第59話 結奈の想い(結奈視点)
「はぁー」
今日も私の妹、薫はデートに行った。私の最愛の妹、薫。何があろうとあの笑顔を守ると誓った、私の愛しい人。
「他の人が羨ましいわ。あんなに積極的になれて」
薫とGW中、デートする5人はお互い報告することになっている。妹の結愛、私の親友の澪、元婚約者の凛、幼馴染の未来。未来はまだだけど、他の3人は既にデートを終え、キスまで済ましている。
「なんで、こうなったかなぁ」
私は家族として、姉として、そして1人の女として彼女を愛している。正直に言えば、今まで守ってきたのも愛していたからに他ならない。だからこそ、薫は私の元にいつもいてくれた。いつも私と歩き、私の元に戻ってきてくれた。しかし、そんなことはただの甘えに過ぎなかった。
「いつも戻ってきてくれるなんて、傲慢だった」
そう、傲慢以外の何者でもない。薫だって、1人の人間。誰かを愛するなんてことは当たり前の感情。現に私以外の人とキスまでしたのだ。
「薫が幸せなら、それでいいと思っていたのに」
私はいつでも妹の幸せを願っている。心優しい、気遣いができて、とても可愛らしい、そんな妹。そんな彼女だからこそ、誰よりも幸せになってほしい。そんな彼女だからこそ、誰よりも笑顔でいてほしい。そう願っていたはずなのに、
「私がこんな、醜い嫉妬だなんて」
結局、私も私本意で動いていただけだった。私が愛せば、彼女も愛してくれると。でも、初めて彼女は私の元に戻ってこなかった。他人の元へ戻っていった。他人を愛し、他人に微笑んだ。あぁ、私の中にドス黒い感情が流れ込む。もう、彼女は戻ってこないと。
「あれ?なにこれ?」
まだ春だというのに、額から汗が流れ出す。いや、違う。涙だ。泣いているんだ、私。こんな醜いのに。傲慢にも勝手に戻ってきてくれると思ってた。いや、そう信じてた。
「そっか」
もう薫はお姉ちゃんの助けなんていらないんだ。それだけ、成長したんだ。あれ?嬉しいはずなのに。薫が成長して、喜ばしいはずなのに。泪は私の意志に反して、止まることを知らなかった。
「それでも!それでも私は愛してる!姉ではなく、結奈を。1人の女性として。あなたが愛してくれたように。私もそれだけあなたを愛してる。外の誰が言おうが、それは、それだけは譲らない!」
「私のこと、好き?」
「うん」
「私のこと、愛してる?」
「うん。愛してる」
「そっか、、、。私も」チュッ
あぁ、私の最愛の人。私が唯一愛している人。彼女はもう大人だった。とっくに私のことを愛していた。私だけじゃない。他の4人のことも。この歪な関係を、一生懸命考えて、それでも愛してるって断言した。歪んだ関係のはずなのに、彼女は自分で、自分自身の力でその答えを出したのだ。そして、彼女はまた戻ってきてくれたのだった、私の元に。誰がなんと言おうと、私たちは愛し合っているのだ。そうだ。それだけで十分じゃないか。他人がどう言おうが関係ない。何番目なんて関係ない。ただ、愛を捧げ、愛を捧げられる。それだけで十分幸せなのだから。あぁ、私の最愛の人。どうかいつまでも、愛して欲しい。私はいつまでも愛するから、、、。
そう、キスをしながら思った。また、とめどない涙が流れる。でも、その涙は、幸せの涙だった。
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