子供たちに魔術を教える
「さてと」
と言いながらアルベルトは椅子に腰掛ける。
「大丈夫ですか? 圧倒されましたか?」
アルベルトは聞く。
「なんていうか元気の塊ですね」
俺が言った。
「ここのアルケイン魔法学校は小さい子は赤ん坊から大きな子は19までの子供を集めているんです。アヴァロン王国の支援を受けて経営をしています」
アルベルトは言った。
「えっ? 私の父上が?」
アレクサンドラは言う。父上……俺は不思議そうな顔でアレクサンドラを見る。
「クロード。アレクサンドラ様はアヴァロン王国の姫君でございます」
あっ……そう言えば俺はアレクサンドラの住んでいる国すら聞いてなかった。
まさかあの魔界の超大国アヴァロン王国の王女様だったとは。
驚く俺とアルベルト。アルベルトはアレクサンドラを見て口を開けている。
「いやぁ……あ……こんなところに姫様がいらしゃったとは……ようこそおいでくださいました」
目を丸くしながらアルベルトはアレクサンドラに言った。
「私は付き人のミラーカです。ちなみに人間で言うところのレベルなら18くらいになります。もちろん真剣に戦うつもりはありませんので参考までに……」
ミラーカがドヤりながら言う。
「えっ? 魔族の方ですか? どうりで強大な魔力がお三人方から立ち込めていると思いました。そうか……魔族の方だったんですね」
驚いているアルベルト。
「ここにおわすクロード様は未来のアヴァロン王国の国王様です。どうぞ失礼なきよう……」
とミラーカが言う。
「これは! 大変失礼しましたっ!」
頭を下げて謝るアルベルト。
「いや……あのそんなにかしこまられると困ります」
俺は言う。
「いえ! 大変失礼しました!」
アルベルトは直角90度に頭を下げた。
俺はチラリとミラーカを見た。意地悪そうな顔でニヤリと俺を見ていた。せっかく対等で居心地の良い関係が出来ていたのに。ミラーカは俺が困っている顔を見るのが楽しいようだ。
「あーーせんせいが謝ってる」
「どうしたのかな」
とキャッキャッ! と声が聞こえる。俺はふと窓の外を見ると子供たちが貼り付いてこっちを見ていた。いや十人以上いるぞ……
「覗いちゃ駄目だよ。ほら遊びに行きなさい!」
とアルベルトは言うと
子供たちはキャーーと言いながらその場を離れていった。
俺はふと窓の外を見た。18歳くらい? のホビットの女の子が一人でポツンとしているのが見えた。友達の和に入れないのかな。なんだか寂しそうなのが妙に気になる。
まぁ例に漏れずホビットって言っても人間から見たら大人でも少女に見えるんだが……年齢がマジで分からない。
「気になりますか?」
アルベルトは聞く。
「はい。なんだな寂しそうだったので」
俺は言う。
「あの子の名前はベアトリスです。18歳のホビットの少女ですね。利発で魔法の才能もあるんですが……中々人と関わるのが上手くいかなくて……冒険者ギルドに入ったんですが、追い出されて戻ってきたんです」
アルベルトは言った。
「そうですか……」
俺はベアトリスの寂しげな表情が気になった。才能があるがゆえに周りの人間を見下してしまい、それが元で周りの人間と仲違いする。そんな感じだろうか。
「クロードさん! 今から魔術の授業があるんです。見ていきませんか?」
アルベルトは言った。
◇
大きなグラウンドで生徒たちが集められていた。今からこのグラウンドで魔法の実技授業をするらしい。
「では今日はみなさんにマジックアローの練習をしてもらいます。マジックアローは魔術の基本にしてもっとも難しい魔法です。魔力を手のひらに集中させて的に当てます。それと今日はゲストを呼んでます。レベル6の冒険者。クロードさんです! どうぞ拍手を!」
とアルベルト言うと拍手が子供たちから起こった。
恥ずかしながら前に進む俺。アルベルトと同じ壇上に上がった。
「ご紹介に預かりましたクロードと申します。みなさんよろしくお願いします。マジックアローの練習ですか……懐かしいですね。僕も子供の頃にやりました。全ての魔法の基礎になる魔法ですのでちゃんと練習しましょう。大丈夫です。練習すれば出来るようになります。先生も最初は駄目でしたから」
と言うと生徒たちから笑いが起こった。
「でも今は使えるようになってます。それは繰り返し練習したからです。今日は僕もみなさんの練習のお手伝いをします。分からないことがあれば聞いてください」
俺は言う。
すると生徒たちから拍手が起こった。
「素晴らしいスピーチでした。ではみなさん初めてください」
とアルベルトが言うと子供たちは一斉にマジックアローの練習を始めた。
的を狙って魔力を集中させる子供たち。
子供たちの中にはマジックアローを集中させて飛ばして的に当てられる子供もいれば、魔力が拡散してしまい途中でマジックアローが霧散してしまう子供たちがいた。的には威力を測定する計測器がついていた。
