第45話 明日からは


 「ちょっと、ママ!言い過ぎだよ!」


 「これもあなたを守るためよ、薫。仕方ないわ」


 「だからって、何も追い出さなくても」


 「いい、薫。あなたは知らない人と結婚したいの?」


 「それは嫌だけど。お父さんは断ったって言ってたよ」


 「確かに言っていたわ。でも、家族に何も言っていなかったのよ。それに、断ったって口では簡単に言える。現に婚約者と言っている子が出ているじゃない」


 「た、確かに」


 「いいのよ、あれくらい。あれくらいでへこたれる人じゃないわ」


 「でも、出ていっちゃったし」


 「あのくらいでへこたれる人なら私は結婚なんてしてないわ。普段は頼りなくても、やる時はやる人だから」


 「いずれにせよ、薫を守らなきゃ。登下校は私と結愛で左右を固めるから。いいわね、結愛」


 「もちろんよ!結奈ねぇの言う通りだわ。それに、お姉さまと結婚するのは私だから!」


 「何言ってるの結愛?薫と結婚するのは私よ!」


 「あぁ、もう。いい加減にして!みんな、冷静になってよ!!」


 「でも、なんとかしないといけないのは事実よ。本当に婚約者なのか。なんで、今さら婚約者なんて言って出てきたのか」


 「たしかに。パパが経営陣に入ったのっていつ?」


 「もう10年くらい前だわ。その前後でそういう話があった。でも、10年経って出てきた」


 「やっぱり、おかしいよ。本当に婚約者なら、10年近く何をしていたのかしら?」


 「とりあえず、登下校は結奈と結愛に任せましょう。クラスでは未来ちゃんに頼みましょう。いい、薫。その婚約者って子が何か言ってきても無視しなさい。流石に怪しすぎるわ」


 「ええっ、あいつも協力させるの?」


 「こらっ。そんな言葉遣いダメよ。それに、クラスでは結奈も結愛も離れてしまうでしょ。だったら、未来ちゃんに事情を話して、協力を要請した方がいいわ。そこは我慢よ」


 「でも、ママ。流石に話しかけられたら、無視はできないよ。同じクラスだから、無視なんてしたら、、、」


 「そうね。そこで未来ちゃんの出番ってわけ。話しかけられそうになっていたら、すかさず未来ちゃんが薫に話しかける。そうすれば、薫は無視するんじゃなくて、未来ちゃんが話しかけてきたから答えている」


 「そんな高度なこと無r」


 「そうね!それしか無いわ」


 「仕方ないです。お姉さまを守るためなら」


 「いい、薫。あなたは辛いかもしれない。可哀想と思うかもしれない。でも、10年経って婚約者って言ってくるなんて怪しすぎよ。分かった?」


 「う、うん。確かに、怪しいし。なんとかするよ」


 「はい。それじゃあ、今日は早く寝ましょう。みんな、色々あって疲れただろうし」


ということで、僕は警護されながら2年生を過ごすようだ。

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