子どもたちの学校の一日教師
「クロードさんよろしければ私どもの学校に遊びに来ませんか?」
アルベルトはそう言った。
えっ……でも……と俺はチラリとアレクサンドラを見る。
「大丈夫だよ。クロード。クロエが首長のところから帰ってくるのまだまだかかるから」
とアレクサンドラが言った。俺は周りの通行人のリザードマンたちを見る。なんだか俺らの方をチラチラしながら見ている。絡まれても嫌だしなぁ……俺は
「行ってみたいです」
俺はそう言った。
「それではこちらにどうぞ」
アルベルトは笑ってそう言った。
◇
「アルケイン魔法学校は主に子どもたちに魔法教えています。みなしごが多いんです。戦争孤児ですね。魔法さえ上手く操ることが出来るなら食いっぱぐれることはないですから」
アルベルトは歩きながら言う。
「確かにそうですね」
俺は返事をした。確かにこの世は魔法が支配する世界だ。
「クロードさんは魔法はお得意ですか?」
アルベルトは俺に聞いてくる。
「魔法……10位階層までの魔法くらいなら」
俺は言う。
「えっ? 10位階魔法が使えるんですか? ひょっとしてクロードさんの冒険者レベルってレベル5ですか?」
アルベルトは聞いてきた。
ん……いやレベル32なんだが……それを言ったところで信じてもらえないだろうしここは嘘をついておくか……
「いえ、レベル6です」
「えっ?」
俺は魔王になる前のレベルを答えた。
この世界ではいわゆるレベル制が敷かれており
それが冒険者としてのステータスだった。
レベル1で一人前の冒険者
レベル2で中級者
レベル3でいわゆるベテラン冒険者
レベル4からはユニークスキル持ちだけがなれる。ベテラン冒険者よりもさらに実績を積んだ強者
レベル5は一流の冒険者
レベル6は全世界合わせても100人も満たない超一流の冒険者
なのだ。俺は天空の大鷲団に入ってた時点でレベル6だった。その時点で10位階魔法を使えたからレベル32の今ならどれくらいの階層の魔法が使えるか分からない……
「でもクロード多分今なら64位階層の魔法くらいなら使えるよ」
とアレクサンドラが言った。こいつ心でも読んでいるのか……
「64位階層……我々にそんな巨大な魔法が使えたら……夢ですよね」
とアルベルトは苦笑いする。アレクサンドラの言うことを全く信用してない様子だった。
「もーー本当なんだから」
アレクサンドラは言う。
「ハハハ……なるほど。僕の冒険者レベルはレベル3なんです。ユニークスキルが発動しなかったんですよ。それでも頑張って学園の園長くらいにはなれます」
とアルベルトは一瞬複雑な表情をしたあと、照れたように言った。
この世界にレベルによるコンプレックスがある人が多い。モンスターの討伐が急務なためレベルの高い冒険者が高い位置に就く。
まぁ正直このレベル制に関しては俺も昔から疑問に感じていた。レベルが高くてもシドのような人格破綻者もいるからだ。
シドやビクトリアは自分よりレベルの低い冒険者をひたすら見下していた。自分たちは世界に貢献してるんだ。だから弱い人間から搾取するのは当然だと考えていた。村を守るから村娘を寄越せ。みたいなことを平気でやっていた。
「ちなみにクロードさんのユニークスキルはなんですか? 聞いてみたいです」
アルベルトは俺に聞いてきた。
「ユニークスキルはマテリアライズですね。魔法具を生成したりします」
俺は言った。
「えっ? アーティファクトを生成出来るんですか? アーティファクトなんて付呪師と一粒の鍛冶師がお互いに協力し、しかも巨大な魂を閉じ込めないと作れないのに!」
アルベルトは言った。
「まぁ……それなりに。ありがとうございます。お褒めいただいて」
俺は照れる。
レベル6の時にはほぼ魔力のない道具しか使えなかったが今は余裕で神器レベルのアーティファクトを作れるのでちょっと自慢させてもらった。
しかし、このアルベルという男。なんというか中々の人間だなと思った。レベル6の人間に偏見を持つ人が多いからだ。この世界にはレベルによる格差がある。それは機会の格差や生活水準の格差にダイレクトに反映される。だから今までは俺がレベル6だって言ったら周りから引かれたり、憎しみの目をぶつけられたりした。アルベルトさんのように普通に話してくれる存在はほとんど居なかった。
