第16話 俺二体、チビ三体 ~レオ視点~
森の奥。
遠足親子(?)とオークの群生地へと来た俺は、早々にオークを二体倒した。
開始早々二分で二体。
中々にハイペースである。
ふふんっ、俺に掛かればオークなんてこんなもんだ。
こりゃぁアイツらと競う意味もなかったかもな。
オーク独特の臭いに若干鼻を潰されつつも、頬に飛び散ったオークの血をグイッと拭った。
次の獲物を探していると、少し離れたところにオークが三体、こん棒や斧を振り上げて一方向にドカドカと走っているのを見つけた。
三体とも、明確に何かを目標にしている。
その先を目で追い、目を留めた。
オークたちの先に居たのは、黄金色の毛並みの獣人が一人。
赤いコートの小さいヤツだ。
探してみれば、保護者のアルドはあのチビの少し後ろで腕を組んで立っている。
おいおいおいおい、大丈夫かよ。
あんなチビ、踏みつぶされるぞ。
思わずそんなツッコミを入れてしまったところで、チビはスッと人差し指を前に突き出した。
「いーち、にー、さん」
何だ?
オークを数えてる?
思わず小首を傾げた瞬間、彼女の中で魔力が渦巻きあの指先に収束する。
「『水よ集まれ。膜となって閉じ込めろ。
子どもの可愛い詠唱の直後、三匹のオークの周りを透明なものが丸く覆った。
聞いた事の無い詠唱だけど、あれは結界?
……いや、それにしては何というか、ちょっと歪だし中のオークが慌てて中から叩く度に揺れて若干変形している。
「……水?」
目を凝らすと、青い魔力が水の周りを漂っているのが見えた。
俺の恩恵『魔力可視』。
どの系統の魔力がどのように使われているかが色で見えるという、かなり珍しい恩恵だ。
特に攻撃力などは無いが、魔法が発動される前からどの系統の魔法が来るかを知る事も出来るので、戦闘においては思いの外有用だったりする。
それによると、あれはどうやら水系統の魔法らしい。
中でオークがもがき苦しんでいる風は無いから、中は空洞なのだろうか。
となれば、隔離に特化した魔法なのかもしれないな。
しかしあれ、結構魔力使っただろ。
ここからは流石にアルドが出張って――と思ったのだが、あのチビがまた魔力行使する。
「『水よ』」
小さな水を右手に出して。
「『火よ』」
小さな火を左手に出す。
そして。
「『がっちゃんこ』」
二つをグッと合わせると、両者が干渉しあって拮抗する。
って、何やってんだアレ。
目を凝らしてみてみるが、見えるのは水の青と火の赤だけ。
一体何がしたいんだ?
「イメージ、イメージ……」
何だ?
イメージ?
と、思った瞬間だった。
クイナの中で魔力が大きく渦巻いた。
これは、水と火。
もしかしてコレ、複合魔法か?
こんなチビが?!
複合魔法とは、複数の魔法を合わせて威力を強化したり変質させたりする魔法だ。
当たり前だが単独魔法よりも難しい。
魔力操作はもちろんの事、イメージ力もより具体的なものが必要に……って、『イメージ』ってコレか!
思わずハッとした瞬間、チビの練った魔力がとある現象を引き起こす。
「『水よ、火よ、力を合わせてジュワッと蒸し焼き』!!」
唱えた瞬間、三つの水泡がブワッと曇った。
すぐにズーンという地響きが三つ、地面越しに足に伝わる。
ま、まさか今ので三体ともを倒したのか……?!
俺でさえまだ二体なのに?
しかも一気に三体って。
チビのくせに。
思わず唖然としていると、真っ白になった球が割れて倒れたオークの姿が見えた。
どうやら中に充満していたらしい、霧みたいなものが辺りにサァーッと広がって、チビとアルドの足元にも。
「『風よ』!」
あ、避けた。
あれって避けなきゃいけないようなやつなのか?
まぁでも確かにオークほどの巨体を倒す力があると思えば、もしかして殺傷能力も高いのかもしれない。
などと思考を巡らせていたせいで、気付かなかった。
球から解放された霧みたいなのは、倒れたオークの居る場所を中心に満遍なく広がっていた。
つまりそれは、二人よりも距離が離れた俺の所にもやってきて。
「あっちぃ!」
水分を少し多めに含んだ熱風にブワッと煽られた。
爛れる程ではなかったが、火傷するかと思うくらいには熱い空気の直撃を受けて思わず声を上げてしまった。
するとアルドが「あ!」と声を上げる。
「すまーん。そっちに他人が居るの忘れてたー!」
あぁん?!
忘れてただと?
失礼な!
っていうか、一体何に謝られたんだ?
あっ、もしかして「『風魔法で守るの忘れてて』すまん」って事か?!
大きなお世話だっつぅの!!
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