないのだ。
「わかりました。では、受理してきますので少しお待ちください」
受付嬢にギルドカードを渡すと、依頼書を持って魔道具が置いてあるところまで向かった。
ギルドカードと依頼書を魔道具にセットすると依頼承諾になるという仕組みだ。
ちなみに俺はこれでもAランクのギルドカードを持っている。
そもそもそんなに俺自身は強くないのだが、いつのまにかこんなにランクが上がっていた。
ちゃんと依頼をコツコツと受けて、試験を受ければ自然とランクは上がる仕組みになっているからな。
ちなみに彼女達は現在Cランクで当時出会った時は確かDランクだったかな。
「クロウさんお待たせしました。早速今から行きますか?」
「ああ」
「わかりました。ではお気をつけて!」
受付嬢から依頼書を受け取ると俺は冒険者ギルドを後にした。
そういえば俺が受けた依頼ってなんだったけ……?
あいつらの苦渋に満ちた顔を想像して俺は依頼書を見るのを忘れていた。
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