第20話 初めての嫌がらせ

 


 そうして、女子たちが固まって薫を守る体制を構築する中、男子たちの不満は溜まっていった。以前は告白もできたし(断られるけど)、体育の時間では喋りかけたり、一緒に運動できた。また、他の授業中や休み時間中も少しなら話しかけられた。


 「くそっ。今日もか」

 「また、女子たちだ」

 「もう守りを固めていやがる」

 「告白どころか喋ることすらできてないぞ」


こんな感じである。また、


 「私がセクハラをしたと!?」


 「君が女子生徒にセクハラ紛いのことをしたと報告があっただけだ。君はしたのかね。してないのかね。したならば、今のうちに白状した方がいいぞ」


 「私はセクハラなんてしてません!」


 「ともかく、火のないところに煙は立たぬとも言う。報告があった以上、少し自分を見つめ直してはどうかね」


 「くっ。ですが、私はしてません」


 「だから、見つめ直せ。君にとってはセクハラじゃないのかもしれんが、その生徒にとってはセクハラだったのかもしれん。話は以上だ」


 「ぐぬぬ。失礼します」


薫のTSしてからの登校初日、薫を当てまくった数学科の山本先生は校長室に呼び出され、注意された。そう、薫の担任橘先生が報告を上げたのである。もちろん、昨今ではセクハラなんてクビ一直線だ。気をつけてはいたのだが、物珍しさとあまりの美貌に無意識に当ててしまっていたのである。


 「くそっ」


とヘイトが溜まっていた。また、


 「あいつ男だったのに、ちょーしのってない?」

 「マジそれな」


と一部の女子からやっかみを受けていた。当然、守られている薫は気付いていない。がしかし、学校全体で薫に対するヘイトは確実に溜まっていた、、、。




ある日の朝、


 「じゃあママ、行ってきます」


 「お母さん、行ってきます」


 「2人とも気をつけていってらっしゃい」


と車で送ってもらっていた。



そして、ついに


 「うん?」


 「どうしたの?薫」


 「またラブレターかな?」


バサバサ


 「これは」


そう、いくつもの誹謗中傷が書かれた紙の数々が落ちてきた。


 「お、お姉ちゃん」


 「・・・・・」


あまりの酷い言葉の数々に姉が絶句していた。


 「お姉ちゃん、僕何か悪いことしたのかな?何か人が嫌がることしちゃったのかな?」


すでに泣きそうになっている薫を見て、姉が答える。


 「そんなことないわ。薫は優しくて、可愛くて、みんなに愛される子だもの。こんなもの、見なくていいわ」


 「でも」


 「いい。お姉ちゃんはどんなことがあっても、薫の味方よ。絶対に。だから大丈夫」


 「お姉ちゃん、、、。ううう」


 「薫、保健室に行きましょう。少し休憩した方がいいわ」


 「うん、、、」


それからは2人とも無言でただ、廊下を歩いていた。その日、薫がクラスに顔を見せることは無かった。



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