第38話 入学式の直前は忙しいようです



 「お待たせ、結愛ちゃん。あっ、お母様も、入学おめでとうございます」


 「ありがとうございます。これから1年間、結愛がお世話になるようで。よろしくお願いします」


 「いえいえ、こちらこそ。それじゃあ、結愛ちゃん。最終打ち合わせに行きましょう。それでは、お母様、薫ちゃん。失礼します」


 いよいよ、入学式の日。いつもは問答無用で抱きついてくる葵先生がそのそぶりすら見せず、結愛と去っていった。相当忙しいのだろう。


 「じゃあ、薫。橘先生に時間があるか聞いてきてくれない?せっかくの機会だし、少しだけご挨拶したいわ」


 「うん、分かった」


 「失礼しまーす」トコトコ


 「あらっ。薫ちゃん、どうしたの?始業式は明日よ?」


 「違いますよ、先生。今日は妹の入学式に家族として来たんです」


 「あら、そうなの?それで職員室に何か用事?」


 「えっと、母が挨拶をしたいみたいで。その、お時間ありますか?」


 「えぇ、分かったわ。私は2年生の担任だから暇だし、私も挨拶しないとね。お母様、呼んできてくれる?」


 「はいっ。分かりました」トコトコ


 「ママ、時間あるって。ついてきて」


 「えぇ。分かったわ」



 「お母様。お久しぶりです」


 「お久しぶりです、先生。薫がお世話になっております。聞いた話じゃ、今年度もお世話になるようで。今年度もよろしくお願いしますね」


 「えぇ、もちろんです。私も薫ちゃんの担任になれて嬉しいです。こちらこそ、よろしくお願いします。あっ、あとご入学おめでとうございます。妹さんまで同じ学校なんて、仲良しな姉妹で羨ましいです」


 「ありがとうございます。私もこんなに仲良しで、可愛い娘たちを持てて幸せです」


 「ちょちょっとママ!?可愛いだなんて、恥ずかしいよ。でも、僕もママの娘になれて、幸せだよっ」ニコッ


 「「グハッ」」


 「えぇっ。どうしたの、2人とも。大丈夫?」


 「え、ええ、大丈夫よ」


 「お母様、この笑顔を守るため、私頑張ります!」


 「ええ、お願いしますね」


2人は固い握手を交わしている。僕もママと先生が仲良しで嬉しいな。


 「それでは、先生。失礼します」


 「はい。それでは、また。薫ちゃんもまた明日ね」


 「はい、先生。また明日」


ということで、僕たちは体育館に向かうことにした。途中、すれ違う新入生とその親御さんにすごいジロジロ見られたけど、なんだったんだろう?


 「はっ、薫を守らなきゃ。薫、ちょっとこっちに来て」


 「えっ、どうしたの?ちょっと、ママ。歩きづらいよ」


 「ごめんね。でも薫を守るためなの」


学校は安全なのに、なぜかママに包まれるように体育館まで歩くことになりましたとさ。



 

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