主人公編 イチャイチャする二人


「クロード。モントレイユから私が産まれたデスパレスに行ける転移門があるよ」

アレクサンドラはそう言った。

「なるほど。そうなんですね」

俺は答える。俺たちは馬車でモントレイユの街まで向かっていた。御者……つまり馬車を操ることはクロエに任せていた。俺とミラーカとアレクサンドラは馬車の荷台に乗っていた。


「もう! クロード! 敬語禁止だって言ったじゃん!」

アレクサンドラはそう言って顔を膨らませて怒る。


なんというか微妙な距離感だ。姫様だから敬語を使わないといけない感じがするのだが……敬語を使えば怒られる。どんな話し方をすれば良いんだ。


「んーー。だって。俺にとってアレクサンドラは大事な人だから。どうやって敬意を伝えたらいいのか分からなくて。どうしても敬語になっちゃう」

俺は照れながら言う。


「んーーー!! もう! クロード可愛い!」と言いながらアレクサンドラは抱きついてきた。


「あんまりイチャイチャしすぎるとクロエさんの脱毛症が加速しますよ」

ミラーカがそう言う。


「大丈夫だよ。クロエ。もし全部抜けても最高級なカツラを買ってあげるから」

アレクサンドラは言う。


「こ、このクソッ……いえありがたくそのカツラ頂戴いたします」

クロエは馬車を操りながら言う。


俺は……なんだろう。もう脳内にアレクサンドラしか存在しなかった。もう脳内シェア率98%アレクサンドラだった。残りの2%が食欲、性欲、睡眠欲だった。その3大欲求全てにアレクサンドラが勝っていた。


「アレクサンドラ。実は俺心配なことがあって」

俺は話し始める。

「うん。なに?」


「こうやって。馬車揺れてるじゃん?」

俺は言う。

「うん」

「それでお尻がこすれるじゃん?」

「うん」


「それでアレクサンドラの可愛いお尻の皮が剥けたらどうしようと思って。そう思うと心配で心配で」俺は泣きながら言った。


「大丈夫だよ。私おしりの皮はそんなに薄くないから。それにクッションも敷いてあるし」

アレクサンドラは言う。


「そっか。それならいいんだ」

俺は笑顔で言う。


「でも」

と言いながらアレクサンドラは俺の足にまたがってきた。


「! アレクサンドラ!」


「クロード。そんなに心配ならクロードがクッションになってよ」

と言って俺の太ももにアレクサンドラ自身のお尻を乗せてくる。ちょうどアレクサンドラが俺の足をまたぐような格好になる。俺たちは至近距離でお互いの顔を見合わせる。


なんだかこの体の格好……エロすぎんか……


アレクサンドラは蒸気したような顔で俺を見つめている。ふとミラーカを見ると俺たちを赤面しながら見ていた。


「アレクサンドラ……この格好は流石に恥ずかしい……」

俺はアレクサンドラから顔をそらす。


「だめっ! クロード! ちゃんと目を合わせて!」

と言いながらアレクサンドラは俺の顔をグイッっとアレクサンドラの顔の方に向けた。


「うん。分かった」

俺はアレクサンドラの顔を合わせる見るとそこには俺だけを見つめていたアレクサンドラがいた。まるで発情しているような潤んだ瞳、濡れた唇、その瞳は魔力を秘めたようで俺は思わず見とれてしまう。


アレクサンドラは美しかった。いや美しすぎる。この少女が俺のためだけに微笑んでくれているという事実に俺は脳が焼かれる思いがする。


「もうなにしてるんですか……お二人とも……」

ミラーカが恥ずかしそうにしている。


クロエはもう無言だ。


だが俺たちはまるで二人のことは気にしなかった。俺たちは二人だけの世界に入っていた。


ドンっ!


急に馬車が大きく揺れた。


「うわぁ!」

「キャア!」

叫ぶ俺たち。


するとアレクサンドラは俺の頭を両腕でギュッっと掴み俺を頭にしがみついてきた。


「!」

アレクサンドラの胸の膨らみが顔に当たる。


あっ……


「ご、ゴメン。クロード!」

アレクサンドラが俺から離れようとする。するとちょうどアレクサンドラと目が合った。至近距離で見つめ合う俺たち。


「!」

ドクン! と心臓の鼓動が跳ね上がる俺。


「あっ……」

「あっ……」

赤面しながらお互いを見る俺たち。


そして引力を秘めたように自然と近づいていく二人の唇。

駄目だ。このままではキスしてしまう!


「着きましたよ。キャラバンサライです。我々の休憩所です」

クロエがそう言った。



まだまだ続きます


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