第24話 犯人は誰だ?



 薫が誹謗中傷を受けてから、1日。普段は薫と帰るため、早い帰宅の姉がかなり遅い時間に帰ってきた。


 「結奈。おかえり」


 「ただいま。お母さん」


薫が誹謗中傷を受けてから、母は目に見えてやつれてしまった。妹も言葉なく、姉も何も言わなかった。小鳥遊家全体に暗い雰囲気が漂っていた。


 「僕は大丈夫だよ。だから、みんな元気出して」


 「薫、、、。ありがとう」


いつも力強い母のハグは今日も力なく終わった。




 翌日、姉の嘆願で再び薫は学校を休むことにして、みんなを笑顔で送り出す。


 

学校

小学校から高校まで一度も授業サボったことのない生徒会長結奈が初めて授業をサボり、1年生の下駄箱へこっそり向かっていた。予め、橘先生に見回り時間を聞く徹底ぶり。


 「よし、回収できたわ」


そのまま、生徒会室に戻り、中身を確認する。


 「かかったわ」


1時間目の授業中、誰もいないはずの生徒会室に笑みをこぼした生徒会長がいた。




その日の放課後、生徒会長が薫の担任の橘先生を引き連れ、ある生徒の元へ向かっていた。


 「1年2組10番神崎彩葉さんはいる?」


いきなり、生徒会長が先生を引き連れやってきたため、驚きつつ1人の生徒が近づいてくる。


 「何か用ですか?」


 「何の用なのかはあなたがわかっているんじゃない?」


そう、犯人は神崎彩葉であった。普段は物静かで、勉強もでき、先生たちからの信頼も厚い生徒であった。さらに、薫との接点はなく、話したことすらない生徒であった。




生徒指導室


 「なんでこんなことをしたの?」


 「・・・・・」


 「何とか言いなさいよ!!!」バァン


 「ちょっと小鳥遊さん。落ち着いて」


 「私の家は女装で崩壊したわ。弟が女顔でね。休日に家族に内緒で女装して、街に行ってたの。でも、所詮は近所の街だもの。すぐに弟は女装癖が家族にバレたわ。そしたら、厳しかった私の母は弟に暴力を振るったわ。弟は家を飛び出し、今も帰ってこない。だから憎かったのよ。あんたの弟、あ、今は妹か」


 「何ですって」


 「そんな時にクラスの女子が調子乗ってるって言ってたのを聞いたわ。男だったのにってね。それで、実行に移したってわけ」


 「このクソ野郎」


 「ちょ、ちょっと小鳥遊さん」


 「離して、先生。一発殴らないと気が済まないわ」


 「ダメよ、小鳥遊さん。暴力を振るったら、同じレベルにあなたが落ちるわよ。それでも薫くんに合わせる顔があるの」


 「・・・・・。ごめんなさい」


 「神崎さん。あなたがしたことは立派な犯罪よ。誹謗中傷なんて。あなたには処分が下るでしょう。それまで停学、謹慎してなさい」


 「はい、橘先生」


 「じゃあ帰ってもいいわ」




 「このまま野放しにしろと」


 「そうじゃないわ。ちゃんと学校で処分を下す」


 「ほとんど野放しですよね」


 「彼女にはかなり重い処分が下るわ。彼女のバックグラウンドには同情するけど、犯罪だもの。それに、薫ちゃんは個人的な復讐なんて望んでいないでしょうし。それに今後は彼女に監視がつくわ。それでも野放しと言える?」


 「・・・・・」


 「とにかく、これ以上危ない橋は渡らせないわ。盗撮も犯罪だもの。ネットに流さないとは言え、生徒たちの顔も映ってる。私はあなたも薫ちゃんも守りたい。薫ちゃんにはあなたが必要よ」


 「先生、、、。ごめんなさい、私、、、」


妹思いの生徒会長は最近泣いてばっかだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る