第15話 俺の恋路を邪魔するヤツラ ~レオ視点~
「じゃぁ決まりだな。とっとと行くぞ」
どうやら向こうの意志が決まったようなので、変わらないうちにと俺・レオはふんだくる様にボードから依頼をひったくりズンズンと受付スペースに歩いていく。
幾つかブースはあるけれど、俺が使うのはいつも一つ。
幼馴染のミランの所だ。
「あらレオ、今日はいつもよりちょっと遅かったんじゃない? って、あら?」
俺の後ろに続く二人組を見つけると、彼女は少し意外そうな顔をする。
「もしかして、今日はアルドさん達とパーティーを組むの?」
「同じ依頼は受注するが、仲良しゴッコをする気はない」
何で二人を見つけると、そんなに嬉しそうな顔をするのか。
あとに続いた二人を見た途端に笑顔になったミランに、思わずムッとしながら答える。
実際、これは勝負なのだ。
こんな、冒険者を腰掛半分にやっているようなヤツとパーティーを組むんで一緒に仲良く仕事だなんて、冗談でも思われたくなんてない。
そもそも最近顔を出せば、いつもアルド、クイナ、アルド、クイナと。
俺と話しているっていうのに、何でそんなに他人の話をしたがるのか。
フラストレーションは溜まりっぱなしだ。
来年で、ミランと幼馴染をやってもう20年。
ここらでそろそろ決着を付けたい。
俺だってもう、ベテランBランクと言っていい。
ミランを養ってやれるだけの稼ぎも貯えもちゃんとあるし、何よりアイツが美人受付嬢と囃し立てられ回りの狼たちに狙われるのをけん制し続けるのも飽きた。
ちゃんと俺のだと周りに知らしめ、名実ともにアイツを守れるポジションに着く。
それが俺の今年の目標なのである。
その為には、このアルドとかいう男が邪魔だ。
そもそも何なんだ、折角ミランの中では俺一強だった筈なのに、突然現れたと思ったらミランと懇意になりやがって。
ヒョロッとしていて全然強そうじゃないくせに、装備だってそれほど良いものを使っている訳でもないくせに、最近度々街の話題に上りやがる。
一番腹立つのはその話を逐一俺に楽しげに報告してくるミランの態度だが、そうでなくても街を歩けばその手の話は耳に届く。
しかしまぁ、それも今日で終わりだろう。
同じ依頼を同じ時間だけこなす。
そうすれば、どちらがより出来るのかが浮き彫りになる。
俺の方があいつ等よりも凄いって分かる。
そうすればきっと、ミランも周りも俺を見直す筈である。
見直せば、以前のように皆、俺を称賛するようになる。
負けられない戦いが、ここにある!
「分かったな? クイナ。オーク肉パーティーするんなら消し炭にしちゃダメだからな? 火力調整、超大事」
「うんなの!」
「あと、眼球は生薬になるらしいからなるべく火は通さない事。通すと買い取ってくれないらしい」
「分かったの!!」
……負けられない戦いが、ここにある!
「あ、それと一番大事なのは、自分が怪我しない事。擦り傷一つ付けないくらいの気持ちで臨め?」
「気を付けるの! あと、オーク肉さんの臭い攻撃も食わらないように気を付けるのっ!」
「そうだな、よし、気を付けよう」
……負けられない戦いが……って、何だその気が抜けるようなやり取りは!!
そもそも『擦り傷しない』とか『臭い攻撃食らわない』とか、冒険者ならそんなもの日常茶飯事だ。
いちいち気にして回避するのを第一にとか、お前らマジで冒険者舐めてんのかコノヤロウ!!
……いや、まぁ良い。
だからこそ格の違いってものを見せてやれるというものだ。
「ねぇアルドー、おやつにスライムゼリーはあり、なの?」
「あー、そうだな。見つけたら途中で捕獲しとこう」
だから遠足じゃねぇんだよ!!
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