「いやぁ……世界に100人足らずのレベル6の冒険者の方が来てくださったら学園の子供たちも喜びます。子供たちの刺激になります。ぜひ子供たちに魔法を教えてあげてください」
アルベルトは言った。
「一日だけの特別教師で良ければ」
俺は笑顔で答える。アルベルトもその答えを聞いて笑った。
すると大きな建物に近づいた。中から子供たちの遊ぶ声が聞こえる。
「ではようこそアルケイン魔法学校へ」
アルベルトが扉を開けると子供たちが一斉にこっちを見た。
「おかえりなさい! 先生!」
「アルベルト先生! おかえりなさい!」
「先生! おかえりなさい!」
口々に学生たちが声をかける。まぁいるわいるわホビットの子供やリザードマンの子供。主にその2つの種族が多い。まぁホビットって大人になっても小さいから子供なのか大人なのか分からないんだけど……
「先生! 隣りにいる人は誰ですか?」
学生の一人が聞いてくる。
「この人はね。クロードさんって言うんだよ。その隣りにいるいる人たちはクロードさんのお友達。クロードさんはね。レベル6なんだよ」
とアルベルトは言った。
すると子どもたちから
「おおおおおおおおおお!!!」
と反応があった。子どもたちは驚いている。まさかの反応に焦る俺。
「レベル6の人? 嘘っ!」
「お兄ちゃん! 魔法見せて! 魔法!」
「ねぇ! ドラゴン倒したことある?」
と俺の周りに子供が集まってくる。
「ねぇ。二人は付き合ってるんですか?」
「そんなの聞いちゃ駄目だよ」
「教えてくれるって」
「お兄さんはどっちの女の子の方が好きなんですか?」
質問攻めにされる俺たち。なんと女の子たちは俺がアレクサンドラとミラーカどっちと付き合ってると効いているのだ。
「結婚する予定だよ」
俺は言うと主に女の子達から
「キャーーーーー」
と黄色い声が聞こえた。
「クロード……もう」
恥ずかしそうなアレクサンドラの声。
「ねぇ。レナ行きなよ」
「駄目だよ。恥ずかしいよ」
なんだか女の子の声が聞こえる。
すると小さな女の子が俺の前に出てきた。
「あっ! あの。私と結婚してくれますか?」
とレナと呼ばれる女の子が俺にそう告げた。
すると
「キャーーーーー!!!」
と黄色い悲鳴を上げる女の子達。え? 結婚? なんなんだこの展開は。公開告白かよ。しかし、女の子ってマセてるよな……
俺はしゃがみ込んで言った。
「レナちゃんの告白嬉しいよ。でも僕には大事な人がいるからね。レナちゃんは美人だから将来もっといい男性と結婚できるよ。だからその人が見つかるまで結婚は大事に取っておこうか」
俺はニコッっと笑って答える。
「じゃあ! その人と結婚して別れたら私と結婚してくれますか?」
と食い下がるレナ。
「キャーーーーー!!!」
と叫ぶ女の子たち。
いやあの話し聞いてた? やんわり断ったよね。
「ごめんね。レナちゃん。俺はアレクサンドラが大好きなんだ。だから別れないよ。レナちゃんは別に好きな男の子はいないの?」
俺は聞いた。
「うーーー。レナ言いなよ」
「レナ。先生が好きな人の名前聞いてるよ」
「レナは誰が好きなの?」
女の子たちが囃し立てる。じっと聞き耳を立てる男の子たち。男の子はひょっとしたら自分の名前が呼ばれるかもと思ってるのか黙り込んでいる。
するとレナは顔を真っ赤にして俺の前から逃げていった。
「あーー。レナ逃げた」
「やっぱり男子の中に好きな人いるんだ」
と笑う女の子たち。
まぁ小さな子らしく同年代に好きな男の子が居て良かったと俺は旨を撫で下ろす。
「元気いっぱいでしょ?」
嬉しそうにアルベルトは聞いてくる。
「そうですね。みんなの笑顔が眩しいくらいです」
俺は答える。
「園長室にご案内します」
と言ってアルベルトは園長室に案内してくれた。
すると物珍しいのかゾロゾロとついてくる子どもたち。
◇
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