「先生! 先生! 見て! 俺らの魔法!」
ヤンチャそうな男の子のグループが俺に声をかける。
「いいよ。やってみて」
俺は言う。するとその男の子は手に魔力を集中させてバシュ! 見事的まで飛ばした。そしてそのマジックアローを何度も連続で飛ばす男の子。右手だけを的に向けて魔術を使っていた。いずれにしても威力10程度。中々だ。
「どう? 先生?」
男の子は聞いてくる。
俺は拍手をする。パチパチパチ。
「素晴らしい。見事だよ。よく魔力が練られている。連射も出来るんだから大したもんだ」
俺は言う。
「やった!」
喜ぶ男の子。
「スタンダードポジションで出来る?」
俺は聞いた。
「いやぁあれ面倒くさいんだよね」
男の子が言った。
「いいからやってみて」
俺は言った。
「えーー。分かった。せんせい」
と男の子は言った。スタンダードポジションとは両足を拡げて立ち、左手は右の手首に持っていき全身の魔力と魔術回路を使う基本的な姿勢だ。
男の子はスタンダードポジションになり、的に向けてをマジックアローを放った。すると片手でやっていた時よりもマジックアローの威力が弱くなり途中で霧散した。
「あーーー」
と残念そうに言う男の子たち。
「いや頑張ったよ。最初から上手くはいかない」
俺は言う。
「俺だめなんだよなぁ……片手打ちの方が上手く出来るんだよな」
スタンダードポジションで上手く行かなかった男の子が言う。
「スタンダードポジションが基本的な型だからね。さっきも言った通り基本が大事。丹田に意識を集中させて全身を使って魔法を放てることはどんな魔法にも応用出来るからね」
俺は言う。男の子は納得いかないようだ。
「じゃあ先生やってみてよ」
とその男の子は言う。
「おっ? 俺? 分かった。やるか」
と言って俺は前に出た。
「おお! 先生の実力が見れる!」
「先生! 頑張って!」
プレッシャーをかけてくる生徒たち。見てろよ。先生らしいところを見せてやるからな。
俺は両足を拡げて立ち丹田に意識を集中させて立つ。そして全身から右手に魔力を魔術回路を使って運ぶイメージをする。すると俺の右手にバチバチバチバチ!! と紫電を放つ魔力の玉が出来る。
「おおお!!!」
「すげえ!!!」
「ヤバッ!!」
口々に叫ぶ男の子たち。俺は右手を的に向けて左手を右手の手首に添えた。そして再び魔力を……おおおおお?
バチチチチチチチチチ!!!! 凄まじい魔力が俺の右手に集中している。あれ……ヤバないこれ……こんなの学校で放ったらエライことになるで……
俺はそう思って魔力を制御しようとするが、右手に集中する魔力を止められない!
周りに突風のような竜巻が起こる!
「えっ? なに?」
「え? クロード先生?」
周りの学生たちも異常事態に気づく。ヤバい!! 俺の集中したマジックアローの塊はまるで大人ひとり分くらいの直径があった。つまりは俺と同じぐらいの大きさだった。
駄目だ! このままじゃ! 俺は右手を空の方に向ける。そして俺はドゴン!! と凄まじい音を出してマジックアローを天上に放った!
バギュン!!!! と凄まじい勢いで空に飛んでいく俺の作ったマジックアロー。俺は男の子たちを見た。流石に引いてるよね。すると
「おおおおおおおおおお!!!!」
と子供たちが叫んだ。
「先生! すげーー!!」
「なにあれ! 凄い! 先生凄い!」
「ねぇ! あれホントにマジックアロー? すげぇ!」
ヤンチャな男の子に褒められる俺。どうやら引いてないみたいだった。
「練習したら出来るようになるから。やってみて」
俺は子供にスタンダードポジションで撃つよう勧めた。
「うん分かった。先生!」
なんだか急に素直になる子供たち。やっぱりさっきまで警戒していたのだろう。全然知らない大人だからな。少しは信頼されたようだ。
そしてさっきまで片手打ちでマジックアローを撃っていた男の子はスタンダードポジションに変わった。
「イメージしてね。全身の魔力が足から集って太ももお尻、頭から首胸、左腕から右腕に魔力がだんだん流れていくように……」
俺はイメージを言葉にして言った。
グンっと男の子の右手に魔力が集中する。
「よしっ! いいよ! 放って!」
俺が言うと男の子はカッっと目を見開き魔力を放った。ドゴン! 男の子の放ったマジックアローは的に当たり……威力は20!
さっきまで10 だったのに2倍に上がった。
「うおおおおおおおお!!!」
と驚く男の子たち。
「先生ありがとう! 急に出来るようになった!」
「先生次は俺にも教えて!」
「先生どうやったの? 今の」
男の子たちから口々に言われる。
「言っただろ。基本が大事だって。先生の言った通りだっただろ?」
俺は言うと、男の子は
「うんっ!」
と言って笑ってうなずいた。
◇
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